( 313823 )  2025/08/06 06:18:11  
00

 8月1日からの臨時国会で提出されたガソリン暫定税率廃止法案。実現すれば11月1日からガソリン価格は大きく下がる見通しです。しかし物流の主役であるトラックが使う軽油引取税の暫定税率廃止は今国会では見送られました。物流を担うトラックの約9割がディーゼルエンジン車で、軽油を使用しています。これで物流コストは下がるのでしょうか? 

 

文:ベストカーWeb編集部/写真:ベストカーWeb編集部、Adobe Stock(トビラ写真はAdobe Stock@mikitea) 

 

 8月1日から開かれている臨時国会で、野党8党が共同で「ガソリン暫定税率廃止法案」を提出しました。これが成立すれば、11月1日からガソリンの暫定税率25.1円分が廃止され、1リッターあたり25.1円の値下げが実現する見込みです。 

 

 しかし大きな盲点があります。ディーゼル車の燃料である軽油に課せられている「軽油引取税」の暫定税率廃止が、今回の法案には含まれていなかったのです。 

 

 軽油引取税は地方税であり、廃止すれば自治体の歳入が約5000億円減少するといわれています。このため、自治体の反発を警戒し、今回は対象から外した形です。 

 

 軽油引取税は、トラックやディーゼル車が使用する軽油1リッターにつき課される税金で、本則税率が15円、さらに暫定税率として17.1円が上乗せされています。合計で1リッターあたり32.1円が課税されています。 

 

 軽油引取税の暫定税率は1990年代初頭に創設されました。バブル崩壊後の財政難の中で、道路特定財源の確保を目的に導入され、当初は一時的な措置とされていました。しかし、道路特定財源が一般財源化された2009年以降も課税は続き、「暫定」とは名ばかりの恒久化状態となっているのが実情です。 

 

 今後はガソリン暫定税率廃止後の恒久的な代替え財源をどうするのか?いずれにしても自動車総連が示したような課税根拠を明確にした税収を与野党でしっかり議論していく必要があるでしょう。 

 

 

 今回の暫定税率廃止議論について、日本維新の会は「物流コスト抑制のためにも軽油の暫定税率廃止は不可欠」と強調。地方財政措置を整理した上で、2026年度)から「軽油」を加える形で、暫定税率の廃止をする(第二段階)、二段階減税案を提案しています。 

 

 一方、国民民主党の玉木雄一郎代表は、自身のX(旧Twitter)で「軽油の暫定税率廃止なしでは物流業界の負担は軽減されない。ガソリンとセットで見直すべき」と発信しています。 

 

 日本トラック協会も、以前から軽油引取税の暫定税率廃止を政府に強く要望してきました。同協会は「物流の99%はトラック輸送に依存しており、軽油価格の負担軽減は物価対策そのもの」と訴えています。特に中小運送業者にとって燃料コストは経営を直撃する大問題であり、現場の声は切実です。 

 

 一方で、自治体からは強い反対の声が上がっています。軽油引取税は地方自治体にとって重要な自主財源であり、特に地方部では道路維持管理や地域公共交通の補助金など、生活インフラの運営に直結しています。 

 

 ある県財政担当者は「5000億円の減収は地方財政に深刻な影響を与える。代替財源が示されないまま廃止されれば、地域のインフラ維持に支障をきたしかねない」と危機感を示しています。このように、暫定税率廃止は物流業界には朗報となる一方、自治体にとっては財政基盤を揺るがす大きな懸念となっているのです。 

 

 11月1日以降、ガソリン暫定税率廃止となれば、7月28日現在の全国平均価格=レギュラーガソリン174.0円、軽油154.1円で試算してみると、レギュラーガソリンは暫定税率廃止後には158.9円、軽油は軽油引取税暫定税率はそのまま継続されるので154.1円。ということはレギュラーガソリンと軽油の価格差は約20円→たったの4円80銭となります。 

 

 物流会社だけでなく、普通車のディーゼル車オーナーからの反発が高まりそうです。今後の動きに目が離せません。 

 

 

 
 

IMAGE