( 314996 )  2025/08/10 06:53:20  
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高齢者の貧困や孤立が社会問題となり、「下流老人」や「老後破産」という言葉が増えています。

特に一人暮らしの高齢男性は孤立しやすく、支援が届き難い状況があります。

例として80歳の吉川さんが挙げられ、彼は妻を亡くした後、生活費に困窮し孤独な日々を過ごしていましたが、地域包括支援センターの訪問をきっかけに生活保護を受けることになり、少しずつ生活が改善されました。

支援を受けることの心理的ハードルが高い男性も多く、周囲の理解と支援が求められています。

老後の孤立を防ぐため、地域とのつながりが重要だとされています。

(要約)

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(※写真はイメージです/PIXTA) 

 

「下流老人」「老後破産」…なんとも辛い言葉が多くなった昨今。「年金を頼りに暮らしているが、生活に困窮している」「頼る人がおらず孤立してしまう」…といった状況に苦しむ高齢者の存在が、社会問題になっています。現在とられている支援策などとともにみていきましょう。 

 

「一日誰とも話さず終わる日が続くと、“もうこのまま誰にも看取られずに死ぬんだろうな”と思うことがあるんです。寂しいという感覚すら、もうよくわからなくなるんですよね」 

 

東京都内に暮らす80歳の男性、吉川弘さん(仮名)は、5年前に妻を亡くして以来、ずっと一人暮らしを続けています。持病を抱えながら、わずかな年金で暮らす日々。頼れる家族もおらず、外出の機会も減り、いつしか誰とも口をきかない生活が当たり前になっていました。 

 

吉川さんは長年、中小企業の営業職として勤務し、65歳で定年退職。会社員として働いていたため厚生年金を受給していますが、毎月の支給額はおよそ11万円。現役時代の年収が高くなかったため、思ったよりも支給額は少なかったといいます。 

 

食費や光熱費、持病の通院費などを差し引くと、手元に残るお金はほとんどありません。食費を切り詰め、レトルトやインスタント食品で済ませることもしばしばありました。 

 

「年金で何とかなると思っていたけど、実際は“ギリギリを通り越してる”感じでしたね。病院代を払うと、その月は生活費をかなり切り詰めることになります。翌月には財布の中がほとんど空っぽ、ということも珍しくありませんでした」 

 

妻がいたころは、ささやかな会話や買い物の付き添いが日々の支えだったといいます。しかし妻を亡くした後、交流は一気に途絶えました。 

 

「隣の家にも、最近誰が住んでいるのかよく知らない。話しかける機会なんてもうありません。知り合いに連絡しようにも、みんな先に亡くなってるか、施設に入ってるかで」 

 

外出の頻度も減り、テレビをつけているだけの毎日。気力がなくなり、何もかもが億劫になっていたといいます。 

 

 

そんな生活を続けていたある日、突然のぎっくり腰で倒れて動けなくなり、救急搬送されました。入院中に訪れた地域包括支援センターの職員から、「今の生活状況なら、生活保護を受けることができますよ」と説明を受けたのが転機になったといいます。 

 

「正直、生活保護って“自分とは関係ない制度”だと思っていました。働いてきたんだから、自分で何とかすべきだって。でも、死ぬ前に“一度相談してみませんか”と言われて、なぜかその言葉に救われた気がしたんです」 

 

生活保護を申請し、医療費の自己負担がなくなったことで、定期的な通院が可能になりました。また、生活扶助として月に数万円が支給され、食生活も少しずつ整い始めました。 

 

厚生労働省によると、2022年度末時点で生活保護を受けている世帯のうち、およそ55%が高齢者世帯です。そのなかでも、男性の単身世帯は特に孤立しやすく、支援につながりにくいと言われています。 

 

東京都監察医務院のデータによれば、都内で自宅等で死亡し、死後に発見された「自宅死」のうち、男性の割合は約7割を占めています。これは「孤独死=悲劇」と一括りにするものではありませんが、男性高齢者の生活実態として、社会的つながりが薄れやすい構造が見えてきます。 

 

背景には、助けを求めることへの心理的ハードルの高さがあります。長年「家族を支える側」として生きてきた男性ほど、「自分が支援を受ける立場になる」という現実を受け入れづらい傾向があるのです。 

 

現在、各自治体には高齢者の支援拠点として「地域包括支援センター」が設置されています。ここでは、介護や福祉だけでなく、住まいや生活、お金に関する相談にも幅広く対応しており、生活保護の相談にもつながる場合があります。 

 

吉川さんも、今では週1回、地域のサロンに顔を出すようになりました。配食サービスも利用し、体重も少しずつ戻りつつあります。 

 

「今でも寂しさはあります。でも、“誰かと話せる場所がある”だけで、少し心が軽くなるんですよね。自分一人じゃ無理だったと思います」 

 

高齢者の貧困や孤立は、本人が声を上げられないことで深刻化していきます。とくに男性の場合、「恥ずかしさ」や「プライド」が邪魔をして、支援の制度につながらないまま、静かに衰弱していくケースも少なくありません。 

 

吉川さんのように、ふとしたきっかけで地域とつながることができれば、暮らしも、心のあり方も少しずつ変わっていきます。 

 

年金だけでは生活が成り立たず、頼る人もいない──。そんな現実に直面している高齢男性は、決して少なくありません。 

 

「生活保護は最終手段」「支援を受けるのは恥ずかしい」と思い込まず、まずは一歩踏み出してみることが、自分を守る道につながります。そして、周囲の人々もまた、孤立した高齢者に気づき、声をかける役割を担っているのです。 

 

年齢を重ねたからこそ、「誰かとつながる力」が、何よりも大切になってきています。 

 

THE GOLD ONLINE編集部 

 

 

 
 

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