( 315028 )  2025/08/10 07:17:49  
00

93歳に日本球界の大御所が広陵の“暴力事案”にモノ申す 

 

第107回全国高校野球選手権大会で1回戦を突破した広陵高(広島)がSNSで告発され、日本高野連から厳重注意処分を受けていたことが表ざたになった“暴力事案”の波紋が広がっている。8日に学校側は公式サイトに「本校硬式野球部をめぐるSNS上の事案について」と題する文書を発表し、改めて“別の事案”が起きていて第三者委員会が調査中であることを明らかにした。SNSでは再び「辞退すべき」などの批判の声が飛び交っているが、広陵と同じく広島県立呉三津田高校出身でプロとして巨人で活躍、ヤクルト、西武で監督を務めた93歳の大御所の広岡達朗氏が、「辞退などする必要はない。それを議論するなら県大会前だ」との独自の見解を明かした。 

 

 広陵の“暴力事案”を巡るSNSでの炎上騒ぎが沈静化する気配がない。 

 SNSでの告発が発端となり、学校側が6日に今年1月に「部員間の暴力を伴う不適切な行動」が起きており、日本高野連から3月5日の審議委員会を経て厳重注意処分を受けていたことを明かした。同校の報告書によると加害生徒は4人で、「胸を叩く、頬を叩く、腹部を押す、胸ぐらをつかむ行為」をしたという。SNSで告発された加害者と人数も暴力の内容も違うが被害生徒は3月末に転校している。 

 SNSで告発されるまで、ここまで公表してこなかった理由を学校側は、「被害生徒及び加害生徒の保護の観点」と説明。また日本高野連が厳重処分を発表しなかった理由は、日本学生野球憲章で「注意・厳重注意は原則公表しない」規則になっているためだという。 

 そして驚くことにさらにSNSで令和5年に別の暴力行為があったことが被害部員の保護者から実名告発された。 

 選手10人と指導者5人の具体的な名前をあげて、性的暴行や熱湯や冷水を浴びせられる行為を受け、「先生による暴力行為も見た」とも記し、すでに所管の警察署に被害届が出され、学校が第三者委員会を立ち上げていることを明かすと、これも、また“後追い”で学校側が8日に「本校硬式野球部をめぐるSNS上の事案について」と題する文書を発表した。 

 昨年3月に元部員から被害申告を受け「関係者から聴取を行い、事実関係の調査を実施しましたが、指摘された事項は確認できませんでした」という。  

 納得のいかない元部員は今年2月に広島県高野連、日本高野連に情報提供し、再調査が行われたが、指摘された事項は確認されず、調査を6月に設置した第三者委員会に委ねることになったという。高野連は「その結果を受けて対応を検討する」としているが、あまりにもアクションが遅い。 

 まだ暴力行為があったかどうかは認定されていないが、2つ目の事案が出てきたことで、SNSでは「辞退すべき」「個人の問題ではなくチーム内での暴力行為が常態化しているのでは?」などの批判の声が強くなった。 

 だが、広岡氏はそれらの声をシャットアウト。 

「広陵は辞退などする必要はない」と主張した。 

「すでに学校側も調査して高野連からは厳重注意という処分が下されている。SNSの時代にその時点で公表しておかないから、こんなことになるのだが、これは終わった話で、大会が始まってから、いまさらぶりかえして、とやかく言うのはおかしな話。学校の調査が正しかったのか、厳重処分でよかったのか、辞退すべきではないかという議論は、県大会が始まる前にすべきこと。一生懸命にやって甲子園への切符を勝ち取り、憧れの舞台でプレーしている子供たちにいまさら辞退しろはかわいそうだ」 

 

 

 広岡氏は高校時代には決勝で敗れて甲子園出場経験はない。それだけになおさら夢舞台に立っている球児たちへの思いは強い。また93歳になるが、SNSで騒ぎとなっていることも承知している。 

「SNSで何を書かれようが動揺しちゃいかん。それとそのSNSの話題を大きく取り扱うメディアもどうかしている。暴力を認めた広陵の野球部の何人かは反省しているだろうし、今後、大学、あるいは社会人で野球を続ける球児たちもいるだろう。被害を受けた生徒、保護者の心中もわかる。どちらにもこの先がある。大人たちは、そこを考えてやらねばならない」 

 広岡氏が懸念しているのは球児の未来についてだ。 

 被害生徒が精神的なトラウマを負うことにならないようにケアもしなければならない。 

 また広岡氏が「やってはならない行為だ」と激怒したのは、1回戦で起きた「握手拒否」騒動だ。 

 広陵は7日の1回戦で旭川志峯(北北海道)を3-1で破ったが、試合後にホームベースを挟んで両チームが行う「整列挨拶」後に、旭川志峯の3人の選手が、互いに健闘を称え合う握手を拒否してベンチへと下がったのだ。挨拶後の握手は、あくまでも自発的行為。3人の選手は悔しさのあまり余裕がなかったのか、たまたま忘れていたのか、その理由は不明だが、SNSでは暴力事案を起こした広陵へのレジスタンス行為と捉えられ賛否が飛びかった。 

 スポーツマンシップに欠ける行為だと批判する意見もあったが、「賛否はありますが、私は旭川の選手を支持します」「今回の事件に強い嫌悪感を持っていると思う」「広陵高のやった事は許せないという勇気ある意思表示だと思う」など、その行為を支持する意見が多く見られた。 

 整列挨拶後の「握手拒否」は過去にもある。1992年の夏の甲子園の2回戦の星稜(石川)対明徳義塾(高知)戦では、星稜の“ゴジラ”松井秀喜氏が5打席連続敬遠されて2-3で敗れた。この戦術は、社会問題にさえ発展したが、試合後の整列挨拶後には、松井を含む、星稜のほとんどの選手が明徳義塾の選手との握手を拒否してベンチへ下がった。 

 だが、広岡氏はこう持論を展開した。 

「もし握手を拒否した理由が、広陵の暴力問題にあるのならとんでもない話だ。グラウンド外の問題を甲子園の戦いの中に持ち込んじゃいかん。両チームとも、全力を出し切って戦ったんだ。そこで試合後に握手をしないなんてもってのほか。スポーツマンシップに欠ける行為だ。その選手の今後のためにも、監督やコーチがたしなめておかないとダメだ」 

 広陵は騒動が冷めやらぬ中で13日の第4試合に登場。2回戦で津田学園(三重)と対戦する。 

(文責・駒沢悟/スポーツライター) 

 

 

 
 

IMAGE