( 315248 ) 2025/08/11 06:02:07 0 00 オーナーが出入りしていた店に貼られていた紙
岐阜県揖斐郡池田町で、有名な観光地として知られる「池田温泉」。池田町が運営する「池田温泉 新館」の2階、3階部分で、町から委託されレストランと旅館を経営していたのが「株式会社 たち川」だ。同社は7月30日の夜に“夜逃げ”し、翌日からレストラン「郷土料理 たち川」と旅館「池田温泉旅館 たち川」は突如閉鎖。町や仕入れ先の業者に対しては未納金が残った状態で、池田町は混乱に陥っている。
“夜逃げ”の日、軽トラックとバンに荷物を詰め込んでいたオーナー・A氏は8月某日、池田町から離れた岐阜県内のある飲食店に、高級外車・BMWに乗って訪れていた——。【全3回の第3回。第1回から読む】
2階、3階部分がもぬけの殻となっている「池田温泉 新館」。その扉には、次のように記された1枚の紙切れが貼られたままになっている。
〈株式会社 たち川は、事業を停止することとなりました〉〈株式会社 たち川が占有していた場所及び当該場所内の動産については、当職らが専有管理いたしますので、無断の立ち入り及び搬出等をすることを固く禁じます〉
未納金を抱えたまま、忽然と姿を消したA氏。張り紙に書かれた連絡先は愛知・名古屋市内にある弁護士事務所になっており、町が運営する「池田温泉」の総支配人も「本人と連絡が取れない」と嘆いている。
A氏はいま、どこにいるのか。A氏を知る関係者が語る。
「A氏は2019年に『株式会社 たち川』を起業後、旅館やレストランのみならず、ブームに乗って『高級食パン』を扱うパン屋や喫茶店も開業し、旅館でパンを販売するなどグループ経営にも力を入れていました。
パン屋は今回の騒動で閉業しましたが、喫茶店は途中で別のオーナーに経営を任せ、現在も営業している。A氏はその店に出入りし、手伝っているのです」
8月某日の昼、記者がこの日定休日だった喫茶店を訪れると、入り口に「当店は池田温泉となんら関係ございません。会社が違います」と書かれた張り紙が貼られていた。しかし夜に改めて店を訪問すると、A氏が店内で作業をしているのだ——。
夜逃げ状態になっている旅館やレストランについて、どう答えるのか。店から出てきたA氏に記者が話しかけたが、A氏は記者を睨みつけ、何を聞いても終始無言。そのまま駐車場に停めていた高級外車・BMWに乗り込み、スピードを上げて走り去っていった。
池田町が運営する「池田温泉」は、池田町の観光産業の中心となっている。ヌルヌルする泉質の天然温泉は評価が高く、「池田温泉 新館」の1階部分、「池田温泉 本館」にある日帰り温泉はこれまで通り営業している。
町の職員でもある「池田温泉」の総支配人は、「いまだにA氏からの連絡はありません」と肩を落とす。
「こういう形になってしまって残念です。現在もまだ、2、3階部分には入れません。町のものですが、中に入っている動産部分は弁護士らが専有管理しているということになっていますので……。
弁護士さんとは、返金や動産部分の返却を含む今後のことについて一度話しましたが、算段はまだ全然つきません」(「池田温泉」総支配人)
「株式会社 たち川」の事業停止を告知する張り紙に書かれていた弁護士事務所に、業者への未納金や食品偽装疑惑、そしてオーナー・A氏の今後についてたずねたが、期限までに回答がなかった。
「池田温泉」は、地元の人々からも観光客からも愛されてきた。近年は経営が苦しくなっているが、池田町の竹中誉町長も「『池田温泉は町民にとっての誇り。施設を存続し、利益を考えていきたい』と語るほど熱を入れていた」(東海地方のローカル局記者)という。
池田温泉の再建に向けて、A氏はどのようなアクションを見せるのだろうか。
(了。第1回から読む)
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