( 315268 )  2025/08/11 06:26:32  
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屋根のトラブルは自力で確認しにくいから厄介だ(写真:イメージマート) 

 

「屋根瓦が割れているのが見えました。このままだとご近所に迷惑がかかります」――突然家にやって来た業者からそう言われ、慌てて修理を依頼したところ、高額な請求がされるというトラブルが後を絶たないという。 

 

 自力ではなかなか目の届かない場所にある屋根の劣化は分かりづらく、業者を名乗る人物から指摘されたら不安になる。不安な心理につけ込む詐欺を「レスキュー詐欺」というが、なかでも屋根トラブルにおける詐欺被害が増加する背景には何があるのか。専門家に話を聞いた。【前後編の前編】 

 

「契約を解除したい」「詐欺的な勧誘トラブルを解決してほしい」など、消費生活全般に関する相談窓口・独立行政法人国民生活センターによれば、「屋根工事の点検商法」に関する相談は増加傾向。屋根トラブルによる詐欺被害を訴えた件数は2018年度は923件だったのに対し、2022年度は2885件と、5年間で約3倍に増加しているという。 

 

 屋根工事業者への支援サービスを手がけ、屋根工事に関する情報を第三者的視点で発信するウェブメディア「やねプロ」を運営するハウスケープ株式会社の代表取締役・明正剛典氏によれば、屋根補修に関するトラブルが増える背景には、大きく分けて3つの理由があるという。【1】戸建てに住む人の高齢化、【2】屋根は情報の非対称性が高いこと、【3】不安をあおられやすい、という3点だ。 

 

 昨今、高齢者をターゲットにした詐欺への注意喚起は盛んに行われてきた。そのなかで、『屋根工事の点検商法』は「業者にしてみれば、まだまだ”穴場“なのでしょう」と明正氏は指摘する。 

 

 国民生活センターによると、過去5年で屋根工事トラブルの相談件数が最多となった2022年において、実際に契約した2642件のうち60歳以上の高齢者によるものは2128件と8割以上を占める。一方で、同年の「オレオレ詐欺」は4287件で、2018年の9145件をピークに減少傾向にある。前述のとおり同年の屋根トラブルは2885件という数字で、社会問題となったオレオレ詐欺被害の3分の2に迫ることからも、その多さがうかがえる。 

 

「高齢になればどうしても判断が鈍ってくる。また昨今は子供が独立した後、家を継がないなどで周りに相談相手がいないケースも多い。 

 

 本来、住宅は基本的に地域産業で、地元の職人がフォローするのが理想です。詐欺被害に遭いやすい家の傾向としては、近隣住民との関係性が希薄な都市部の方が多いですが、昨今は地方工務店の廃業や倒産が相次ぎ、全国的に地域のつながりが減ってきています。そういった、孤立する高齢者はターゲットにされやすいです」(明正氏、以下「」内同) 

 

 

 明正氏は、「屋根は、一般消費者と業者が持っている情報の差が大きい」と指摘する。屋根まわりは『目に見えない』部分が多いため、正規のリフォーム提案と詐欺の見極めが難しいのが現実だという。 

 

「業者を名乗る人に屋根の劣化や破損などを指摘された場合、一般消費者には確認しようがないため、鵜呑みにしてしまいがちです。新築だと『そんなはずはない』とも思えますが、築30年ほどの戸建てだと『たしかに、そろそろ屋根の劣化もあり得るかも……』と思ってしまう。 

 

 実際、屋根材によっては劣化が早いものもあります。瓦であれば50年、100年の寿命がありますが、下地となる『スレート』は、表面塗装の劣化に応じて10~15年で再塗装、20~30年でカバー工法や葺き替えを検討します。また、屋根下地は部材にもよりますが、一般に20年程度で点検・補修が必要になることがあります。さらに、相場も屋根材や屋根の広さなどにより変動するため、正規の工事でも数百万円の費用がかかることがあります。実際は200万円で済むところ400万円請求されたとて、『普通はこのくらいかかる』と言われたら納得してしまうでしょう」 

 

 くわえて「放置すると雨漏りの危険がある」「台風で瓦が吹き飛んで近隣に迷惑がかかる」などのリスクを説明され、不安をあおられて契約してしまうケースも珍しくない。実際に、梅雨や台風の時期はトラブルが多くなりやすいとのことだ。 

 

「全国的に最も増加するのは、災害の直後です。地場業者に依頼が殺到するタイミングで、『応援に来ました。すぐに工事できますよ』と謳い、相場の数倍の費用を請求されるといったケースが多発します。2019年房総半島台風の際にもよくみられました」 

 

 さまざまな要因が複合して、被害が増加している“屋根リフォーム詐欺”。トラブルを回避するためにはどうしたら良いのだろうか。後編では、実際の手口とその対処法について解説している。 

 

■後編記事につづく:急増する「屋根リフォーム詐欺」に遭わないために“絶対にしてはいけない”こと “無料点検”後に「屋根材にヒビが入った写真を見せられ…」は典型的な手口 

 

 

 
 

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