( 315283 ) 2025/08/11 06:38:26 0 00 夜逃げした「郷土料理 たち川」に、食品偽装があったという(左はinstagramより、右は従業員提供)
岐阜県揖斐郡池田町にある「池田温泉」。池田町が運営する温泉がある「池田温泉 新館」の2階、3階部分には、町が委託した「株式会社 たち川」が運営するレストラン「郷土料理 たち川」と高級ホテル「池田温泉旅館 たち川」が入っていた。
しかし現在、新館の入り口には〈事業を停止することとなりました〉と記された1枚の紙切れが貼られ、2、3階部分に人影はない。「株式会社 たち川」のオーナー・A氏は7月30日深夜、旅館から荷物を次々運び出し、夜逃げしていたのだ。
「株式会社 たち川」は町への施設利用料や、仕入れ先である生産者・納入業者への支払いが軒並み未納状態だった。さらに「郷土料理 たち川」の厨房担当だった・Eさんは、オーナーが「食品偽装を主導していた」と証言するのだった——。【全3回の第2回。第1回から読む】
〈ここ、池田温泉新館のお食事処「郷土料理たち川」では、地元の新鮮な食材を使用したお料理でみなさまをお迎えします。(中略)川魚料理、地鶏、地鶏卵、そば粉…池田町のおもてなしをぜひご賞味ください〉
すでに削除されてしまった「郷土料理 たち川」のホームページには、このようにある。1000円〜1500円ほどの定食や、5000円〜1万円程度の価格帯のコース料理を、来客と「池田温泉旅館 たち川」の宿泊客に提供していた。
しかし——「郷土料理 たち川」で料理を担当していたEさんは、「地元食材と謳いながら、食品偽装をしていた」と証言するのだ。
「オープンして半年ほど経ってから、厨房を担当して働いていました。当時はメニューや扱う食材も多かったのですが、ここ最近は経営状態も悪く、メニュー数もほぼ半分以下に。仕入れ先もどんどん減っていきました。
そして、メニューの表記と異なる食材が使われるようになったんです。仕入れ先がないから、店長が近所のスーパーで食材を買ってくる。レシートをオーナーがそこら辺に置いておくから、何をスーパーで買っているのか分かるんです」
旅館とレストランをつなぐロビーには、「飛騨牛 5等級」と目立つように掲示されている。具体的に、どのような食品が表記と違ったのか。懐石料理のメニュー表には「清水産本鮪」「北海道産紅鮭」、そして地元食材である「飛騨牛フィレステーキ」「揖斐川天然鮎塩素焼き」などと書かれているが……。
「仕入れているわけではなくて、スーパーでオーナー自ら買ってくるので、お刺身の産地はほぼ全て適当です。鮭も、チリ産のトラウトサーモンを扱ったこともあります……。
飛騨牛について、しゃぶしゃぶは『バレるから』と言って飛騨牛を使っていましたが、ステーキ肉は安い乳牛・ホルスタインのヒレ肉を使っていました。これもスーパーで買っていた。鹿児島産などの黒毛和牛を買ってくることもありましたが、オーナーは『焼いたらわからないから』と言っていました。
メニューで天然鮎とされているのは、養殖の鮎か冷凍の鮎です。冷凍の鮎は水で解凍するので水分が多く、焼くと内臓が出てきてしまうんですよ。天然の鮎は焼いても内臓が出てくることはほとんどなく、そこでわかるんです。
天ぷらのエビは『アカ海老』と書いていますが、冷凍のバナメイエビを使用していたこともあります……」
第1回記事では、地元の生産者が「たち川」からの料金滞納に苦しんでいたことを報じている。「そうして仕入れ先が少なくなっていき、スーパーで適当に食材を買い出すようになった」と、Eさんは証言するのだ。
「私も調理場の担当をしていたので、お客さんを騙していることはわかっていましたし、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。ですが、もうずっとその状態でやっていたので、感覚が麻痺してしまっていた。
それでもいつか言わないといけないと思って、偽装で使用していた食材は証拠として一通り写真を撮っていました。県庁の人にも先日、話しに行きました」
食品偽装については、NEWSポストセブンが取材した他の「郷土料理 たち川」の従業員も、それを認めた。別の従業員も「A氏がスーパーで割引の商品を買ってきて仕入れていた」と話す。
こういった疑惑に、A氏はどう答えるのか。夜逃げしたきり姿が見られなくなっていたA氏は、8月某日、池田町から離れた岐阜県内のある飲食店に、高級外車・BMWに乗って訪れていた——第3回記事で詳報する。
(第3回につづく)
|
![]() |