( 315898 )  2025/08/14 03:07:11  
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騒動の原因となったハッピーセットのポケカ 

 

 以前に「デイリー新潮」では、5月に起こったマクドナルドのハッピーセットの「ちいかわ」転売騒動をレポートした。そしてこのたび、8月8日からは「ポケットモンスター(以下、ポケモン)」とコラボした玩具がつく、ハッピーセットが発売された。3連休が始まる翌9日からは、玩具にプラスして人気のポケモンカードが付属するとあって人気が爆発した。 

 

 筆者が住む近所にあるマクドナルドには、「ちいかわ」を遥かに上回る客が押しかけ、大混雑。70分待って、ようやくハッピーセットを手にすることができた。当日の様子をレポートしたい。【取材・文=宮原可多志】 

 

 埼玉県の某市のマクドナルドは筆者の行きつけである。ハンバーガーをよくテイクアウトするし、店内でコーヒーを飲みながら、パソコンを使って原稿を書くこともある(この原稿もそのマクドナルドで書いている)。もちろん長居しすぎないように配慮しながら、であるが。それなりに常連ということもあって、店長とは顔見知りである。 

 

 今回のポケモンとのコラボは発売前から大きな話題になっていた。筆者は発売の4日前、店長に「ポケモンとのコラボがネットで話題になっているが、対策はできていますか」と話を聞いてみた。すると、店長は「混雑する予感しかしません」「不安で仕方ない」と、率直な気持ちを打ち明けたのである。 

 

「ちいかわの時は、うちの店舗はそれほど混雑しませんでした。ただ、今回のポケモンはカードがついているわけでしょう。混雑は確実だと思い、人を集めようと思いましたが、とにかく人が集まらないんです。今の時代はアルバイトに対して、この日に出勤してくれと強く言うのも難しいですから……」 

 

 こう話していた店長の不安は的中した。当日、筆者が8時に店を訪れると、一目でわかるほどの大混雑になっていたのである。駐車場は満車で、店内は人でごった返している。店に入りきれなかった人が外に数人あふれている。そして、妙に道路が渋滞しているなと思ったら、それはドライブスルーに並ぶ車の列で、車を誘導している店員の姿があった。 

 

 ちいかわの時は翌日でもグッズが残っていたほど、まだまだ余裕があった。しかし、今回は明らかにその時とはレベルが違う混雑だ。店内にあるモニターを見ると、スマホなどから注文するモバイルオーダーの呼び出し番号が表示されていたが、一度に表示できないほど大量の注文が入っているのがわかった。 

 

 筆者も試しに注文してみたところ、呼び出されていた番号の60番も後の数字だった。だが、これはあくまでもモバイルオーダーの数字である。それ以外にも店頭で注文する人、ドライブスルーで注文する人もいるわけで、とんでもない混雑といえる。レジの前には大量にビニール袋が並んでいて、厨房では店員があわただしく動いていた。 

 

 

 客を見ると、若い人や学生、家族連れの姿が目立つ。郊外の店舗ということもあり、子供を連れた親が4組ほど見られた。見たところ、最大でも5個を買う人がいる程度で、多くの人は2〜3個、人数分買っている印象だ。少なくとも、この店に来ている人のほとんどは純粋なポケモンファンか、物珍しさで訪れた人ばかりのように思われた。 

 

 大量に何十個も買い占める転売屋の姿は見当たらなかった。ネット上では外国人の買い占めが問題になっていたが、話している言葉を聞いても、周囲を見渡してもそうした印象はなかった。純粋なファンだけでこれだけ集客できるのだから、ポケモンというコンテンツが幅広い世代に人気があるというのがわかる。 

 

 しかし、待てども、待てども、注文が捌ける気配がない。店側はどうも、渋滞を引き起こす要因になっているドライブスルーの注文を優先して捌いているようだ。8時はまだ“朝マック”が発売されている時間である。店員は必死にソーセージエッグマフィンやホットケーキを作りまくっているが、明らかに人が足りていないのがわかる。 

 

 客側もイライラが募ってきたのだろうか。店員に、「いつまで待たせるんだよ!」と強い口調で話す人がいた。転売屋かと思ったら、子供を連れていたので、おそらく父親のようだった。また、別の家族連れでは、子供が長時間待つのにくたびれたのか、「ピカチュウ〜! ピカチュウ〜!」と大声で泣き出した。店内も店外もカオスと言っていい状態になっていた。 

 

 記者はスマホに現地の様子を書き込みながら70分ほど待ったら、ようやく自分の番号が呼び出され、ほっとした。この日は酷暑だったが、店内に座るための椅子がたくさんあり、クーラーが効いていたのが救いだった。しかし、店員はまったく休む暇もなく、ひたすら動き続けていた。 

 

 さて、筆者が買ったのは、自分用と妻用のエッグマックマフィンのハッピーセットが2セットである。家に持ち帰り、さっそく食べようとしたところ、ハッシュポテトがぐちゃぐちゃになっていて、まったくおいしくなかったのである。急いで注文を捌こうとするあまり、十分に揚げる時間を確保できなかったのだろうか。もしくは私に渡すまでの間、作り置いたものを長期間袋に入れていたせいで、湿気ってしまったのかもしれない。 

 

 仕方ないなあと思いながら、ファンタグレープに口をつける。ぬるい。味が薄い。炭酸がだいぶ抜けている。蓋を開けてみると、ドリンクの氷がほとんど溶けていた。これも、だいぶ前に注いだものを渡されたためであろう。唯一、エッグマックマフィンはできたてのようで、それだけが救いだった。 

 

 店は我が家から徒歩で3分ほどであり、長時間持ち歩いていたわけではない。今までこの店は数えきれないくらい利用してきたが、こんなことは初めてである。まさに、現地の混乱を物語っていると思ったが、おまけである玩具とカードのせいで、メインである食品のクオリティが低下し、おいしくいただけなかったのはいかがなものか。 

 

 

 その日のうちに、ネット上には続々と、各地のマクドナルドの風景が投稿され始めた。一部の店舗では転売屋による買い占めが発生し、食べ物が袋に入ったまま廃棄されている画像も上がっていた。そして、9日のうちに一部店舗ではカードがなくなってしまい、販売を取りやめることになった。 

 

 マクドナルドは11日、謝罪文を公式ホームページに掲載した。しかし、SNS上の批判は収まらず、マクドナルドの公式Xには「何回目の謝罪だよ」という趣旨のコメントが多数書き込まれたほか、現役のスタッフと思わしき人が「今回は本当に色んな意味でしんど過ぎました」と書き込む例もあった。 

 

 ハッピーセットが原因で、店でも、SNSでも怒りと憎悪が渦巻いている。手にできなかった子供も多かったころだろう。SNSではハッピーセットを“アンハッピーセット”と揶揄するコメントが書き込まれていたが、確かに、人々がハッピーになっていないのは問題といえよう。 

 

 マクドナルドがこうした限定商品の販売混雑を引き起こし、謝罪するのはもはや日常茶飯事のようになってしまった。店が混雑するであろう商品は、あらかじめ予想がつくはずである。悪者扱いされる転売屋だけが問題なのではない。企業側も、コラボ商品の販売の仕方について、抜本的な改革を進めなければいけないのではないだろうか。 

 

ライター・宮原可多志 

 

デイリー新潮編集部 

 

新潮社 

 

 

 
 

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