( 316243 ) 2025/08/15 04:56:47 0 00 インターチェンジやジャンクション、サービスエリア&パーキングエリアなどから高速道路の本線に合流する箇所では、渋滞が発生しやすくなります。このような場所で渋滞が発生している時は、加速車線の先頭まで進み、ゆずりあいの精神で 1 台ずつ交互に合流する"ファスナー合流"。しかし、ファスナー合流がなぜ渋滞を減らすのでしょうか?また譲り合いの精神が行き届いている日本人はなぜ苦手なのでしょうか?
文:ベストカーWeb編集部/写真:ベストカーWeb編集部、Adobe Stock(トビラ写真:mapo@Adobe Stock)、写真AC
高速道路や有料道路の合流地点で、左右の車線から交互に1台ずつ合流する「ファスナー合流(ジッパー合流)」。米国や欧州では一般的な交通ルールとして定着していますが、日本ではまだ一部のドライバーにしか実践されていません。
NEXCO中日本が2019年11月から行った実証試験では、E1名神高速道路とE41東海北陸自動車道が接続する一宮ジャンクション上り線で、合流地点にラバーポールを設置し、加速車線を先頭まで延伸する形で実施されました。
その結果、前年と交通量はほぼ同じにもかかわらず、渋滞による損失時間が約3割減少。平均通過時間は約13分から10分へ短縮されました。米国の試験でも渋滞長が40%短縮された事例があり、科学的にも効果が裏付けられています。
ファスナー合流が日本でなかなか広まらない背景には、いくつかの文化的・心理的要因があります。まず大きいのは、加速車線を最後まで使って合流することが、あたかも割り込み行為のように感じられ、「自分だけ得をしようとしている」と見られることを避けたい心理が働きます。
これにより、多くのドライバーが早めに車線変更を済ませてしまい、合流部手前で流れが滞る状況が生まれます。
次に、交通マナーやルールの教育不足があります。教習所や更新講習ではファスナー合流について触れられることはあっても、その効果や正しい実践方法まで深く教えられる機会はほとんどありません。
そのため、多くのドライバーは「ファスナー合流」という言葉は知っていても、どこまで進んでから合流すべきなのか、交互のタイミングはどう取るべきか、といった具体的なイメージを持っていません。
さらに、一部のドライバーが譲らない姿勢を見せることも大きな障害です。合流車線側がスムーズに車列へ入ろうとしても、本線側が車間を詰めて拒むケースが少なくありません。
これにより、加速車線途中での急な割り込みや、ブレーキによる渋滞波が後方まで伝播します。こうした負の連鎖が、ファスナー合流の本来の効果を台無しにしてしまうのです。
結果として、日本では「譲り合いの文化」がある一方で、道路上ではそれが必ずしも発揮されず、ファスナー合流のメリットを生かしきれていない現状があります。
1:合流時の心理的ハードル 加速車線をギリギリまで走るのは割り込みではないかという罪悪感が根強い傾向があります。
2:交通マナー教育の不足 教習所や運転免許の講習では、ファスナー合流の重要性が十分に説明されていないため、正しい合流位置や方法を知らないドライバーが多いのが現実です。
3:一部ドライバーの譲らない行動 合流車を入れまいと車間を詰める行為が、逆に渋滞を悪化させています。結果として、加速車線の途中で無理な割り込みが発生し、スムーズさが失われます。
ファスナー合流を正しく行うと、合流時の速度差が減り、ブレーキ回数が少なくなります。その効果は合流地点だけでなく、後方の交通流全体に波及。特に混雑時間帯や休日の観光地付近では、車列の伸びを抑えられる可能性が高いです。
また、近年はラバーポールや路面ペイントなど、合流位置を明確化する道路インフラの整備も進んでいます。ドライバーが迷わず交互合流できる環境づくりは、行政と道路会社の重要な役割です。
日頃、渋滞時の合流で1台ずつ交互に譲り合っているドライバーの方が多いので、ぜひファスナー合流を実践してみてください。渋滞が約3割減るのですから。
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