( 316328 ) 2025/08/15 06:29:35 0 00 田んぼを点検するコメ農家の男性=13日、盛岡市(石田征広撮影)
コメ増産への政策転換に対し、各地の農業関係者らからは「簡単ではない」との声が上がる。担い手である農業従事者の減少や高齢化に加え、休耕田を利用する場合も時間がかかることなどが背景にある。コメの需給見通しの明示や農家が安定的に生産を続けられる仕組みづくりといった政府への注文も聞かれた。
■増産による価格下落に不安
国内有数の米どころ、新潟県。石破茂首相がコメの増産にかじを切る方針を表明したことに、同県中越地方のコメ農家は一定の評価をしつつも、「近年の異常気象の影響や、これまで続けてきた事実上の減反(生産調整)で失われたコメ農家の生産体力を考えると、増産は言うほど簡単ではない」と指摘した。
増産でコメ価格が下落し、収入が減ることへの懸念も根強い。この農家は「増産後にコメ余りが起きた場合に農家が生産を継続できるだけの収入を得られる仕組みをつくってほしい」と求めた。
JA秋田中央会の営農担当者は、政府が需給見通しを誤り、昨年来の米価高騰を招いたことを踏まえ、「コメの需給見通しを明確に示すことが求められる」と語った。
コメ政策の転換を巡っては、休耕田やコメからの転作作物をつくる畑が増えており「これらを水田に戻すには長い時間と莫大(ばくだい)な費用がかかり、政府や自治体の支援が欠かせない」と同担当者は話す。農業従事者の減少や高齢化が進み、担い手の確保も喫緊の課題だが、「人手不足で他業種から呼び込むのは難しい」との見方も示した。
■「所得補償」求める声も
自治体トップからの発言も相次ぐ。山形県の吉村美栄子知事は7日の記者会見で「20年、30年先を見据えた環境整備が必要だ」と強調した。全国知事会長である宮城県の村井嘉浩知事も6日の会見で「値段が不安定になると、農家の意欲が失われる。本当にどんどんコメをつくって大丈夫なのか、しっかり考えながら進めなければならない」と述べた。
岩手県の達増拓也知事は8日の会見で「岩手県は一足先に(増産に)かじを切っていた」と述べ、国の政策転換を基本的に歓迎する姿勢を示した。その上で「ちょっと余ったくらいで価格の暴落が起きないような価格調整の仕組みの導入に加え、生産側の供給安定性も確保するような所得補償が必要だ」と語った。
|
![]() |