( 316563 ) 2025/08/16 05:57:39 0 00 (※写真はイメージです/PIXTA)
子や孫の教育費を支援することは、多くの家庭で「喜ばれる贈り物」として行われています。学費や塾代、留学費用などは年々高額化しており、親だけで負担するのが難しい場合も少なくありません。そのため、祖父母が援助するケースは増えていますが、ここで意外な落とし穴があるのが「贈与税」です。「毎年110万円以内なら非課税」と思っていても、制度の正しい理解や手続きを欠くと課税されてしまうことがあります。
「まさか課税されるなんて、思ってもみませんでした」
都内に住む70代の佐々木誠一さん(仮名)は、郵便受けに入っていた一通の青い封筒を見て固まりました。差出人は税務署。中には「お尋ね」と題された書面と、孫への贈与に関する詳細な記載を求める用紙が入っていました。
佐々木さんには、高校生と大学生の2人の孫がいます。7年前、長男から「教育費がかさむ」と相談されたことをきっかけに、毎年100万円ずつ援助を続けてきました。
「塾代や授業料、海外留学の準備金など、全部孫のためですから。贈与税なんて考えたこともありませんでした」
総額は7年間で700万円。すべて現金で手渡し、使い道は長男夫婦に任せていました。
贈与税には年間110万円の基礎控除があります。このため「毎年100万円なら非課税」と思っている人は多いのですが、実際には次のような注意点があります。
●基礎控除の対象は1年間に受け取った贈与の合計額
●現金だけでなく、車・宝飾品・家電など現物贈与も含めて計算
●複数の人からの贈与も合算(例:祖父と祖母から50万円ずつ=合計100万円)
●年をまたいでも記録が不十分だと、過去分をさかのぼって課税される可能性あり
佐々木さんの場合、祝い金や生活費の援助も含めると、基礎控除額を超える年が複数ありました。さらに教育資金を非課税で贈与する制度を使っていなかったため、通常の贈与とみなされました。
税務署が贈与を把握したきっかけは、長男が確定申告で教育関連の控除を受けた際、資金の出所が確認されたことでした。
「教育資金の一括贈与非課税制度」を利用するには、金融機関での専用口座開設や領収書提出が必須ですが、佐々木さんは一切行っていませんでした。
税務署とのやり取りの結果、過去5年分について贈与税の申告漏れが指摘され、追徴課税として本税と加算税あわせて約100万円を納付することに。
「孫のためにと思っていたお金が、こんな形で税金になるなんて…。もっと早く仕組みを知っていれば」
基礎控除内に収めたつもりでも、他の贈与や現物贈与と合算すると超えるケースがあります。家族間でも金銭や品物の授受は記録を残すことが大切です。教育資金をまとまって贈与する場合は、非課税制度を正しく利用することを強くおすすめします。
■教育資金贈与で非課税にするための3つのポイント
●専用制度を利用する
金融機関で「教育資金贈与専用口座」を開設し、非課税枠(最大1,500万円)を活用します。制度利用には契約書・領収書などの提出が必須です。
●使い道を教育関連に限定する
授業料、入学金、教材費、留学費用など、制度で認められた項目に限られます。パソコンや通学定期などはOKでも、衣服や生活費は対象外の場合があります。
●証拠を残す
支払い領収書、振込記録、通帳コピーなどを保管し、税務署からの問い合わせに対応できるようにしておきます。記録がなければ非課税が認められないこともあります。
■教育資金贈与非課税制度の期限と最新の改正動向
教育資金の一括贈与非課税制度は、当初2023年3月末で終了予定でしたが、改正により2026年3月31日まで延長されています。
主な改正点(2023年度改正)
●非課税枠は最大1,500万円(うち学校以外の教育費は500万円まで)
●贈与を受ける側の年齢は30歳未満(以前は40歳未満)
●30歳到達時に使い残しがある場合は贈与税課税
●領収書等の提出が必須で、金融機関経由で管理
高齢者から若年層への資産移転を促すため、制度の見直しや延長が繰り返されており、将来的にも条件変更の可能性があります。利用予定がある場合は、早めに準備を進めるのが安全です。
「家族間だから大丈夫」という思い込みは危険です。制度や控除を正しく理解し、必要な手続きを踏むことで、思わぬ課税やトラブルを防ぐことができます。
THE GOLD ONLINE編集部
|
![]() |