( 316713 ) 2025/08/17 03:01:03 0 00 自民党両院議員総会後、記者団の取材に応じる石破茂首相=8日午後、首相官邸(春名中撮影)
参院選で惨敗し辞任圧力にさらされる石破茂首相(自民党総裁)は今も続投の意思を崩していない。背景にあるのはポピュリズム(大衆迎合主義)への対抗心だ。さらに、党再生のために自ら政治改革を断行すべきだとの思いに傾き、秋の臨時国会で政治資金制度改革に道筋をつけたい考えだ。ただ、その思いへの共感は広がっていない。
「俺はこの国を滅ぼしたくないんでね」。今月上旬、首相は周囲にこう語った。石破降ろしが吹き荒れる党内政局に「だったら(代わりの首相は)誰がいいの?」と不快感を示す。
自民は19日にも総裁選挙管理委員会の初会合を開き、総裁選の前倒しの検討を本格化させる。首相の外堀は埋まりつつあるが、退陣を考えるそぶりは全く見せない。
続投意欲を駆り立てているのは「日本人ファースト」を掲げた参政党や「手取りを増やす」と訴えた国民民主党の躍進だ。両党の手法をワンフレーズ・ポリティクスによるポピュリズムだと考えており、周囲に「都合のいいアジテーション(扇動)でこの国はよくなるのか」と口にする。
一部メディアによる「退陣へ」との報道も、一時のムードに屈するわけにいかないという意識を芽生えさせた。首相は周囲に「辞めさせたいという意図だろう。そうはならんが」と反論した。
また首相には、日米関税合意を受けた国内対策や、コメ増産へ方針転換した農政改革は自分にしかできないという自負がある。野党が主張する消費税減税への対応も社会保障費の財源論と合わせて党内や国会で議論したい考えだ。周囲に「このままで後世に責任が持てるのか。言うべきことを言わずに何の意味があるのか」と強調する。
参院選大敗後、党内から「解党的出直し」を求める声が相次いだ。首相が選んだ出直し策は退陣ではなく、政治資金制度改革だ。4日の衆院予算委員会での立憲民主党の野田佳彦代表への答弁で、企業・団体献金の受け取りを政党本部や都道府県支部などに限定する案を念頭に与野党協議を進める意向を示した。
側近は「開かれた自民に変わるという意味だ」と解説する。その先には小選挙区制の見直しも含む選挙制度改革を視野に入れている。
だが「今から党の刷新を頑張りますでは遅い」(官邸幹部)と政権内でも冷ややかに見る向きがある。首相を支えてきた森山裕幹事長も、今月末の参院選総括公表後に辞任する可能性を示唆し、一蓮托生のつもりだった首相は戸惑っている。
党内の石破降ろしとは裏腹に、8月のNHKなどの世論調査での内閣支持率上昇が首相の心の支えになっている。だが、就任以降の衆参の国政選挙でいずれも与党過半数割れに陥ったという現実こそが民意といえる。首相は「これほど政権運営が厳しいとはな。やるところまでやるしかない」とつぶやいた。(末崎慎太郎)
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