( 316858 ) 2025/08/17 05:50:09 0 00 yoshi0511/shutterstock.com
老齢年金を受給している方の中には、生活費が大きく不足している方もいるでしょう。
十分な貯蓄がなかったり、働きたくても働けない状態にあったりすると「この先どうやって生活していけばいいんだろう…」と不安に苛まれる方は少なくありません。
老齢年金を受給中の方でも、一定の要件を満たせば生活保護を受給することが可能です。
最低水準の収入が確保できれば、生活を維持しやすくなるでしょう。
ただし、生活保護の支給額は、住んでいる地域によって異なります。
本記事では、地方に住んでいる老齢年金受給者で年金収入が3万円ある場合、生活保護をいくら受給できるのかシミュレーションしていきます。
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老齢年金を受給中の方でも、所定の要件を満たしていれば生活保護費も同時に受け取ることが可能です。
というのも、生活保護とは生活に困っている方に対し必要とされる保護をすることで、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、自立をサポートすることを目的とした制度だからです。
収入が不足し生活できなくなる事態は誰にでも起こりえることであるため、国民全員に認められている権利となります。
ただし、支給される保護費は、国が定めた「最低生活費」から年金や就労などによる収入を差し引いた金額です。
したがって、公的年金と給与の合計額が最低生活費に満たない場合、その不足分が生活保護費として支給されることになります。
●生活保護の受給要件 生活保護は誰でも受けられるわけではなく、一定の要件を満たした世帯のみが受給できます。
原則として、以下の要件を満たす必要があります。
・保有している資産は資金化し生活費に充てること ・働ける場合は、健康状態や年齢など能力に応じて働くこと ・生活保護以外の年金や手当金などが受け取れる場合は、それらを優先すること ・扶養義務者からの援助が可能な場合は、それらが優先されること こういった要件を満たしていれば、申請することが可能です。
●生活保護の8種類の扶助 生活保護には、扶助する内容により以下の8つの種類があります。
生活費が不足する場合は「生活扶助」が支給され、アパートなどの家賃支払いのためには「住宅扶助」が支給されます。
そのほか、医療費や介護費用など、該当するものがあれば支援が受けられます。
老後の生活費は公的年金がメインとなる高齢者世帯が多いですが、年金受給額は人それぞれ異なり、高額受給している方もいれば数万円しか受給できない方もいます。
厚生年金は、現役時代の収入や厚生年金保険への加入期間などにより受給額が計算されますが、収入が高いほど、また、加入期間が長いほど高額になるのが一般的です。
しかし、地方では都市部と比較して給与水準が低い傾向があり、それに伴い受給額も低くなることが考えられます。
地方は都市部よりも物価が安いことや、賃貸物件の家賃が安いことなどもあり、生活にかかる費用は少なくて済むと思われがちです。
しかし、医療費や介護費、交通手段に要する費用など、都市部同様にかかるものもあります。
こういった費用を数万円でカバーすることは難しい傾向にあり、生活していけない場合は生活保護の申請を検討するという選択肢もあります。
地方に住んでいて年金収入が3万円の年金生活者が、生活保護費をいくら受給できるかをシミュレーションします。
なお、生活保護費を計算する際には「級地区分」について理解しておく必要があるため、シミュレーションの前に、どういったものなのか確認しておきましょう。
●級地区分とは 級地区分とは、生活保護の支給額を決める際に使われる、地域ごとの物価水準の目安のことです。
地域によって物価や生活様式などが異なり、必要な生活費も違ってくるため、一律の金額だと不公平が生じてしまいます。
例えば、都市部では地方よりも賃貸物件の家賃や生活物資が高い傾向があり、最低限度の生活費が保証されない可能性が出てきます。
逆に、地方では生活保護費が余ってしまう可能性も考えられます。
こういった事情を考慮し、地域の事情に即した金額を支給できるように級地区分が定められているのです。
「級地制度」では、全国を1級地から3級地の3つに分け、さらにそれぞれを2つ(例:「1級地-1」や「1級地-2」)に分けています。
1級地は東京23区や横浜市、大阪市などの大都市が該当し、基準額も高額になっています。
では、地方に住む年金受給者はどのくらい生活保護を受給できるのか、シミュレーションしていきましょう。
「地方住む人」がモデルとなるため、級地区分が2級地や3級地の場合で試算します。
●「地方に住む年金収入3万円の人」生活保護費はいくら? 《級地区分2》の場合 級地区分2-1は、埼玉県春日部市、愛知県豊橋市、福岡県久留米市などが該当します。
厚生労働省の「生活保護制度における生活扶助基準額の算出方法(令和7年4月)」によると、生活扶助費は65歳から74歳までが7万990円で、75歳以上が6万4890円です。
また、アパートなどの家賃を支払っている場合、住宅扶助として4万5000円が支給されます。
65歳から74歳までの場合、生活扶助と住宅扶助の合計で11万5990円となりますが、年金収入3万円を差し引くため、生活保護費は8万5990円となります。
同様に、75歳以上の場合は、生活扶助と住宅扶助の合計は10万9890円ですが、3万円を差し引き、生活保護費は7万9890円となります。
●「地方住む年金収入3万円の人」生活保護費はいくら? 《級地区分3》の場合 級地区分3-1は、茨城県つくば市や山梨県大月市、大阪府阪南市などが該当します。
生活扶助費は65歳から74歳までが6万8670円で、75歳以上が6万2890円です。また、住宅扶助として4万900円が支給されます。
65歳から74歳までの場合、生活扶助が6万8670円で住宅扶助が4万900円で合計10万9570円になりますが、年金収入3万円を差し引くため、生活保護費は7万9570円になります。
また、75歳以上の場合は、生活扶助と住宅扶助の合計が10万3790円ですが、年金収入を差し引くと生活保護費は7万3790円になります。
老齢年金を受給中の方でも、収入が最低生活費に満たない場合は生活保護も受給することが可能です。
ただし、現金や預貯金などの資産があれば、まず活用することが求められ、働けるときは状況に応じて働くことが求められます。
生活保護費は公平性を保つために地域によって異なります。
お住いのエリアの級地区分がどれに該当するかで基準額が異なるため、詳しい支給要件や金額などは、市区町村役所や福祉事務所に確認してください。
・厚生労働省「生活保護制度」 ・厚生労働省「級地区分(H30.4.1)」 ・厚生労働省「生活保護制度における生活扶助基準額の算出方法(令和7年4月)」
木内 菜穂子
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