( 317088 ) 2025/08/18 05:22:05 0 00 旅行代金の高騰だけが理由じゃない?(イメージ)
訪日外国人数が増加の一途を辿っている。国土交通省『観光白書2025年版』によると、2024年は年間のべ3687万人が訪日(コロナ禍前の2019 年比 15.6%増)、外国人旅行消費額は8兆1,57億円(2019 年比 68.8%増)と、いずれも過去最高を記録した。
一方で日本人の観光客数は伸び悩む。同調査では、2024年の日本人による国内観光消費額は過去最高の25.1兆円を記録したものの、旅行客数は5億4000万人と、2019年の5億9000万人を下回っており、停滞感が否めない。“日本人の旅行離れ”ともいえる動向を探った。
神奈川県在住の会社員・Aさん(40代男性)はコロナ前、大型連休や年末年始はほぼどこかに出かけていた旅行好き。しかしここ数年、旅行とはとんと無縁になった。行かなくなった理由は、「どこに行っても外国人が多いことを考えると億劫」からだという。何が「億劫」なのか。
「有名な観光地は外国人で溢れかえっているかのようなニュースをしょっちゅう目にします。実際、僕の住んでいる神奈川でも、中華街や鎌倉は以前にも増して外国人で賑わっているといいます。旅行には行きたいけれど、名所や人気の飲食店に長時間並ぶのは億劫です……。しかもどこに行っても外国人ばかりとなると、逆に居心地が悪いというか。外国語メニューをばっちり備えているようなお店だと、僕はおよびじゃないのかなという気持ちにもなってきてしまい、そういう卑屈な気持ちになるのも自己嫌悪。旅行の思い出が行列や外国人の多さになるのは嫌なので、しばらく家でおとなしくしているつもりです」(Aさん)
東京都在住の会社員・Bさん(20代男性)も、学生時代はヒマを見つけては国内外を旅行した。しかし、今年は近場ですら出かけなくなった。「どこに行っても疲れそう」だという。
「箱根ぐらいなら、週末によく行っていたんですよね。車で出かけ、日帰り温泉に入って、蕎麦を食べて帰って来るような感じです。でも、去年泊まったホテルの部屋のテレビが、鎖に繋がれていたんです。聞くと外国人が盗むんだそうで……。治安の悪化を感じました。
たしかに僕が泊まった日も外国人だらけで、一部の人たちは朝食のバイキング会場は食べ散らかされていたり、大浴場では大声で騒ぐしで、全然落ち着けなかった。箱根ですらこうなんだから、ほかの観光地は同じようなんだろうなと思うと、どこも落ち着けない気がして、しばらく旅行はお休みです」(Bさん)
東京都在住の会社員・Cさん(30代女性)が旅行をしなくなった大きな理由は「お金がかかる」こと。しかし、それとは別の理由もあるという。
「いろいろ値上がり過ぎていて、今は新幹線や飛行機の移動費やホテル代、現地での飲食代も考えると、北海道、沖縄に行くとしたら2泊3日で10万円ぐらいの覚悟になってしまう。高いなあと考えているうちに、年々旅行に行く気力がなくなってきました。今となっては、SNSやYouTubeで旅行した人の画像や動画を見るだけで満足します」
Cさんは、「自分の目で見ることにあまり興味がなくなってきた」と意識の変化を明かす。
「実は数年前、友人と一緒に北海道旅行に行ったのですが、その準備で色々と調べました。InstagramやYouTubeで綺麗な場所や面白そうな観光地をピックアップして計画を練ったものの、いざ現地に行くと、特に感動もなかったんです。なんなら誰かの撮影した写真や動画の方が綺麗。北海道料理を食べるぐらいが楽しみですが、今は東京で全国の名産品が手に入るし、ほとんどの料理が食べられる。景色や飲食目当ての旅行はいらないなと思ったら、本気で旅行に足が遠のくようになりました」(Cさん)
埼玉在住の会社員・Dさん(40代男性)は「よほどの施設じゃないと興味をそそられなくなった」と言う。
「たとえば大阪のUSJのように、そこでしか体験できないものがある施設なら行ってみたいと思う気持ちはありますが、それ以外の見るだけのような観光名所は別にいいかな……。 旅行って、行けば何らか得るものがあるかなとは思うんですけど、高いとか暑い、人が多いとか考えていると憂鬱になってしまう。だから、YouTuberの旅動画なんかは見るのも好きですよ。しかももはや行った気持ちになれる。擬似旅行を味わわせてくれるので、よっぽど自分が体で感じないとわからないもの以外、行かなくてもいいような気持ちになるんですよね」(Dさん)
せっかくの旅先で窮屈な思いをしたくないところへ、SNSによって観光が“簡略化”されてきていることも“日本人の旅行離れ”に拍車をかけているのかもしれない。
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