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試合後、スタンドに挨拶する佐賀北ナイン【写真:加治屋友輝】 

 

 第107回全国高校野球選手権は15日、大会第10日目が行われ、第3試合で佐賀北が明豊(大分)と対戦し1-6で敗れた。2007年に“がばい旋風”を巻き起こし全国制覇を成し遂げた佐賀北。その年に生まれた選手たちが甲子園に帰ってきたと話題を集めたが、実は意外なところで“緊急事態”が起きていた。 

 

 全国制覇を成し遂げた2007年に生まれた世代が、また佐賀北を甲子園に連れて来た。初戦では“がばい旋風”の再来を彷彿とさせるサヨナラ勝ちを収め、注目を集めた。しかし、その一方で、学校側はある問題に直面していた。 

 

 甲子園出場が決まると、一般的に応援に行くための資金を集め始める。佐賀北でも応援委員会を作り、後援会や同窓会などと協力して寄付を集め、学校もクラウドファンディングで“寄付”を募った。目標金額は1500万円だが、現状はまだ3分の1以下の450万円(15日時点)しか集まっていなかったのだ。 

 

 山口拓基教頭は「勝てば勝つほど費用はかさむ。それはどこの学校も一緒なのですが……」と切り出しつつも「今のところ1500万円の資金不足なんです。県立学校って借金できないので寄付金しか頼れないんです」と、深刻な状況を赤裸々に告白した。「普通応援に来る時は生徒の負担を減らすために、自己負担は数千円にするんです。あとは寄付金で賄って。でも今はそうも言ってられなくて……」。実際、1回戦は1人8000円の負担だったが、2回戦では1万5000円まで引き上げざるを得なかった。 

 

 学校から甲子園までは休憩も取りながら12時間。その交通費やバス代、朝昼晩の食費まで必要になる。1度の応援で総額約1500万円ほどかかる。これを生徒数で割ると1人あたり約3万円が必要になるが、これ以上負担はかけられない。1回戦では490人の学生が来たが、2回戦では362人に減少。少なからず費用の影響はあると思うと山口教頭は語る。 

 

「アルプス席がスカスカの状態で野球部の生徒たちに試合をさせるのは申し訳ない」。やっとたどり着いた夢の舞台を応援したい気持ちは、心の底からある。それでも現実は問題が山積している。 

 

 

応援に駆け付けた佐賀北スタンド【写真:加治屋友輝】 

 

 佐賀北は6年前にも甲子園に出場。初戦敗退に終わったが「あの時は寄付だけでは集まりませんでした。でも2007年に全国制覇した時の蓄えが少し同窓会にあったのでそれを注ぎ込んで……」。何とか切り抜けたが、今回はその“貯金”はない。 

 

 商業高校や工業高校であれば、生徒の就職先とのつながりで寄付が増えることもあるという。しかし、佐賀北の生徒の多くは大学進学。「佐賀に帰ったら、またすぐ関係者と一緒に企業回りです」。OBや企業に足を運び、甲子園の資金繰りに汗を流す日々となる。 

 

 池田忠徳校長は「甲子園で応援できる機会は滅多に無いので、少しでも多くの子どもたちが来られるような環境を整えてあげたい」と理想を語るも、「そのためには皆様のご寄付が大きな力になりますので、ぜひよろしくお願いします」と、画面の向こうの読者へ頭を下げた。 

 

「お金をください」と頭を下げることほど大変なものはない。“がばい旋風”以来の1勝。その裏で深刻な問題が残っている。 

 

木村竜也 / Tatsuya Kimura 

 

 

 
 

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