( 317548 ) 2025/08/20 04:26:34 0 00 田久保眞紀市長
静岡県伊東市議会は、百条委員会で田久保眞紀市長を刑事告発した後、9月1日から始まる定例会で不信任決議案の取りまとめへと進む予定だ。不信任決議案には市議19人中18人が賛成しているが、唯一態度を保留しているのが「市長派」と目されてきた共産党のベテラン市議、重岡秀子氏である。この期に及んでなぜ田久保氏を擁護するのか、本人に直撃した。
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――議会の中で重岡さんだけが不信任決議案の態度を保留していると聞きましたが、なぜですか。
「不信任決議案については、百条委の結果をしっかり見てから判断したいと考えています。田久保市長擁護の立場から態度を決めかねているわけではありません。私も百条委に委員として参加しておりますが、結局、疑惑はグレーのままで解明が進展しなかったと考えているからです。
『チラ見せ』『19.2秒』の話についても、依然どちらが本当のことを言っているかわかりません。私は市長が中島弘道議長、青木敬博副議長に卒業証書を見せた翌日くらいに青木副議長と話をしたのですが、その時、青木副議長は『偽造の技術は発達しているから何とも言えない。古めかしい紙で自分には偽造とは思えなかった』と述べていた。
ところが、それがいつの間にか『チラ見せだった』という話になって、しかも最初は1回だったのに2回も、と話が変わっていった。お互いが音声を持っているならば、擦り合わせた上でどちらが正しいかちゃんと見極める必要があります(青木副議長は「確かにチラ見した時は本物のように見えたので、重岡議員にそのような感想を話したのは事実です。ただその後、本物の卒業証書と見比べて自分たちが見たものと明らかに違うと考えが変わり、重岡議員には本物を見せた上で説明しています」と反論)。
私も、市長が東洋大学に行って除籍を確認する数日前に、市長の自宅で市長のパートナーから卒業証書を確認させてもらっています。私には本物に見えました。6月28日に除籍とハッキリするまでは、市長は私や議長たちだけでなく、広報課長や一部のマスコミ、メガソーラーの仲間にも卒業証書を見せていたのです。あの時点において市長は自分が卒業していると信じ込んでいたと私は思っています」
――つまり、大学に確認に行くまで除籍になっているとは知らなかったという市長の言い分を信じているということですね。
「はい。除籍がはっきりした後、本人と話した時も大変ショックを受けている様子でした。『パートナーからなんでもっと早く確認しに行かなかったのかと怒られた』としょげた様子で話していました。
百条委には田久保氏と市民運動を一緒にやっていた知人が証人として出て、本人から卒業していないと2度聞いたと証言していますが、一方的な言い分に過ぎず、真実とは限りません。同じく宣誓した市長はそのような話をした記憶がないと証言しており、食い違っています。
やはり私には、市長のパートナーが卒業していたと思い込んでいたことが不思議でならないのです。一番近くにいるパートナーには卒業していないと明かしていないのに、知人に明かしていたというのは不自然ですから」
――とはいえ、東洋大学は卒業していない人に卒業証書は出さないと声明を出しているし、常識的に考えても、卒業していない人に大学が卒業証書を出すはずがありません。重岡さんが見た卒業証書なるものは、偽物だという見方が大勢ですが、真贋についてはどう思っていますか。
「もちろん疑問は持っていますし、真相を知りたいと思っています。しかし、書類の真贋を見極める専門知識を持っていない百条委が判断するのは不可能です。市議会では本物の東洋大学の卒業証書をいくつか集めていますが、学部によって書式は異なるし、30年も経っているからバージョンも透かしがあったりなかったりと変わっている。
私の周辺には、東洋大学が間違って出した可能性を完全に否定しきれないと話す人もいます。確かな証拠がない中、百条委が、自分たちの持っている本物と形状が違うなどの理由で、“市長は嘘つき”という世の声に任せて、偽物と認定することには反対です」
――“市長は嘘つき”という声が大きいのは、卒業しているしていない以前に、市長を辞めると言ったのに撤回したりと、これまで言動不一致があったからではないのでしょうか。
「最初は本人も本気で辞めるつもりでいたのです。家族からも辞めるべきだと言われていた。でも、周りの支持者から市長でないとできないことがあるので続けてほしいと言われるうちに考えが変わっていったのでしょう。彼女が辞めるべきかどうかについては、私も考えが揺れます。なぜなら、ちゃんと選挙で選ばれた身であるからです。
こうなった以上、もう一度信を問うべきだと思いますが、あのタイミングでグレーのままやめなかった姿勢については理解したいと思っています」
――なぜですか。
「そもそも前市長の時代、この町の経済の発展の仕方に不満を持っている人たちが、商店街が閑散としているとか、観光資源がいっぱいあるのにもっと活発化してほしいとか、あるいは、色々なしがらみがあって不公平があるんじゃないかと感じて、田久保さんに投票したわけです。私自身も、党としては自主投票でしたが、市政の刷新が必要という思いから彼女に託そうと応援しました。
今回の一連の動きは、反市長派が市長の学歴問題にかこつけて、市長がやろうとしている改革を潰そうとしているようにも見えなくもありません。辞職勧告決議案の討論で、ある議員は、これで百何億の補助金がパーになったがどう責任を取るんだ、ということも述べていました。図書館建設をストップさせたことによって市に大きな損害を与えた、と。学歴というより市長が掲げてきた公約への不満が根底にあるのでしょう。
差出人不明の真偽不明な怪文書をそのまま信じ込んで、マスコミに流す議員もいました。公職選挙法違反で刑事告発したのも、前市長の後援会長だった建設業者です。正式に選挙で選ばれた市長が失政をしたわけでもないのに、就任からわずか1、2カ月で辞任に追い込まれていく状況に異常さを感じています」
――グレーだと言いますが、市長が弁護士事務所の金庫の中にある卒業証書を持ってきてくれさえすればハッキリします。
「確かにここまで疑惑が出ている以上、市長は百条委員会の中で卒業証書を見せることくらいはすべきだったと思います。刑事告発されていることを提出しなかった理由にしていますが、この説明に納得いっていない市民は多いですし、この点において市長は説明責任を果たしていないとは思っています」
――市長を今も信じたいということなのですか。
「卒業証書を開示しようとしないところはおかしいとは思っていますが、卒業していたと思い込んでいたことについては信じたいです。除籍になっていたことを知っていたのにニセの卒業証書を見せて学歴をごまかしていたわけではない、と。
ただ今のまま続投すれば良いと思っているわけではありません。職員や議会との関係が悪化したまま、このまま市長として職をまっとうするのは難しい状況です。議会とここまで敵対してしまうと予算も通りませんし、出直して信を問い直す必要があるのではないかと思います」
――もし再選挙になったらまた田久保市長を応援するつもりですか。
「それについても今は決めかねている状況です。私は議会も合わせて解散し、議員達も卒業論争から一度離れて、もう一度この町をどうしたいのか掲げるところからやり直す必要があると考えています」
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デイリー新潮編集部
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