( 318076 ) 2025/08/22 04:24:19 1 00 福山雅治さんがフジテレビの“不適切会合”に参加していたことが報じられ、さまざまな反響を呼んでいます。 |
( 318078 ) 2025/08/22 04:24:19 0 00 福山雅治さんが“不適切会合”に参加していたとして、騒動になってしますが……(画像:福山雅治公式Instagramより)
8月18日、フジテレビが設置した第三者委員会の調査報告書にあった、会合に出席していた“男性有力番組出演者”が福山雅治さんであることが驚きをもって報じられました。
その内容は、当時の大多亮専務と福山さんが「2005年前頃から年に1〜2回程度開催」していた会合に女性アナウンサーや女性社員が同席。福山さんの発言が「いわゆる下ネタ的な性的内容を含んだものであった旨述べる者も多数おり、不快であった旨述べる者もいた」(調査報告書の記述)ことが問題視されています。
これが報じられると、ネットメディア各社が多くの記事を配信していますが、その大半が一理こそあるものの、「肝心なところにふれていない」という感がありました。そのためなのかSNSのコメントを見ると、「どのように受け止めたらいいのかわからない」「今回の報道は何か違う気がするんだけど……」などと戸惑うような声が散見されています。
なぜ福山さんに関わる今回の報道には、どこか釈然としないような印象があるのか。それを深掘りしていくと、芸能界の難しさとメディアの問題点が見えてきます。
■中居正広さんとは同一視できない理由
今回の福山さんに関わる報道を中居正広さんの問題と同じレベルで受け止めている人はあまり多くないでしょう。
なかにはWHOが掲げる性暴力の解釈を持ち出して批判する人もいますが、それだけで両者の行為を同列で見ようとすることには無理があります。
行為の内容はもちろん、自ら被害を訴えている人の有無だけを取っても大きな差があり、福山さんと所属事務所の対応を見ても社会的な制裁を受けるべきところは見当たりません。
今なお不快に思い、苦しみを訴えている人がいるわけではないのに、それでも批判する人は誰のために何を求めているのか。あまり考えずに叩こうとしているだけのように見えてしまいます。
さらに中居さんを断罪するレベルで福山さんを見ることへの疑問を感じさせられるのは、行為の時期。20年前にあたる2005年の出来事を現在の価値観ではかろうとする声に、形容しがたい生きづらさのようなものを感じさせられます。
20年前はどんな価値観の世の中だったのかを覚えているのか。自分がどんな行為をしていたかを思い出せるのか。現在ではハラスメントに該当することをしていなかったか。これらをすべてクリアに語れるほど清廉潔白な人はあまり多くないでしょう。
もし20年前の会合でした発言を謝らなければいけない社会なのだとしたら、あまりに息苦しくて生きづらいのではないでしょうか。
福山さんをかばう気持ちはありませんが、当時すでに下ネタを話すキャラクターは一定の認知があり、特にテレビやラジオ関係者の間ではそれが浸透。
福山さんは関係者やファンなどの期待に応えようとしていたところや、下品な一面を出すことで「抱かれたい男ランキング1位」などモテモテ状態とのバランスを取っていたようなところもありました。
さらに福山さんの下ネタはほぼ独身時代のものであり、結婚後は言わなくなっていたと言われています。つまり、プライベートの変化に合わせただけでなく、時代にも合わせて自分をアップデートしていたということ。
これらの背景を考慮してもらえず過剰に叩かれてしまうところに、タレントという職業の難しさが表れています。
■福山雅治さんだけピックアップされた“不自然”
令和の現在も、メディアや芸能界に限らず多くの企業に取引先との会合はありますし、mixiなどのSNSが浸透しはじめた20年前はプライベートも含めて「もっと多かった」という印象があります。
テレビ局だけでなくメディア全般で会合が多く、「懇親会」「決起集会」「慰労会」「反省会」などのさまざまな名目で行われていました。
会合の主催者も、テレビ局や出版社から広告代理店、PR会社、芸能事務所、スポンサー、芸能人などさまざまで、コロナ禍などを経て全体の数こそ減ったものの、現在も変わっていません。
会合そのものに問題はなく、とりわけ20年前は現在よりハラスメントの認識があいまいだっただけに、今それを持ち出して断罪することの難しさを感じさせられます。
たとえば、福山さんがフジテレビとの会合以外で、もっと強烈な下ネタを言っていたかもしれないし、他のタレントも言っていたかもしれません。また、これはフジテレビだけでなく他のテレビ局やメディアの会合でも同様でしょう。
今回の件は中居さんの問題に巻き込まれるような形で福山さんがピックアップされたようなニュアンスがありました。
そもそも第三者委員会の調査期間は短く、「まあ言わないでいいかな」と思った人もいれば、退職していて調べられなかった人もいるのでしょう。すべてを調べたわけではない調査報告書である以上、1人だけを叩くような報道やSNSの動きはアンフェアに見えてしまうのです。
その「福山さんだけピックアップされた」というところこそ、多くの記事やコメントでほとんどふれられていない問題の核心たるところ。ここに闇の深さを感じてしまいます。
■“フジの会合”に出席したのはタレントだけではない
第三者委員会の設置目的は、「本事案に関する事実関係及び当社(フジ・メディア・ホールディングス)の事後対応やグループガバナンスの有効性を客観的かつ独立した立場から調査・検証すること、調査結果を踏まえた原因分析及び再発防止に向けた提言を行うことである」と調査報告書に書かれていました。
しかし実際のところ、フジテレビの事後対応やガバナンスに関する調査・検証よりも事実関係、しかもタレントが関わったところばかりフィーチャーされています。
フジテレビのガバナンスや会合に関わる実態解明が十分とは言えない一方、タレント個人の言動に関する実態解明ばかりが求められていることに違和感を覚えてしまいました。
中居さんだけでなく福山さんにまで追及の目が向けられたことが、その違和感を決定的なものにしたと言っていいのではないでしょうか。
もし福山さんが2005年ごろにハラスメントをしていたとしても、被害を訴える人がおらず、20年前のことである以上、その優先順位が高いとは思えません。それ以上に実態解明すべきはフジテレビの会合そのものであり、特に中居さんの問題が発生した2023年6月につながる近年の流れでしょう。
調査期間が短かったのであれば4月以降も継続調査があってしかるべきであり、少なくとも福山さんの件より重要度は高いことは明白です。
そしてこの件で重要なのは、フジテレビの会合はタレントが出席するものだけではないこと。
自社内の会合、スポンサーとの会合、広告代理店との会合、芸能事務所上層部との会合などで女性アナウンサーや女性社員を伴うものはなかったか。そこで性加害はなかったか。福山さんと同等レベルの性的内容を含んだ発言をした人はいなかったか。
これらの話がほとんど出てこず、タレントに関わる20年も前の話だけが抽出されていることに不自然さを感じてしまいます。
■「スケープゴート」にされるタレント
フジテレビの社員を見ても、上層部だけの責任を問うのではなく、その部下たちがどのような形で会合に関わっていたか。タレント以外の接待にも問題はなかったか。今後に向けてどんなところを改善すべきか。
これらが十分に議論されることはなく、話題の中心は中居さんの問題に移り、さらに福山さんの名前が浮上。まるで「ネームバリューのある人物に焦点をずらすことで本質を遠ざける」ような形になっていることに気づかされます。
ビジネスの観点で言えば、テレビ局は取引先であるスポンサー、広告代理店、芸能事務所などが重要なだけに、「今回の問題に巻き込みたくない」というのが本音ではないでしょうか。
これはフジテレビだけではなくこの問題を報じる他局、出版社、ウェブメディアなども、「自社にとっても不都合なところが出るかもしれないからできればふれたくない」ところ。
「それよりもタレントの問題をピックアップしたほうが危ない橋を渡らずに済み、数字も稼げる」という理由から彼らがスケープゴートのようにされている感が否めないのです。
もはや私たちはタレント個人を批判している場合ではなく、疑わしい“不審”を超えて、信用できない“不信”の声をメディアに突きつけるタイミングなのかもしれません。
■タレントを取り巻く環境は厳しくなっている
なぜ冷静に見ればわかりそうなこの状態に気づけず、タレント個人を叩くようなコメントをしてしまうのか。「釈然としない」という感覚がありながら、結果的に受け入れてしまうのか。
メディア報道を見る側の私たちがもっと考え、厳しい目を向ける必然性を感じさせられます。
いずれにしても、メディアからスケープゴートのようにされ、世間の人々からも叩かれ、第三者委員会の調査報告書でも疑いをかけられるなど、タレントを取り巻く環境は厳しくなる一方。
もし今後もこのような状態が続けば、多くの人々が知るスターはますます減り、ファン向けの活動で稼ぐタレントばかりになっていくのではないでしょうか。
木村 隆志 :コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者
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