( 318553 )  2025/08/24 03:00:37  
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過去に殺人未遂事件も起こしていた 

 

神戸市中央区のマンションで8月20日、会社員の女性が男に刃物で刺されて死亡し、兵庫県警葺合署捜査本部は東京都新宿区高田馬場に住む会社員・谷本将志容疑者(35)を22日に殺人容疑で逮捕した。東京西部で警視庁の捜査員に身柄を確保されていた同容疑者は、2022年にも神戸のマンションで別の女性を襲って殺人未遂容疑で逮捕され、その過去を隠して東京で就職。借金で自己破産手続きを進める中、このお盆休みに神戸に舞い戻って殺人を犯した可能性がある。 

 

兵庫県警は22日深夜の会見で、葺合署に身柄を移送された谷本容疑者が「殺意を持っていたかはわかりませんが、ナイフで腹部の辺りを1回か2回くらい刺したことに間違いありません」と供述し、容疑を一部否認していると明らかにした。 

 

事件は20日午後7時20分ごろ発生。神戸市役所から約300m離れた9階建てマンションの住人から「エレベーター内で男が女性を羽交い締めにしている」と110番が入り、駆け付けた警察官が6階のエレベーター前でこの階に住む損害保険会社社員・片山恵さん(24)が倒れているのを発見した。 

 

片山さんには、一部は肺に達する複数の刺し傷や、抵抗時にできる防御創があり、搬送後に死亡が確認された。死因は失血死だった。 

 

「男は階段で下へ降り、北へ走って行ったのが目撃者の話や防犯カメラでわかりました。そばの駐車場で血の付いた刃物も見つかっています」(社会部記者) 

 

捜査本部は防犯カメラの映像から午後8時台に新神戸駅で男が新幹線に乗ったことを確認し、21日には男が谷本容疑者であることをつかんだ。そして谷本容疑者が22日にJR奥多摩駅で降りたことがわかり、警視庁の捜査員が付近で同容疑者を発見し逮捕した。谷本容疑者は抵抗して暴れたという。 

 

捜査本部は谷本容疑者と片山さんの関係は把握できていないとしているが、片山さんは面識もなく狙われた可能性がある。 

 

「谷本容疑者はJR三ノ宮駅付近から約10分間片山さんを追跡し、片山さんがオートロックの玄関を入る時にすぐ後ろについて一緒に入る“とも連れ”という手口で侵入し、同じエレベーターに乗り込んでいます。 

 

マンション玄関の防犯カメラの映像では片山さんは谷本容疑者の追跡に気づいていなかったようだと捜査本部はみています」(社会部記者) 

 

注目されるのは谷本容疑者が3年前にも似たような事件を起こしていることだ。 

 

「2022年5月に当時、神戸市東灘区に住んでいた谷本容疑者は殺人未遂容疑で逮捕されています。今回の現場に近い中央区のマンションで当時23歳の女性が帰宅し、ドアを開けた瞬間に押し入り、女性の首を絞めて殺害しようとしたとの容疑で、ストーカー規制法違反容疑で再逮捕もされています。 

 

谷本容疑者はその前から一方的に女性に付きまとい、首を絞めた後、1時間にわたって部屋に居座って自分が女性を好きだと言ったり『警察に言わないで』と言ったりしています。女性は幸い軽傷ですみました」(在阪記者) 

 

 

2022年に殺人未遂で逮捕された谷本容疑者だが、1年後の2023年5月9日、今回の事件直前まで勤務した東京都内の運送会社を履歴書を持って訪れている。逮捕翌日の8月23日、運送会社社長が取材に応じた。 

 

「谷本君は、うちが就職情報誌に出した寮付きの社員募集の広告を見て面接に来ました。態度がよかったので即採用を決めました。以前、関西の会社で10年以上働いたというので『なんで関東に来たの?』とたずねると、『昔ヤンチャしてて悪い仲間と関係を絶ちたいので東京に来た』と。更生するなら手伝ってあげたいと思い採用しました。 

 

ただ履歴書に千葉のほうの会社を3か月で辞めたと書いてあり『上司と折り合いが悪かったので』と言ってました。犯罪歴も『逮捕とかありますか?』って聞くと『ありません』と答えました。こちらとしては信じるしかないです。犯罪歴も履歴書に書いていないし」(社長) 

 

社長は谷本容疑者のドライバーとしての勤務態度は「めちゃくちゃまじめで、お客さんからのクレームもゼロ。後輩の面倒もよくみていた」「同僚からは『谷ヤン』『谷本さん』と呼ばれ慕われていた」と話す。 

 

ギャンブルなどもせず目立った女性関係もナシ、休日は都内の社会人バレーボールチームに所属し、子どもたちの面倒をみる一面もあったというが、生活は安定していなかったようだ。 

 

「彼は月30万くらいの円給料を受け取っていました。ここの寮費は3万5千円で、彼はギャンブルもしなかった。でも毎月5万円を前借りさせてほしいと言ってきたので理由を聞くと『親の療養費に使い、サラ金から300万円くらいの借金がある』」と言うんです。 

 

それで僕の顧問弁護士の勧めで自己破産手続きを始めました。それが入社半年後から8カ月ほど後のことで、まだ自己破産はできていません。 

 

あと今年の正月にも一度無断欠勤をしました。実家に帰ると言ってたんですが、正月休みが終わっても出てこないので電話すると『おばさんが入院している』『両親の面倒をみている』とか言いました。それから、以前10年ほど勤めた会社から『戻ってきてくれ』って言われたらしく、その気になっちゃったんでしょうね。だからいつ辞めてもおかしくないなとは思っていました」(社長) 

 

 

その谷本容疑者はお盆休み明けの出勤日だった22日にまた無断欠勤し、その夜、殺人の容疑者としてテレビに登場することとなった。 

 

「彼は17日から21日に盆休みを取り、実家に帰ると配車係に伝えていたようです。22日に来なかったので緊急連絡先の親戚に連絡したんです。その親戚のかたも電話やLINEをしても反応がなかったようです。 

 

それで夜に妻がテレビを見て同姓同名の人物が逮捕されたと気づき、彼の映像を見て『本人だ』とわかりました。妻は『何やってるんだ』と泣いていましたよ。日付が変わったころに彼の親戚にメッセージを送ると返信がありました」(社長) 

 

その返信には、 

 

〈本当にニュース見てびっくりしました。申し訳ありません。本人には心から反省して罪の償いをしてほしいと思います。片山恵さんのご冥福を真剣に祈らせて頂きます。親切にして頂いた事感謝致します。裏切るような事してしまい言葉もありません。本当に申し訳ありません。〉 

 

と書かれていた。 

 

事件の“再発”をなぜ防げなかったのか。捜査で事件の背景や動機が解明されても、命が失われたことは取り返しがつかない。 

 

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班 

 

集英社オンライン編集部ニュース班 

 

 

 
 

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