( 318581 )  2025/08/24 03:37:58  
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異常な暑さが続く日本では、特に東京都心で6日連続の猛暑日が記録されています。

暑さが命の危険をもたらす中、経済的理由でエアコンを使えない「エネルギー貧困」の問題が浮き彫りになっています。

生活保護を受ける82歳の男性は熱中症で苦しみ、エアコンや扇風機がなく、利用のための金銭的準備ができない状況です。

専門家によると多くの高齢者や低所得世帯が危機に直面しており、エアコンは生命維持装置として位置づけられるべきだとされていますが、有効な政策が不足しています。

夏季加算が存在しないことも問題視されており、異常気象から住民を守るための対策が求められています。

(要約)

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各地で異常な暑さが続いています。 

東京都心では、ことし最も長い6日連続の猛暑日となりました。 

 

暑さによる命の危険のリスクは、生活に困窮する人ほど高くなります。 

経済的な事情などでエアコンを使えない、「エネルギー貧困」の現場を取材しました。 

 

■エアコンも扇風機もない生活「経済的にそんなすぐ準備できない」生活保護受ける男性は熱中症に 

 

2025年5月1日から8月17日にかけて、熱中症で救急搬送された人は東京都で6855人と、2024年の同時期を上回っている。 

 

東京都内で訪問診療を行う「ひなた在宅クリニック山王」の田代和馬院長。 

 

熱中症患者の往診や、その後のケアが去年と比較にならないほど増えているという。 

 

8月21日に田代院長が往診に向かったのは、周囲が建物に囲まれた大田区のアパート。男性が一人で暮らしている。 

 

田代院長 

「暑くないですか」 

 

都内で一人暮らしの男性(82) 

「大丈夫。おかげさまで大丈夫ですよ」 

 

田代院長 

「脈がね、速めじゃないですか。脱水症の時とかね、身体の水分が少ないから、心臓が頑張って少ない水分をたくさん回そうとして、心拍数上がったりするんですよ」 

 

田代院長が男性の自宅を初めて訪れたのは、東京都心で最高気温35.8度が記録された7月8日。男性のケアマネジャーから連絡を受けたためだった。 

 

男性は熱中症で、意識が朦朧とし、汗をかけないほどの脱水状態だったという。 

 

男性 

「もうペンギンみたいに、ちょこちょこしか歩けなくなって。いままで大股で歩いていたのがさ」 

 

田代院長 

「遅ければ重症化していたかもしれない」 

 

部屋の風通しは悪く、蒸し暑かった。賃貸でエアコンはなく、当時は扇風機すらなかった。 

 

いま使用している扇風機は、田代院長がその日に買って貸してあげたものだ。 

 

村瀬健介キャスター 

「暑さが堪えるなみたいなことを感じていらっしゃったんですか」 

 

男性 

「暑さはいつも堪えてはいるんですけどね」 

 

田代院長はエアコンの購入も勧めたというが… 

 

 

田代院長 

「クーラーをちょっと準備したいよねと。経済的にそんなすぐ準備できない、そんなまとまったもの(お金)ないとおっしゃって、そうだよなという感じでした」 

 

男性に頼れる親族はなく、月に10万円ほどの生活保護を受けている。 

 

家賃は約4万5000円。食費など生活にかかる費用を除くと、手元にはほとんど残らない。 

 

通帳の残高は1万3379円だった。 

 

■「エアコンは生命維持装置」 大丈夫と考えている人の多さに院長が危険視 

 

いま、「エネルギー貧困」という言葉が注目されている。 

 

必要な電気やガス代の支払いが困難になるなどの状況を指し、エアコンの使用を我慢している状態も含む。 

 

実態調査に取り組んできた一橋大学の古賀勇人氏は、地域や季節などによって差はあるが、平均すると約1割の世帯がエネルギー貧困の状態にあるとみている。 

 

一橋大学 講師(環境地理学)古賀勇人氏 

「生活保護基準ではない人たちでも、エネルギー貧困になりやすい人は多い。例えば、年金世帯(の一部)は生活保護世帯より、大変な状況にあったり、シングルマザー世帯などがより脆弱な状況に置かれていることが研究でわかってきている」 

 

東京大学などの分析によると、2013年以降、東京23区において屋内で熱中症で亡くなった1295人のうち84.3%が、エアコンがないか、使用していなかった。 

 

ひなた在宅クリニック山王 田代和馬 院長 

「エアコンが必要だとか、そういったことをわかっていても、実際に導入できない方というのは、たくさんいらっしゃるわけですよね。厳しい環境で亡くなられてしまった方は実際に(患者で)数名いらっしゃいました。 

 

エアコンを使用されていない方が体調崩されているというのが、目の前で起こっている現実ですから。災害化した猛暑の中において、エアコンは生命維持装置のひとつと捉えていただいた方がいいですよと、患者さんや地域の方々にはお声がけしています」 

 

その一方で危険なのは、自分は大丈夫だと考えている人の多さだという。 

 

 

田代院長 

「(熱中症に対して)自分は大丈夫だと思っていた方が大多数だし、(熱中症を)乗り越えた後も、乗り越えたから大丈夫だろうとなってしまう方がいて、継続的な支援や指導を続けていく難しさ、必要性は日々痛感しています。 

 

そういった方が(エアコンがないことを)危機的な状況だと捉えていればまだ色々動けるんですけど、(エアコンがないのが)もう当たり前のことと思ってしまって、なかなかこれを改善することはできないと思っている方が非常に多い」 

 

一人で暮らす男性は、熱中症になった後でも、我慢すればいいと繰り返した。 

 

男性 

「エアコンをつければ確かに楽かもしれないけどね」 

 

村瀬キャスター 

「身体はだいぶ楽になるんじゃないですか?」 

 

男性 

「なると思うけど、でもいいです。少し汗ばんではいるけど、自分で(身体に)負担かかっているとは、あんまり思えないんですよね」 

 

村瀬キャスター 

「クーラーなしで我慢されるんですか」 

 

男性 

「我慢というか、我慢するんですよ」 

 

■「夏季加算は存在していない」有効な政策がない現状 

 

地球温暖化を防ぐため、国や自治体は、住宅の断熱化や、太陽光パネルの設置などを後押しする、さまざまな補助金政策を行っている。 

 

一方で、「エネルギー貧困」状態にある人たちの命を、異常な暑さから守る有効な政策がないと専門家は指摘する。 

 

一橋大学 講師 古賀勇人氏 

「具体的に実質的にエネルギー貧困対策になっている政策というか、制度は、日本だと生活保護の冬季加算くらいしかないような現状になっています。夏季加算は存在していません。 

 

生命が危なくなってしまうような時期には、まず涼しくする設備がないと話にならないので、そういったものを設置するのが絶対的な最低基準として必要になると思います」 

 

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