( 318656 )  2025/08/24 05:05:17  
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若い世代は移動時間を「無駄」と感じる割合が高く、20代では67%、30代では56%に達していますが、中高年になるほどその割合は減少し、60代で44.6%、70代で31.2%です。

移動時間を生産的な活動に使いたいと考える若者も多く、20代は約69%がそう考えています。

この背景には経済的要因があり、限られたリソースを考慮して行動する傾向が見られます。

 

 

また、若者は海外旅行に行きたいと思いながらも、金銭的・社会的制約から困難を感じており、日本国内での活動に目を向けるようになっています。

特に地方移住を選ぶ若者も増え、自分のやりたいことが国内でもできることに気づく傾向があります。

ただし、内向き傾向として、心理的な理由からリスクを取らなくなっている一面も指摘されています。

(要約)

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「移動時間は無駄」 と考える割合は中高年になると減ったといいます。写真はイメージです=imtmphoto/stock.adobe.com 

 

「移動時間は無駄だと思う」という考え方に、20代の67%と30代の56%が同意している――。旅行を含めた「移動」についての意識を尋ねる調査を実施した研究者がいます。その結果などをもとに5月、『移動と階級』(講談社現代新書)を著した社会学者の伊藤将人さんに、若い世代の「移動」の価値観について聞きました。(朝日新聞withnews編集部・金澤ひかり) 

 

国際大学グローバル・コミュニケーション・センター研究員の伊藤将人さんは、地方移住政策が専門です。 

 

2024年、全国のおよそ3000人を対象に、通勤や通学、転居、旅行など幅広く「移動」に関する意識調査を実施しました。 

 

その調査の中でも若い世代の傾向を尋ねると、「若年層ほど移動時間は無駄だと思っています。移動時間に生産的な活動をしたいと思ってるということもわかりました」と指摘します。 

 

「最近は、旅行や移動に限らず、能力主義に関する話題や本も目にします。『成長至上主義』『目的至上主義』みたいなものが、移動にもあるのだという印象です」 

 

調査では「『移動時間は無駄だと思う』という考え方に同意するか」と尋ねました。 

 

20代は「同意」「どちらかというと同意」をあわせて67.1%、30代は56.2%でしたが、中高年では減って60代は44.6%、70代だと31.2%でした。 

 

この設問の回答には「判断できない」という選択肢もありましたが、伊藤さんは「年配の人は『判断できない』を選択している人が多かったです。一方で、若年層ほどズバッと答えていて、その点も、興味深い傾向でした」と話します。 

 

さらに、「『移動時間には生産的な活動をしたい』という考え方に同意するか」を聞くと、20代は「同意」「どちらかというと同意」が69.3%、30代が66.9%でした。60代は50.3%で、70代だとさらに低く40%でした。 

 

「若者は、できる限り自分の行動や実践が、自分の成長に結びついていなければならないんじゃないかという感覚を持っている。もしくは、逆に自分の成長に貢献しないようなことなら、やらない方がいいんじゃないかと思う感覚があるのではないでしょうか」 

 

 

この結果をもとに、伊藤さんは「人によると思いますが、バックパッカーとしての旅は、あてもなく、なんとなくふらふらとした雰囲気を楽しむとか、そういう醍醐味があると思います。目的至上主義が旅にまで入り込んだ状況では、そういう旅はしにくいだろうなと思うんですよね」と話します。 

 

背景にあるのは経済的な要因ではないかともいいます。 

 

「物価高や円安も、目的至上主義に影響しているようにも感じます。限られたリソースをどう使うか考えたときに、『いかに自分の役に立つか』『いかに目的達成に役立つか』を考えざるを得ないところはあるんだろうなと思います 

 

では、若者は「旅をしたい」とは思っていないのでしょうか。 

 

伊藤さんの調査で「海外に行きたいけれど、行けなかった経験」があるかどうかを尋ねたところ、全年代の中で20代が最も高かったといいます。 

 

「金銭的な負担の部分に加え、2023年5月に新型コロナが5類に移行するまでは、外出は自粛する社会情勢でした。比較的留学や旅行がしやすいとされている学生時代にコロナによって外出が阻害された経験を他の世代以上にしているのが、いまの若い世代です」 

 

また、「自分が移動したい時に決定できるか」という質問に「はい」と答える人の割合は、若年層ほど低い傾向にあったといいます。 

 

「50代以上では半数以上で自分が決定権を持っていると答えているのに対し、20代と30代では30%台。そこは明確に差が出ています」 

 

伊藤さんは「地域おこし協力隊」などのかたちで地方に移住した若者への聞き取りを続けています。 

 

「ここ5年くらいの聞き取りの中で顕著なのが、『実は、昔は青年海外協力隊とかいいなって思ってました』とか『海外に行って何かしたいと思っていたんです』という人が多いことです」 

 

伊藤さんは「コロナの影響や物価高などで海外に出にくくなったこの数年間の間に、国による地方創生の動きなどの影響もあり『自分のやりたいことが海外ではなく国内の地方でもできることに気付いた』という人が、地方移住しているということなんです」と話します。 

 

「仮説」と前置きした上で、「20~30年前であれば海外に向かっていた人と、同じようなマインドやパッションを持った人が、いまは国内の地方に向かっている可能性もあると思います」と話します。 

 

一方で、内向き傾向については「海外は怖い、治安が心配という心理的な理由もあり、日本語が通じるところ、コンフォートゾーンから出ず、リスクをとらなくなってきているともいえます」と指摘しています。 

 

<若者のひとり旅> 

みなさん、旅行は好きですか?お金や時間が必要で、かつ天気やトラブルなど不確実性の高い「旅」は、〝コスパの悪い娯楽〟とも思われるかもしれません。令和を生きる若い世代は、どんな旅行をしているのでしょうか。なかでも「ひとり旅」をする理由は?そして、旅行をしない・できない理由とは?多方面から読み解きます。 

 

     ◇ 

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