( 319178 ) 2025/08/26 05:31:49 0 00 どこまでがマナー違反か(写真:イメージマート)
映画『鬼滅の刃 無限城編』や『国宝』などのヒットで、映画館に足を運ぶ人も増えている。そうしたなかで頻繁に話題にのぼるのが、映画館のマナー問題だ。映画本編上映前にスクリーンでも注意喚起されるが、SNSでは依然として上映中のおしゃべり、スマホ使用、座席を蹴るといった迷惑行為が横行している様子が投稿され、物議をかもしている。
そうした一部の観客のマナー違反には、映画館側も苦慮している様子がうかがえる。「T・ジョイPRINCE品川」は8月12日、「一部のお客様の鑑賞マナーにより、最適な鑑賞環境をご提供できない状況にございました。映画鑑賞を楽しみにご来場いただいたにも関わらず、ご不快な思いをさせてしまい誠に申し訳ございません」と謝罪文を掲載している。劇場スタッフが繰り返し注意したものの、スマホを点灯させ続け、周囲に迷惑をかけた客がいたというのだ。
こうした明らかな迷惑行為は別にしても、当人が“許容範囲”と思っている行動が、知らず知らずのうちに周囲の観客に迷惑をかけているケースもあるだろう。難しいのは、どこまでがマナー違反かという線引きの意識だ。映画館で同行者の無自覚な行為に不満を持った人たちの声を集めた。
都内のヘアサロンに勤務するスタイリストの女性・Aさん(20代)は、一緒に映画を観に行った友人の上映中の振る舞いに「ドン引き」したという。
「以前、女友達と一緒に映画を観に行ったのですが、彼女が上映中に靴を脱いであぐらをかいたり、体操座りするような姿勢で映画を観ていたんです。正直、私の常識的にはあり得ないことで、かなりドン引きしましたね。
しかも、途中で靴下のまま地面に足をつけて、また体操座りをするなど、終始もぞもぞと足を動かしていました。こっちは集中して映画を楽しみたいのに、気になってしまって……。そもそも衛生観念が違うのだと思います。足が臭くなかったのでまだ我慢できましたが、もし臭かったら友人を辞めていたかもしれませんよ(笑)」(Aさん)
都内の大学に通う男性・Bさん(10代)は、上映中の恋人の振る舞いに、すっかり「冷めた」と語る。
「付き合って2ヶ月の彼女と一緒に映画館に行ったんです。普段は節約しているので、映画館に行くこともほとんどない。僕としてはすごく貴重な時間で、楽しみにしていました。しかし、いざ映画が始まると、彼女がずっとカバンをゴソゴソして、スクリーンに集中していない。何をしているのかと思ったら、カバンのなかに隠したスマホをいじっていたんです。
本人はスマホの光で周囲に迷惑にならないよう気を遣っていたのだと思います。でも、薄っすらとカバンが光っているし、数秒程度ではなく何分もスマホを見ている。それなら映画館に行く必要がないし、たった2時間程度も集中できないのかと、冷めてしまいましたね。上映後に『何してたの?』と聞くと、『え、別にSNSとか見てただけだよ』とあっけらかんとしていて……」(Bさん)
飲食物の持ち込みについても問題化しやすい。大手シネコンは基本、飲食物の持ち込みを禁止している。上映中のにおいや咀嚼音のトラブルを回避する目的にくわえて、飲食物販売は映画館の収益源でもある。
しかし、ミニシアターや独立系の映画館では、持ち込みを一部許可しているところもある。何を持ち込むかは観客の自己判断に任されるため、「どこまでがOKか?」という線引きが人それぞれに異なるようだ。
映画鑑賞が趣味で、定期的にミニシアターに足を運ぶという自営業の男性・Cさん(30代)は、飲食物の持ち込みで友人と口論になったことがある。
「以前、後輩と一緒にミニシアターで映画を観ました。持ち込みはOKだったのですが、僕は『においがしない、音がしない、シアターを汚さない』がルールだと思っています。しかし後輩が、大手ハンバーガーチェーンのハンバーガー、ポテト、ドリンクセットを堂々と持参し、映画が始まってから食べ始めたんです。
険悪になりたくなかったので、『お前、いまそれ食べるの?(笑)』と小声で軽く注意したのですが、本人は僕が何を気にしているのかわかっていないようで、周囲ににおいを撒き散らしながらハンバーガーを食べ続けたんですよ。しまいにはポテトを食べて、ベタベタになった手を舐めたり、その手でドリンクホルダーを触ったり……。まったく映画に集中できなかったし、『二度とこいつを映画には誘わない』と決意した瞬間でした」(Cさん)
映画鑑賞時に明示されたマナーを守ることは大前提。そのうえで、個人の裁量に任された範囲の行動でも、周囲に不快感を与えることはある。「どこまで許せるか」の線引きは人それぞれだが、お金を払って劇場に足を運ぶ以上、互いに迷惑をかけずに楽しみたいものだ。
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