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岸谷蘭丸氏(実業家・インフルエンサー)は、日本人が英語を話せない理由について、主にやる気の欠如と文化的な背景を指摘しています。

日本は経済大国であり、英語を学ぶ必要性が低かったため、英語を勉強しない環境が形成されてきたと説明。

また、母国語で高度な教育を受けられる環境や、外国人に対するコンプレックスも影響していると述べています。

韓国との比較では、韓国人は努力して英語を学び、言語教育も小学生からしっかり行われているため、英語を話せる人が多いと指摘。

最終的には、日本人が英語を話せない大きな理由は、単純にその必要性がなかったからだとまとめています。

(要約)

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岸谷蘭丸(きしたに・らんまる) 実業家・インフルエンサー。2001年7月7日生まれ Photo by Shogo Murakami 

 

 インフルエンサーとしてさまざまなメディアで活躍する岸谷蘭丸さんは、イタリアの名門大学の現役生であり、高校から米国へ海外留学した経験も生かして、海外留学支援サービス「MMBH留学」を立ち上げた実業家でもある。そんな彼に、「なぜ日本人は英語を話せないのか」を聞いてみた。(教育エディター 江口祐子、ダイヤモンド・ライフ編集部) 

 

● 危機感があるようで、ない日本 

 

 ――なぜ日本人は中学・高校で英語を勉強しているのに、うまく話せない人が多いのだと思いますか? 

 

 日本人が英語を話せない理由、それはシンプルで、「やる気がないから」。つまり、努力してないだけなんですよ。 

 

 みんな、なんとなく「英語しゃべれるようになりたいな〜」とは思ってる。けど、実際にちゃんと勉強してる人なんてほとんどいない。だから、しゃべれない。それだけの話なんですよね。 

 

 他の教科は結構できるのに、英語だけできないなんて、おかしいと思いません? 単純に、やってないからできない。 

 

 でも、それは文化的な背景もあると思うんです。これまで日本は経済大国で、多くの人にとって、英語を本気で学ぶ必要がなかった。GDPが世界2位の時代※、日本国内でほとんどが完結できていた。 

 

※日本は1968年にGDP(国民総生産)で米国に次ぐ世界2位に。しかし2010年に中国に抜かれ3位に。その後23年にドル換算でドイツに抜かれて世界4位に。 

 最近は「日本はもう終わってる」って言われがちですけど、僕自身はそう思ってなくて。たしかに成長は鈍化してるし、課題も多いけど、それって日本に限った話じゃない。 

 

 むしろ、資本主義や民主主義みたいな今の世界を支えてる仕組み自体がちょっと限界を迎えてて、どの国もゆっくり下降フェーズに入ってるだけなんじゃないかな。そう思うと、日本だけが特別、終わってるとは思わない。だって、こんなにみんな真面目に働いて、秩序があって街もきれいな国が、簡単に終わらないでしょ。 

 

 だから、英語を本気でやろうっていうモチベーションも全体的に上がらないのかなと。危機感があるようで、心の底では「まだ大丈夫でしょ」って思ってる人、多いと思う。 

 

 

● 母国語で最先端の教育、日本は恵まれている 

 

 僕の理解では、(英語ネイティブではなく)英語を話せる人は、母国じゃ生きていけなかったからなんですよ。自国の経済が弱すぎて、「稼ぎたいならアメリカやイギリスに行くしかない」って切羽詰まってた。だから、嫌でも英語を勉強するしかなかった。生きるための英語です。 

 

 ヨーロッパの多くの国もそう。国内に世界ランキング上位の大学がないから、国外に出て勉強する必要があった。英語ができないと、勉強すらできなかった。 

 

 でも日本は違う。東京大学をはじめ世界レベルの大学がちゃんと国内にあって、しかも母国語で最先端の教育が受けられる。これって実はめちゃくちゃ恵まれている。 

 

 だから、英語を「勉強しない」環境が自然にできてしまっている。これがメンタル的な大きな理由ですね。 

 

 さらに言うと、日本人って「外国人コンプレックス」が根強い。欧米の人たちを前にすると緊張してしまうところがあると思うんです。「あ、ガイジンさんが来た……」ってオロオロしちゃうような。それが英語を話す時に萎縮してしまう原因でもあるかなと。 

 

 もちろん人種に優劣なんてありません。でも、映画やドラマを通して僕らが見てきた「ハリウッドのヒーロー像」――例えばトム・クルーズやブラッド・ピット、レオナルド・ディカプリオみたいなスターたちが、「英語を話すカッコいい白人像」として刷り込まれてきたと思う。 

 

 そうした映像文化による、いわば憧れの植え付けが、いつの間にかコンプレックスになった。それが、英語を話す場面で無意識に自信を奪っている。そういう現象って、けっこうあるんじゃないかな。 

 

● 英語と日本語、言語の成り立ちが違い過ぎ 

 

 言語的な構造の問題もあります。MMBH留学の提携塾『Liberty English Academy』で教えられている言語解説によると、英語と日本語では成り立ちが違いすぎるんですよ。言語学には「ランゲージツリー」という分類があって、英語は「インド・ヨーロッパ語族」の中のゲルマン語系。フランス語やスペイン語、ドイツ語も同じ分類で、文法や語彙も似てるから学びやすい。 

 

 でも日本語は、そのツリーの全く別の枝にいる。これだけでもう、日本語が母語の人が、英語を学ぶのはめちゃくちゃ不利。決定的に違うのは、「syntax」(統語法)の有無。ラテン語圏にはこれが明確に存在する一方、日本語には似たようなものが無い、とされている。 

 

 英語は「verb」(一般的には「動詞」のこと。しかし正確には日本語の動詞と意味や役割は異なるもの)が命で、語順が全てを決める。単語の位置がちょっと変わるだけで意味がガラッと変わる。でも日本語は「てにをは」でコントロールできる言語。単語の順番がぐちゃぐちゃでも意味が通じる。そもそも時制すら曖昧だったりする。 

 

 

 だから、日本語的な発想で英語を学ぼうとすると、どこかでズレる。文法も単語も、概念ごと切り替えないと英語って話せるようにはならないんです。 

 

● 韓国の英語教育は小学生からハンパじゃない 

 

 じゃあ、なんで同じアジア圏で、しかも日本語と似た言語体系を持つ韓国人は英語が話せる人が多いの?って疑問が出てきますよね。これもまた、答えはシンプルで「めちゃくちゃ努力してるから」。 

 

 例えば(アイドルグループの)KARAや少女時代は、日本デビュー時には日本語をしっかり話して、日本のバラエティ番組でも活躍していました。BTSも、初期のころは日本語曲をリリースして、日本語でファンにメッセージを伝えていました。 

 

 当時の韓国は今ほど経済的に豊かではなかったし、国内だけではマーケットが小さかった。だから、日本という大きな市場に挑むために、みんな必死で言語を学んでいた。 

 

 そこで得た収益を、さらに次の展開に投資して、やがて英語圏や世界市場に打って出ていく。BTSはまさにその成功モデル。努力と戦略がちゃんとつながって、今があるわけです。 

 

 韓国の英語教育はハンパじゃない。韓国人の友人が学校で使っていた英語の教科書を見たことがあるんですが、とにかく文法をしっかりやってる。しかも小学生から。そりゃ、英語を話せるようになるわって思いましたね。 

 

 結局のところ、日本人が英語を話せないのって、やってこなかったからなんですよ。やる気がなかった。英語を「話さなきゃいけない状況」もなかった。 

 

 日本はこれまで経済も強くて、大学も仕事も国内で完結してた。わざわざ英語を使う必要がなかった。だから、勉強してこなかった。シンプルにそれだけの話だと思います。 

 

江口祐子/ダイヤモンド・ライフ編集部 

 

 

 
 

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