( 319748 )  2025/08/28 05:43:18  
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 ガソリン暫定税の廃止が検討されるいっぽうで、代わりの財源確保が叫ばれている。そこで出てきたのが「走行距離課税」というもの。たくさん走るクルマほど多く税金を払えという内容だが、この制度いろいろおかしくないだろうか。いったいどこがヘンなのか、その矛盾点をズバリ指摘しよう! 

 

 文:国沢光宏/画像:Adobe Stock(トビラ写真=monticellllo@Adobe Stock) 

 

 本来の税額より1リッターあたり25.1円を上乗せしている『ガソリン暫定税』を廃止する動きになっているけれど、政府自民党は「税収減った分の財源が必要」と主張し、その代わりに「走行課税」を導入しようとしているようだ。 

 

 裏で動いているのは石油連盟だと言われている。なるほど自民党の「石油流通問題議連」には重鎮を含め190人もの議員が名を連ねている。大スポンサーである石油連盟のお願いとあれば動かざるを得まい。 

 

 走行課税は文字通り「走った分だけの税金を取る」というもの。なぜ石油連盟がそんな主張をするかといえば、石油を使わないで走る電気自動車の普及にブレーキを掛けたいからに他ならない。数年前から「道路を作り維持するための負担をしていない電気自動車は走行課税しろ!」と言い続けている。 

 

 この主張、デラタメ。そもそもガソリン諸税は道路特定財源じゃなく一般財源。道路を作るためだけに使われているワケじゃない。 

 

 また、ガソリンはシーレーン防衛のための経費や膨大なコストが掛かる原油備蓄などの経費を含む。電気も原発の莫大な廃炉費用(現時点で予算規模すら見えていない)など上乗せされている。加えて電気自動車だって自動車税、重量税、高速道路料金など、道路を作るためコストなど負担してます。 

 

 そもそも電気自動車の販売比率は2%程度。国際公約している二酸化炭素排出量削減目標(2030年まで46%減)のために必要だ。 

 

 というワケで、石油連盟の主張は電気自動車に対する単なるイヤがらせでしかない。なのに自民党は走行課税導入を強行しようとしているらしい。100歩譲って走行課税を取り入れるとする。どうやって走行距離をチェックするつもりだろう?最も簡単なのは距離計の数字を車検時にチェックし、重量税のように支払うこと。 

 

 これ、オドメーターを前回の車検から2千kmくらいの距離に設定してくれる業者が出てくる。 

 

 欧州の大型トラックのようにGPSを使った課金装置という方法もあるけれど、乗用車の場合、走る場所が決まっている大型トラックと違い近所の移動も多い。GPSアンテナだけ覆ってしまえばいかんともしがたい。 

 

 GPSを使うのなら、車両側のデータも同時に拾わなければならず、機器の開発や信頼性の確保、収受方法まで構築しなければならない。世界を見ても本格的に走行課税を取り入れている国など無し。 

 

 

 ちなみに燃費25km/Lのハイブリッド車で年間1万km走った時に使うガソリンは400Lほど。400L分の暫定税率分は1万1千円である(25.1円/Lの暫定税率にも消費税が掛かるため27.6円/Lになります)。1万円の税金を取るために必要な経費っていくらかかるか。 

 

 小学生でも「ナニやろうとしてるの?」と思うだろう。年間走行距離の少ないクルマなど、収受するための経費の方が高くなることは間違いない。 

 

 もっと言えばガソリン諸税は一番確実な走行課税である。走るためにはガソリンが必要。走った分だけ払うという走行課税そのものだったりして。さらに燃費の悪いクルマ=二酸化他素を多く排出するクルマほど税金を払わなければならない。 

 

 二重の意味でも優れた走行課税だと思う。そいつを止め、複雑かつコストの掛かる走行課税を導入することのオタンコ度合いは誰にだって解ること。自民党、そろそろ金権政治から脱却すべきかと。 

 

 米の価格は利権まみれだったように、ガソリンの価格も利権が動いている。暫定税率廃止による税収不足は1兆5千億円規模だという。なのに2022年1月から始めたガソリン補助金は年間2兆円規模。それを3年半続けているのに財源の話は出てこなかった。 

 

 石油業界に払われる補助金は使途が明確でなくたって財源の話抜きで実現出来るが、暫定税率の廃止には財源が必要というのも妙な話だと思わないだろうか? 

 

 ここまで読んで「暫定税率廃止には恒久的な財源が必要」みたいな声も出るかもしれない。だったら暫定税率廃止で穴が空く分を3年くらい財源の問題無かった補助金だと思ったカバーし、その間にガソリン諸税を特定財源に戻した上、無計画に作りまくった日本の道路行政を抜本的に見直すなどして(ほとんどクルマが走っていない町道や村道、農道も増えた)、身の丈にあった使い方をすればいいと思う。 

 

 

 
 

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