( 320263 ) 2025/08/30 05:46:02 0 00 岸谷蘭丸(きしたに・らんまる) 実業家・インフルエンサー。2001年7月7日生まれ Photo by Shogo Murakami
インフルエンサーとしてさまざまなメディアで活躍する岸谷蘭丸さんは、イタリアの名門大学の現役生であり、高校から米国へ海外留学した経験も生かして、海外留学支援サービス「MMBH留学」を立ち上げた実業家でもある。そんな彼に、「学歴トップ層の医学部偏重」について聞いてみた。(教育エディター 江口祐子、ダイヤモンド・ライフ編集部)
● 東大理三レベルの超優秀な若者の選択肢とは
――日本の学歴で一般的な認識だと最上位に医学部があり、成績優秀な人はこぞって医学部を目指す傾向があると思います。これって偏っていますかね?
その現象に対しては正直、もったいないなと思います。東大理三レベルの超優秀な若者のうち、もし半分でもコンピュータサイエンスや先端工学に進んでいたら、日本から世界を変える起業家が出ていたかもしれない。そう考えると、マジもったいないと思うんです。
僕の周りにも「医者になりたいわけじゃないけれど医学部を目指す」って人、いました。とりあえず偏差値で一番上だからって。その考え方って健全じゃないですよね。そもそも日本には、東大理三レベルのコンピュータサイエンスの学部が存在しないことも問題だと思います。
アメリカだと、トップ層の多くがITやテック系に流れます。そこが今一番伸びている分野だし、イノベーションも報酬も集まっているから。
もちろん医学という学問も大切だけれど、今は社会の変化が激しくて、新しい分野での挑戦が求められている。優秀な人材が、自由に柔軟に、流動する仕組みが必要だと思うんです。
● 優秀な学生がコンサルに流れちゃう問題
もうひとつ日本の大きな問題は、研究職や博士課程へのインセンティブがほとんどないこと。だから、結果的に優秀な学生がみんなコンサルに流れちゃうんですよ。
別にコンサルが悪いとは言わないけど、「研究で未来を変える」「技術で社会を変える」「公共に貢献する」といった選択肢を十分可能にする報酬が用意されるべき。そのためには、博士課程への支援や研究職への投資を圧倒的に増やす必要がある。日本は博士課程への投資が先進国の中でもかなり低水準になっていて、それも技術やイノベーションが生まれにくい理由のひとつだと思います。
つい最近、博士課程の学生への生活費補助を「日本人に限定、留学生は除外する」という制度変更の方針が出て話題になっていましたけど、ベクトルが違うんじゃないかなって思いました。日本人の進学者が少ないから外国人が多くなってるだけで、優秀な人が来て研究してくれるなら、国籍なんてどうでもいい。むしろ歓迎すべきじゃないですか。
日本人の博士課程進学者が減っている見逃せない課題があるのに、「外国人に出し過ぎだ」にばかり注目するのは違うんじゃないかな。
● 日本人ファーストってなんだ?
「外国人が多いのは問題だ」みたいな空気で縛るのって、ただの「見せかけの日本人ファースト」でしかない。そういう視野の狭い議論をしているから、日本の技術力がどんどん埋もれていく。そんな状況で、誰がわざわざ博士課程に行くのかって話ですよ。
博士課程に関しては特に、国の技術力を担うような超頭のいい人たちがいるわけで、彼らに気持ちよく社会に貢献して貰えるような環境を作らないといけないと思います。
それは研究者に限らず、政治家や官僚にも言えると思う。「給料は少ないけれど使命感だけで頑張ります」なんて働き方、続くわけがない。このままじゃトップ層はどんどん海外に流出するだろうし、あるいは能力を発揮できないまま終わってしまう。日本の未来に対して、普通の労働者とも違い、少し声を上げにくいであろう彼らの働き方もしっかり考えていくべきじゃないかなと思います。
江口祐子/ダイヤモンド・ライフ編集部
|
![]() |