( 320526 ) 2025/08/31 05:50:37 1 00 共生バンクグループは、不動産投資商品「みんなで大家さん」で大規模な資金を集めたものの、近年支払いが滞り、運営に問題が生じている。 |
( 320528 ) 2025/08/31 05:50:37 0 00 共生バンクを巡るこれまでの経緯
他の投資商品を大きく上回る高配当を掲げて出資金を集めてきた不動産投資商品「みんなで大家さん」。CMでも大きく宣伝され、3万人超から2000億円を超える出資金を集めてきたが、支払いが滞り、運営会社の「共生バンクグループ」が釈明に追われる事態に発展した。配当ストップの裏側でいったい何が起きているのか。ノンフィクション作家の森功氏がレポートする。(文中敬称略)【前後編の後編】
そもそも共生バンクのピンチは今に始まったことではない。2000億円のグループ投資額のうち1500億円を占める「共生日本ゲートウェイ成田プロジェクト」(以下、「成田PJ」)は、2014年に会長の柳瀬健一(59)が思いついて立ち上げたというが、すでに11年が経過している。
事業計画を見ると、その杜撰さは一目瞭然だ。2019年10月には、成田市の開発許可を得ているが、当初の計画では三重県の「伊勢忍者キングダム」にある安土城を模したホテル建設のほか、600~1000室の最高級国際ホテルを2棟建てる計画だった。まるでラスベガス並みの高級ホテルだが、運営する事業者も決まっていない。それどころかこの地には下水道施設が備わってなく、その対応もできていない。
しぜん土地の造成工事の予定はどんどんずれ込んだ。当初の予定では、事業許可の2年後にあたる2021年3月末には造成を終える予定だったが、2022年10月から2023年10月へと延び、さらにこの4月には、2025年11月と延長されている。三度も完成予定を延ばし、成田市がそれを許してきたのである。
この間、業務停止の行政処分まで下ったのは前編にて前述した通りで、とうぜん投資家たちは「いつになったら完成するのか」と騒ぎ始めた。だが、例によって共生バンクの柳瀬は、取引先に苦しい言い訳を繰り返してきた。
「2020年に猛威を振るった新型コロナウイルスのせいで計画を延ばしました。そのあとはロシアのウクライナ侵攻があって……。おかげでむしろプロジェクトがブラッシュアップできた」
そんな共生バンクグループの命取りになりかねない内部資料が存在する。そのうちの1枚は〈共生バンクグループ メイン保有資産一覧(2023年3月末現在 取得済み記載)〉と題されている。日付は2023年5月のもので、名称どおり、グループの持つ資産がズラリと記された資料だ。誰が何のために作成したのだろうか。
「金融機関や国交省、東京都や大阪府に対する説明資料としてつくられたはずです。ちょうど彼らと揉めている最中でしたから、何らかの手を打たなければならない、と柳瀬さんが考えたのです」
資料を見た関係者がそう解説してくれた。事実、この頃、共生バンクは取引先の金融機関とトラブルになっていた。関係者が打ち明ける。
「そもそも成田プロジェクトには事業実態がないので、キャッシュフローが発生しえない。なのに、これまでシリーズ成田の分配ができているのはおかしいのではないか。金融機関からそんな根本的な疑問に始まり、収支計画について教えていただきたい、と突っ込んで質問されていました」
さすがに共生バンクの柳瀬は回答に困ったようだ。そこで頼った相手が、あの今井健仁だったという。先頃、広島5区の自民党支部長として、来る衆院選の出馬を狙ってきたあの弁護士である。小誌『週刊ポスト』2025年6月27日・7月4日号でその詳細【※】を報じたばかりだ(報道後に支部長を辞退)。
【※今年3月に衆院広島5区の自民党支部長に選出された今井健仁氏が、顧問弁護士兼取締役を務めていた不動産会社側から民事訴訟を起こされ、2022年と2024年に東京地裁から合計約8200万円の賠償命令を下されていたことを報じた。原告の不動産会社が買収を進めたエステ会社がその後に債務超過に陥り破産したが、民事訴訟では今井氏がその際に必要な調査を怠ったことなどの責任を問われた】
先の一覧表は、税理士資格を持つ今井が柳瀬から委託され、共生バンクの資産状況を調べてまとめたものとされ、今井の名前と捺印がある。
問題の資料の解説については次号に譲るが、そこには真っ先に〈成田PJ用地〉という項目が記されていた。土地の評価額は2500億円、2025年度には〈売却等〉と書かれている。今年2500億円で売る腹積もりだったのだろうか。
共生バンクは、まず投資家に対するこの先の配当原資について「グループで保有する合計600億円ほどの不動産の売却を進める」と言い、くだんの資料は「不動産特定共同事業の監督官庁向け説明の目的で作成され、提出された資料と思料されます」とその存在を半ば認めた上でこう答える。
「成田プロジェクトの土地の評価額は昨年の段階では5000億円で評価されております」
また資料の作成者と目される今井は、本原稿の締め切りの期日までに回答しなかった。くだんの資料が何を示し、どこに問題点があるのか。そして、共生バンクの事業のなかでどう利用されたのか。(以下次号)
* * * マネーポストWEBの関連記事『【追及スクープ】不動産投資「みんなで大家さん」配当ストップの裏で何が起きていたのか?杜撰な計画の裏側を暴く内部資料《3万人超から集めた2000億円はどこへ》』では、「みんなで大家さん」配当ストップの裏側を詳細にレポートしている。
【プロフィール】 森功(もり・いさお)/ノンフィクション作家。1961年福岡県生まれ。岡山大学文学部卒。新潮社勤務などを経て2003年よりフリーに。2018年、『悪だくみ ─「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』で大宅壮一ノンフィクション大賞受賞。『地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』、『菅義偉の正体』、『魔窟 知られざる「日大帝国」興亡の歴史』など著書多数。
※週刊ポスト2025年9月12日号
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