( 320543 ) 2025/08/31 06:10:03 0 00 コロナ禍以降、在留外国人人口は増え続けている
日本人人口が急減している一方で、国内の外国人人口は増え続けている。今はまだ総人口に占める割合は3%ほどだが、人口減少対策総合研究所の河合雅司理事長の試算によれば、今の「35万人増」ペースが続いたとすると、20年後には「10人1人は外国人」になるという。そのとき、日本の「国のカタチ」はどう変わるのか──。河合氏の独自レポートをお届けする。【前後編の前編】
* * * 先の参議院選挙において「日本人ファースト」を掲げた参政党が躍進するなど、外国人政策に対する国民の関心が高まりをみせている。
政府は「移民政策はとらない」としながら、なし崩しに受け入れの拡大を続けてきた。参院選で外国人問題が争点となったことをきっかけとして、多くの人々が政府の姿勢への不満を露わにし始めた印象である。
外国人政策を巡る世論は、かねてより二分している。推進派、慎重派とも主張が収斂しているわけではないが、推進派で多く聞かれるのは、人手不足対策としての受け入れ拡大だ。経済団体や企業経営者などを中心に「外国人労働者に頼らなければ日本社会は回らない」といった声が強まっている。
これに対し、慎重派には日本ならではの風情や文化が損なわれることへの懸念や治安悪化、生活秩序の崩壊への不安を口にする人が多い。
だが、日本が外国人政策を考える上で最も肝心な視点は、日本人人口が激減していくという冷徹な現実である。母国の人口がハイペースで減るわけではない諸外国とは、ここが根本的に異なる。人口激減国が大規模に外国人を受け入れることで何が起きるのか、正しく理解する必要がある。
当然ながら、人口激減国が外国人を大規模に受け入れれば、総人口に占める外国人の割合は急上昇する。外国人人口は来日者だけで増えるわけではないことも知る必要がある。永住者や長期滞在者が多くなれば、日本で生まれる二世や三世も増える。
一方、日本人人口は出産年齢の女性が激減していくため、減少に歯止めがかからない。それは、100年もしないうちに外国人のほうが多数派になるということだ。外国人について、人口が減りゆく日本の“助っ人”ぐらいに捉えているならば、認識を改めたほうがよい。
外国人人口の増加は、急速にさまざまなところへの影響を及ぼす。総人口に占める割合が大きくなれば、国政への参政権を求める声は強まろう。言語も多様化し、日本語以外の言葉が母国語に加わる日が来るかもしれない。象徴天皇制だって、日本人が少数派となることを想定していない。
外国人を大規模に受け入れるとは、「国のカタチ」を大きく変質させることを容認するということに他ならない。日本人にそこまでの覚悟はあるのかが問われている。
では、外国人が総人口に占める割合は、今後どのようなペースで増えていくのだろうか。
国立社会保障・人口問題研究所(社人研)は「出生中位・死亡中位推計」において総人口に占める外国人人口の割合が1割になる時期を2070年と説明してきたが、もはやこの予測は現実的ではなくなった。足元の日本人の減り方が大きくなっているためだ。
厚労省の「人口動態統計月報年計(概数)」によれば、2024年の日本人の出生数は68万6061人、死亡数は160万5298人だ。これは社人研の「出生低位・死亡高位推計」に近い。日本人人口の減少数も、2024年は91万9237人と過去最多を記録した。
このままならば日本人の減少幅はさらに拡大し、毎年100万人を超すペースで減り続ける。今後の動向は実態値をベースに計算し直す必要があろう。
出入国在留管理庁によれば、2024年末現在の在留外国人数は376万8977人で過去最多だった。厚生労働省のまとめでは、このうち労働者数(同年10月末現在)は230万2587人(前年比12.4%増)である。最近は、観光客の増加で外国人を見かける機会は増えているが、外国人人口が日本の総人口に占める割合は3.04%に過ぎない。実は現時点の日本は“ほとんど外国人のいない国”なのだ。
だが、近年の外国人の増え方は著しく、今後は様子が大きく変わる。
在留外国人数の推移を振り返ると、新型コロナウイルス感染症の影響が大きかった2020年、2021年こそ減ったものの、2022年は前年比31万4578人増、2023年は33万5779人増、2024年は35万7985人増と3年連続で増加数が30万人を超えている。率に換算すれば、前年比10%超の大幅な伸びが続いている。
仮に2024年と同じ「35万人増」のペースで増え続けたとして機械的に計算すると、在留外国人数は2040年に約937万人、2042年に1000万人を突破する。2050年は約1287万人、2060年に約1637万人 2070年には約1987万人と2000万人近くに達する。「35万人」を上回るペースで増え続けるならば、予想人数はもっと大きな数字となる。
これらの外国人人口の予測値を基に、日本人人口については実績値に最も近い社人研の「出生低位・死亡高位推計」を用いて総人口に占める外国人人口の割合を計算してみると、2040年に8.3%となり、2045年には10.2%と1割を突破する。わずか20年後に「10人に1人が外国人」という社会が到来するということだ。
その後も外国人人口の割合は上昇を続け、2060年に16.7%、2070年には22.2%となる。2060年代半ばには「5人に1人が外国人」という社会に達する。
このまま「35万人増」ペースで機械的に計算して行くと、2110年に日本人人口と外国人人口がほぼ同数となり、翌2111年には逆転する見通しなのだが、実際に逆転するタイミングはもっと早い段階でやってくる。なぜなら、年を追うほど二世や三世の数も増えるからだ。さらに、日本人の減少スピードが想定より速まる可能性も小さくない。
諸外国では外国人の割合が大きくなるにつれ排外主義が台頭しており、日本だけが例外となることは考えにくい。外国人をあまり受け入れてこなかった日本の“ 耐性”は強いとは思えず、結構早い段階で社会に大きなストレスがかかる可能性がある。外国人との共生や人権保護の重要性を理解していても、変化のスピードが速すぎると、感情や意識がなかなか追い付かないのが現実だろう。
外国人政策は「人数が増えすぎたから」といって簡単に軌道修正はできない。人口激減社会が外国人を大規模に受け入れることの意味や影響を十分に理解せず、目先の課題の解決だけを考えて進めてしまうことは極めて危うい。
“きれいごと”では済まない問題なのである。
■後編記事につづく:「外国人労働者に頼らなければ日本社会は回らない」は本当か? 生成AIの進化と普及でホワイトカラーの仕事は縮小、政府も着目する雇用シフトの行方
【プロフィール】 河合雅司(かわい・まさし)/1963年、名古屋市生まれの作家・ジャーナリスト。人口減少対策総合研究所理事長、高知大学客員教授、大正大学客員教授、産経新聞社客員論説委員のほか、厚生労働省や人事院など政府の有識者会議委員も務める。中央大学卒業。ベストセラー『未来の年表』シリーズ(講談社現代新書)など著書多数。小学館新書『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』が話題。
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