( 320556 ) 2025/08/31 06:29:23 1 00 日本マクドナルドは、転売問題を受けて2025年8月に予定されていた「ハッピーセット」のキャンペーンを延期すると発表しました。 |
( 320558 ) 2025/08/31 06:29:23 0 00 マクドナルドは2025年8月26日、29日から開始予定だった「ハッピーセット」のキャンペーン実施を見送ると発表した(写真:VietImages/PIXTA)
日本マクドナルドが展開する、おもちゃ付きメニュー「ハッピーセット」が転売問題で揺れている。先日行われた「ポケモンカード」とのコラボレーションでは、店に購入希望者が押し寄せたほか、食品ロスの観点からも問題視された。
こうした事態に、マクドナルドは再発防止策を発表。予定していたキャンペーン展開を延期して、体制構築に取り組んでいる。しかしながら、これは小手先の対応にすぎず、本質的な問題は解決しないように感じてしまう。
■SNS上では商品そのものの存在意義を問う声も
マクドナルドは2025年8月26日、29日から開始予定だったキャンペーンの実施を見送ると発表した。予定されていたのは「ハッピーセット『ワンピースカード』」と、絵本の「ほんのハッピーセット『シナモロールとあそぼう!』」で、後者については9月12日に延期するという。
期間中にハッピーセットを購入した客には、過去のキャンペーンで提供したおもちゃを付けるという。なお、もう一方のワンピースカードについては、8月20日時点で「実施見送り」が伝えられていたが、現時点でそれ以上の情報がなく、延期による実施を含めて、対応が明らかにされていない。
SNS上では、延期について「仕方ない」「そこまでする必要があるのか」といった反応に加え、「延期しても変わらない」「もうコラボはやらないほうがいい」など、商品そのものの存在意義を問う声も少なくない。
■転売対策せず、商品そのものに疑問の声も…
このところハッピーセットは、ネットオークションやフリマアプリを中心とした転売が問題視されていた。5月には、人気キャラクター「ちいかわ」とのコラボ商品を展開した。
しかし購入希望者が殺到し、たった3日間で販売終了に。同時展開された「マインクラフト」コラボとともに、1人あたり4セットの購入に制限したが、店舗の混乱を招いた。
そして8月9日から、「ポケモンカード」の限定配布が行われると、さらなる混乱が起きる。SNS上には、モバイルオーダーで注文された商品が、大量に受け取り待ちとなっている店内写真などが投稿された。また、真偽は不明ながら、大量の食品が廃棄されていたとする様子も拡散して、大きな注目を集めた。
こうした事態を受けて、マクドナルドは8月11日、ハッピーセットについての声明を発表した。そこでは混乱を謝罪したうえで、「ハッピーセットの転売目的での購入や、食品の放置・廃棄を容認しません」と明言。再発防止策として、特定期間における「より厳格な販売個数制限」や、その間のモバイルオーダーやデリバリーを制限する可能性について触れた。
また、ルールやマナーを守らない客の購入を断るとともに、ポケモンカードのコラボ時にさかのぼり、「明らかに当サービスの運営を妨げる行為をされたお客様、またはそのような購入履歴のあるお客様」に対しては、公式アプリの退会処理をするとした。加えて、フリマアプリの運営会社には「より実効性のある対策を要請」するとも伝えている。
■消費者庁も動き出す事態に
一連の問題には、国も動き出している。
消費者庁の堀井奈津子長官は8月21日、前日付で「食品ロスにつながらないように販売方法の改善や再発防止策を講じていただくようにお願いをした」と発言。
「結果として食品ロスという状況が発生したということ、こういったことについて極めて遺憾である」との認識を示した。
そして今回、策を講じるために、予定していたキャンペーンを2週間延期すると発表した。これは逆に言うと、シナモロールコラボの延期期日である9月12日に、自ら対応完了のゴールを設定したことになる。
つまり、残りわずか2週間だ。再発防止策の発表からは1カ月。“短期決戦”の結果、きちんと機能しなければ、「再開は時期尚早だったのでは」などと批判が起こるのは間違いない。そうならないためには、今後ふたたび騒動とならないように、コントロールできている必要がある。
そもそも、ちいかわコラボの際に、転売問題は議論されていた。それ以上に知名度が高いポケモンとのコラボとなれば、より大きな影響が出ると予想できなかったのだろうか。両コラボの間には、3カ月の猶予があった。その間になんとかならなかったのかと感じてしまう。
■“転売される未来”に「コラボ相手」はためらうはず
再発防止策をとるにあたり、マクドナルドが誠意を見せ、納得してもらう相手は、消費者や行政だけではない。それは「コラボ相手」だ。大手IP(知的財産)とのコラボが実現してこそ、ハッピーセットが売れる。そう考えると、むしろ一番重要な存在と言えるだろう。
もしかすると、自社の大切なIPが、社会問題を引き起こす要因になるかもしれないとなれば、これまで通りに貸し出そうと思えるか。「金になればそれでイイ」と割り切る会社なら別だが、キャラクターへの愛があれば、“転売される未来”がほぼ確実な企画に乗るのは、ためらうはずだ。
すでに走り出している企画であれば、コスト面も考慮すると、延期はまだしも中止の判断は行いにくい。ただ、今後のオファーは、再発防止策が行き届くかどうかによって、難しくなってくるだろう。大型IPの「ハッピーセット離れ」を、いかに逃れられるかが、今後のカギを握りそうだ。
ハッピーセットの今後を考えるうえでは、そもそも「食玩」的な売り方に限界が来ているのではないか、という論点も避けられない。まさに消費者庁が触れたフードロスの観点から、「食品とおもちゃのセット売り」には、あまり良い印象を持たない消費者もいる。
ポケモンコラボをめぐっては、SNS上でロッテの「ビックリマンチョコ」を思い出す声も多々見られた。シールを集めたいがために、チョコウエハースを捨てた過去の事例に重ね、商品とオマケが主従逆転する違和感を示す投稿も少なくない。
もしも、この売り方に問題の本質があるならば、個数制限を行ったり、マナー違反の客を追い出したりするのは、あくまで小手先の対応にすぎない。いずれにせよ、再開後のハッピーセットがイバラ道であるのは間違いないのだ。
■同業他社で成功している有名IPとの商品開発
では、今後のハッピーセットは、どのような方向性を選べばいいのか。ひとつ考えられるのは、コラボで「おまけ」を得るのではなく、ともに商品開発をして相乗効果を高める路線だ。もちろん有名IPが離れないことが前提だが、ここに活路を見いだすのはアリだろう。
同業他社に目を向けると、「モスバーガー×ミスタードーナツ」「ファーストキッチン×ウェンディーズ」といった具合に、フードメニューそのものでのコラボが進みつつある。ロッテリアがゼンショー傘下になって始めた「ゼッテリア」も、ゼンショーのフェアトレードコーヒーを柱に位置づけている。同じグループ内ではあるが、これも広義のコラボと言える。
また、ミスタードーナツでは、ドーナツそのものをキャラクター柄にする企画を行っている。2025年で8年目となるポケモンとのコラボでも、定番の「ピカチュウ ドーナツ」などが登場する予定だ。
ハンバーガーだと、ドーナツのようにデコレーションはしにくいが、コンセプトを合わせることは難しくない。例えば、マクドナルド×ちいかわの商品開発コラボとして、「『郎』ニンニクマシマシバーガー」を打ち出せば、世界観に浸れると話題を呼ぶだろう。ポケモンコラボであれば、「ピカチュウの『10まんボルト』ピリ辛バーガー」なんて打ち出し方もできる。
つまり、コレクターズアイテムを提供することから、“コト消費”的なアプローチに切り替えて、食品そのものの価値で勝負するのだ。
マクドナルド公式サイトによれば、ハッピーセットは「『ほん』や『おもちゃ』で、子供たちが夢中になって遊びながら、いきいきと自分らしさを発揮し、発達することをサポート」する存在だという。
もし今アドバイスしたような方向性にすれば、そもそもの位置づけを変えなくてはならなくなる。しかし、店頭の混乱や大量転売などの行為によって、中心は「子供たち」から「大人たち」になってしまった。すでに現状と理念がかけ離れている以上、根本から見直す必要があるように思えるのだ。
城戸 譲 :ネットメディア研究家・コラムニスト・炎上ウォッチャー
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