( 321281 )  2025/09/03 03:50:30  
00

高速バスでの「相席ブロック」と呼ばれる行為が問題視されており、1人で乗車する際に2席分を並びで予約し、直前に1席をキャンセルすることで隣席を空ける行為が行われている。

このため、実際には空席があるにもかかわらず、他の利用者が予約できない状況が生まれている。

バス会社は相席ブロックを防ぐために払い戻し手数料の見直しや予約制限を行うが、完全な対策は難しい。

 

 

また、弁護士は相席ブロックが不法行為や偽計業務妨害罪に該当する可能性があると指摘しており、法的責任が発生する可能性もある。

ただし、高速バスの需要は回復しつつあるが、供給が追いつかず、相席ブロックによる不利益は大きい。

バスの運行健全化のための解決策が求められている。

(要約)

( 321283 )  2025/09/03 03:50:30  
00

「相席ブロック」によって、他の利用者が予約できないケースも… 

 

高速バスで「相席ブロック」と呼ばれる行為が問題視されている。 

 

1人で乗車する際、2席分を並びで予約しておき、乗車時間直前に1席分をキャンセル(払い戻し)することで、隣席を空ける――。 

 

これにより、実際は席が空いているのに、他の利用者が予約できないという事態が発生しているという。 

 

高速バスは乗車直前のキャンセルでも払い戻し手数料が数百円程度の場合もあり、実質的に“安価で広い席を確保する裏技”のように悪用する人がいるとみられる。 

 

今年のゴールデンウィーク前には、高速バスを運行する「JRバス関東」が、公式X上で〈意図的に相席をブロックするご予約などは、他のお客さまのご迷惑となりますので、絶対におやめください〉と呼びかけ、話題になった。 

 

弁護士JPニュース編集部では、9月より運賃改定に合わせ一部高速バスにおいて払い戻し手数料の見直しを行った「JRバス中国」に、相席ブロックの実態と防止に向けた取り組みなどを取材。また、そもそも「相席ブロック」行為に違法性はないのか、弁護士に聞いた。 

 

JRバス中国の担当者は、「相席ブロック(空予約)」について「詳細までは把握できていないが、被害があるのは事実」と話す。 

 

「お客さまが実際に乗車された前後の席もまとめて予約し、乗車日直前でキャンセルされる事例など、乗務員からも報告を受けています」(担当者) 

 

同社は、今年9月1日に行った一部の高速バスの運賃改定に伴い、払い戻し手数料も改定すると発表。 

 

一部の便ではこれまで、乗車時刻まで片道100円の手数料のみで払い戻しが可能だった。しかし今後は、改定した一部の便で、出発時刻の2時間前までのキャンセルできっぷ券面記載額(運賃等)の50%、2時間前以降は100%を手数料として徴収する。 

 

担当者は、この改定の背景に「相席ブロック防止」の狙いもあるというが、対策は容易ではないと述べる。 

 

「他社でも同様の事例が散見されたことから、払い戻し手数料の改定のみでなく、予約から購入までの期間を短く設定することや、一度の予約可能数を少なくするなど、各社と知恵を絞りながら相席ブロック(空予約)対策を行っている状況です。 

 

ただ、キャンセル料を払ってでも相席を拒む方もいらっしゃり、対策を講じてもいたちごっこで有効な手だてがないのが現状です」(担当者) 

 

 

バス会社が対策に苦慮する一方で、利用者も乗りたい便に乗れないなど不利益を被っている。相席ブロックがモラルに欠ける行為であることは論をまたないが、法律的な問題はないのか。 

 

旅行が趣味という海嶋文章弁護士は、「相席ブロックは不法行為(民法709条)に当たる可能性がある」と指摘する。 

 

「相席ブロックにより直前にキャンセルが発生した場合、バスには1席分の空席が生じます。出発までに別の予約で埋まればいいのですが、あまりに直前にキャンセルされると、別の予約が入らず、結果的にバス会社にキャンセル料を上回る損害が発生することもあります。 

 

民事の観点からみると、そもそも2席利用するつもりはなく、直前にキャンセルする意思であるにもかかわらず2席分を予約することは、積極的にバス会社を欺く行為といえます。 

 

そのため、バス会社にキャンセル料を上回る損害を与えた場合には、不法行為責任が発生する可能性があるでしょう。 

 

また、刑事の観点からみると、利用する意思がないのにあると偽って予約をした上で、直前にキャンセルして、他の顧客に席を販売するバス会社の業務を妨害しているといえ、偽計業務妨害罪(刑法233条)にあたる可能性があります。 

 

モラルの問題にとどまらず、法的責任が発生する可能性があるため、相席ブロックをしている人は、やめるべきでしょう」(海嶋弁護士) 

 

コロナ禍で利用者が大きく減った高速バスだが、需要は回復傾向にある。 

 

国土交通省が公表している「バスタ新宿 利用状況(週平均)」によれば、昨年10月(第3週)には利用者数がコロナ禍前の102%となった。一方、同週のバス発着便数はコロナ禍前の91%にとどまり、需要をカバーしきれていない実態が浮かび上がる。 

 

運転手の労働時間規制強化の影響など、要因はさまざまに考えられるが、供給よりも需要が増大している中にあって、バス会社にも利用者にも不利益をもたらす「相席ブロック」の“罪”は重いと言えるだろう。 

 

高速バスの健全な運行のためにも、一刻も早い解決策が求められている。 

 

弁護士JPニュース編集部 

 

 

 
 

IMAGE