( 321943 ) 2025/09/05 06:01:12 0 00 A薬局が薬を“予約”した顧客に来店を呼びかけているメッセージ(ウィーチャットより)
日本の薬局やドラッグストアが中国人に買収される事例が増えている。それに伴って日本の医薬品が不正に中国などに流出している疑惑が取り沙汰されているという。その現状をライターの廣瀬大介氏がレポートする。【全3回の第2回】
一部には、日本のルールに違反する中国系薬局もある。
「大阪の中国系薬局には、中国人観光客向けに糖尿病薬や向精神薬、血圧・高脂血症などの処方薬を処方箋なしでじゃんじゃん違法販売していたところもあるという話を聞いています。道頓堀のほうでは“処方箋なしで販売”と中国語で堂々と掲げている薬局もあった。今年7月には、大阪市が中国系薬局に行政処分をしています」(前出の薬剤師)
大阪市健康局が7月に公表した資料によると、処分を受けたA薬局は「処方箋の交付を受けた者以外の者に、正当な理由なく、処方箋医薬品を販売した」とあり、この他にも5件の違反行為が確認されている。
市は45日間の業務停止を命じていたが、実はA薬局はこの期間中も医薬品の販売を続けていたのだ。
A薬局には小紅書(中国版インスタグラム)アカウントがあったので、処方薬の購入が可能かメッセージを送ったところ、ウィーチャットに誘導された。糖尿病治療薬で最近はダイエット治療薬として女性に人気がある「マンジャロ」や副作用が強い鎮痛薬などいずれも処方箋が必要な医薬品を購入したい旨を伝えると、こう返信があった。
「それぞれ一箱で550元(約1万円)、750元(約1万5000円)です。支払いはウィーチャットペイになります」
続けて、受け取り方法について尋ねると、「最近は店舗を営業していないので郵送します」と告げられた。
A薬局のウィーチャットのタイムラインには、これまでに販売してきたと思われる数々の処方薬の写真が投稿されており、「予約した人、取りに来てください!」など、購入者へ向けたと思われるメッセージも確認できている。
A薬局に取材であることを伝えたうえで、行政処分中のこうした行為について、違法性の認識をメッセージで尋ねたところ、返信は途絶え連絡が取れなくなった。
後日、管轄である大阪市健康局に問い合わせたところ、「処分期間中に医薬品の販売をしていたことは知らなかった。(対応が)不十分なら業務停止のほか、許可の取り消しの権限もある」と回答した。加えて「改善命令を出している期間中になるので、本当だとするとこちらは把握せねばなりません。どういうSNSで、どこで売っているのかなどご教示ください」と協力まで要望された。
* * * 関連記事【《大阪の薬局譲ります》“神薬”目当てで中国人が日本の薬局を続々買収 「不正輸出」「行政処分中に処方薬販売」「偽造許可証で販売する転売業者」…横行する違法行為の実態】では中国人による日本の薬局買収の方法、一部で広まる違法販売や不正転売の実態などを詳しくレポートしている。
【プロフィール】 廣瀬大介(ひろせ・だいすけ)/1986年生まれ、東京都出身。フリーライター。明治大学を卒業後、中国の重慶大学に留学。メディア論を学び2012年に帰国。フリーランスとして週刊誌やウェブメディアで中国の社会問題や在日中国人の実態などについて情報を発信している。
※週刊ポスト2025年9月12日号
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