( 322118 ) 2025/09/06 05:11:16 0 00 記者団の取材に応じる石破茂首相=5日午前、首相官邸(春名中撮影)
石破茂首相(自民党総裁)が、自民内で加速する総裁選前倒しに向けた動きを封じるため、衆院の「解散カード」をちらつかせている。首相退陣を求める勢力はかえって反発を強め、「石破降ろし」の沈静化には逆効果となっている。現状での衆院解散・総選挙の実行は極めてハードルが高く、焦燥感にかられた首相による「単なる脅しだ」との受け止めが大勢だ。
■国政選挙連敗で警戒感強く
小泉進次郎農林水産相は5日の記者会見で「党の一致結束が一番重要だ。解散は首相の専権事項だが、それ以上言わなくても分かっていただけるのではないか」と述べ、解散論に否定的な見方を示した。
総裁選前倒しを巡る意見交換のために集まった衆院当選2回の若手議員約10人による会合でも、首相自らが吹かせる「解散風」に反発の声が上がったという。
「総裁選の前倒しが決まれば首相が衆院を解散する」。自民が総裁選前倒しの是非を判断する意思確認の手続きを始めた2日以降、こうした観測が広まった。事実、首相は今週に入り、自ら一部議員に解散の可能性を伝えた。
森山裕幹事長ら党幹部が相次いで辞意を表明し、窮地に追い込まれる首相に残された数少ない打開策の一つが衆院解散・総選挙だ。
党内の批判とは反対に各種世論調査で内閣支持率が上昇傾向にあることも首相にとってはプラスの判断材料になっているとみられる。首相の続投を支持する議員からも「総選挙で国民に信を問うべきだ」(鈴木宗男参院議員)との声が上がる。
当選回数が少なく、選挙基盤が弱い議員ほど国政選挙で連敗している現状での解散には警戒感が強い。閣僚経験者は「若手議員への脅しだ」と批判する。
■閉会中の解散「前例なし」
もっとも首相が実際に解散に踏み切るにはハードルがある。国会閉会中の解散は可能ではあるものの、前例はない。解散は全閣僚が署名して閣議決定する必要があり、署名を拒む閣僚は罷免しなければならない。平成17年の郵政解散で当時の小泉純一郎首相が農水相1人を罷免した例があるが、今回は複数の閣僚が反対する可能性があり、閣議決定は容易ではない。
首相は先月24日、小泉元首相らと東京都内で会食し、郵政解散が話題に上ったという。17年の衆院選は、小泉元首相が郵政民営化に反対する議員に刺客を立て、自民が大勝した。首相が総裁選前倒しを要求した議員を公認せず、対立候補を立てようにも、短期間で多数の刺客を擁立することは不可能に近い。
衆院ベテランは「今解散すれば自民は確実に下野する」と危惧する。そもそも首相自らの政権延命を目的とした解散に大義はない。別の衆院ベテランは「党内のごたごたを清算するための解散なんて前代未聞で、世論の支持が得られるわけがない」と強調する。(小沢慶太、竹之内秀介)
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