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石破茂首相が自民党の両院議員総会に出席する中、彼の政権は昨年の衆院選と今年の参院選で過半数を割り、党内からの支持を失いつつある。

特に、森山裕幹事長を含む党の主要なメンバーが辞意を表明し、総裁選の前倒しが検討されている。

石破氏は選挙結果について自らの責任を認めつつも、具体的な行動は示していない。

支持を集めるため、解散や総選挙も考慮されているが、自民党内では意見が分かれている。

そして、世論の動向が彼の判断に影響を与える可能性もある。

総裁選の前倒しに関する書面は8日に提出され、その結果が注目されている。

(要約)

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8月8日の自民党両院議員総会に出席する石破茂首相(写真映像部・上田泰世撮影) 

 

 昨年の衆院選に続いて、今年7月の参院選でも与党で過半数を割った石破政権は、自民党内からの石破おろしの前に防戦一方だ。首相であり、総裁でもある石破茂氏は就任1年を目前にした今、何を思うのか――。今月2日には石破氏を支えてきた森山裕幹事長ら党四役が相次いで辞意を表明。そして総裁選前倒しか否かの結論が出る8日は、迫っている。 

 

*  *  * 

 

■総裁選前倒しの書面提出日は8日 

 

「選挙は最終的に、当然のことでありますが総裁たる私の責任であります。そのことから逃れることは決してできません」 

 

 2日に行われた自民党両院議員総会の冒頭、石破氏は昨年の衆院選や今年の参院選で大敗が続いたことへの自身の責任に言及し、陳謝した。だが、具体的な責任の取り方については、「しかるべき時にきちんとした決断をする」と述べるにとどめた。 

 

 一方、参院選の総括が総会で正式にまとまったことで、総裁選前倒し(臨時総裁選)の是非を問う手続きが動き出した。総裁選前倒しには、自民党議員295人と都道府県連の代表者47人の総数の過半数から賛成を得る必要がある。実施を求める議員の書面提出日は8日の午前10時から午後3時となっており、当日中に都道府県連をふくめた結果が公表される見込みだ。 

 

 総裁選前倒しは、事実上の「総裁リコール」だ。今年結党70年を迎える自民党にとっても、実施されれば初となる。当然ながら、意見は総会に参加した議員の間でも割れていた。 

 

■「『前倒し』の方が勢いがある」 

 

 棚橋泰文・元国家公安委員長は、総裁選前倒しには否定的だ。 

「表紙を替えて何とかするような姑息な真似はするべきではない。むしろ国民が望むインフレ対策と、ずっと非主流派だった石破さんだからこそできる自民党の古い体質の改革をスピーディーにやるべき。総理は、すべての有権者が参加できる解散総選挙をなさるべきです」 

 

 一方、石破氏が自身の責任の取り方を明言しなかったことに疑義を呈したのは、小林鷹之・元経済安全保障相だ。 

「石破総裁ご自身の過去のご発言、(当時の菅直人首相に投げかけた)『選挙結果をなめてはいけない』というご発言との整合性をどう取ればいいのか、自分の中で咀嚼(そしゃく)できておりません。総理総裁の責任の取り方について、(総裁選前倒しを求める)書面提出の時期までに何ら変更がない場合には、署名をさせていただきます」。昨年10月の総裁選に出馬した小林氏は、総裁選が実施される場合の自身の対応を報道陣から問われると、「そもそも総裁選になるかどうかも決まっていないので」と言葉を濁し、足早に立ち去った。 

 

 同じく昨年の総裁選に出馬した高市早苗・前経済安全保障担当相は、石破氏の責任について「ご自身が考えること」と突き放した。多くの世論調査で、次期首相候補として名前が挙がる高市氏。記者が「初の女性首相を期待する声をどう受け止めますか?」と尋ねると、「今は何も申し上げることはございません。とにかく自民党、気合入れなきゃ」と表情をこわばらせた。 

 

 総裁選前倒しとなるのか――。これまでも裏金問題の震源地の旧安倍派を中心に前倒しを求める声は上がっていた。それに加えて今月3日には、麻生太郎最高顧問が党内唯一の派閥である麻生派の研修会で、「私自身は、前倒しを要求する書面に署名、提出すると決めている」などと発言。4日には昨年の総裁選で石破氏を支援した遠藤利明元総務会長も、前倒しへの賛成を表明するなど、動きは広がりをみせている。 

 

 時事通信社解説委員の山田惠資氏は状況をこうみている。 

「当初は5分5分の状況だったが、『前倒し』の方が勢いがあります」 

 ただ、山田氏は元首相の麻生氏が前倒し賛成を明言する一方、岸田文雄前首相は現時点で、どちらにも傾いていないという情報を得ている。態度を保留していた参院側は前倒しに寄っているという。 

 

 

■ 石破氏の頼みの綱は世論だが… 

 

 元自民党事務局長で選挙・政治アドバイザーの久米晃氏は「前倒し要求のほうが熱量が高い」と言う。その要因には総裁選前倒しの要求書が記名式になったこともあると話す。記名式については当初、「前倒し賛成のハードルが上がる」「踏み絵だ」などと反発する声が党内から上っていたが……。 

「逆効果になっています。現在、議員らは旧派閥や当選同期などで大小の会合を頻繁に開き、集まっている。今回は前倒しに賛成の場合のみ、記名して要求書を出す。会合に誘う議員は『署名して出そう』とみんなを誘うわけです。『出さないでおこう』と誘って会合を開いたりはなかなかしない。必然的に『出そう』という声が大きくなり、それに乗っかろうとなりがちです」 

 しかも、今回は賛成した議員の名前も公表される。会合などで前倒しに賛意を示しながら、要求書を出さなければ「造反」が明らかになってしまう。「もはや、名前の公表が脅しになるどころか、かえって前倒しの要求書を出す側の結束を固めることに作用してしまっています」 

 

 石破氏サイドは衆院の解散をちらつかせ、前倒しの動きを牽制しているが、これも逆に作用していると久米氏は指摘する。 

「自民党の総裁を決めるのに『なぜ、国民の信を問う必要があるのか?』と反発を招いている。今の執行部がやっていることは裏目、裏目に出ていると思います」 

 

 流れが総裁選前倒しに傾く中、石破氏に切れるカードはあるのか。前出の山田氏によると石破氏周辺では、3つの可能性がささやかれている。それは、辞任、総裁選への出馬、解散・総選挙だという。 

 

 仮に解散するとすればいつなのだろうか。 

「ずばり前倒しか否かの結論が出る8日から即、解散の可能性が出てくる。8日に前倒しとなると、翌日には総裁選をフルスペックでやるか議員だけでやるかが、決まっていく。日程が決まった後に解散では、あまりにも強引すぎる印象を与える。するとしたら、告示日や投開票日が決まるまでのわずかな間しかない」(山田氏) 

  

 石破氏にとっての頼みの綱は世論だ。各種報道機関の世論調査では、内閣支持率が急上昇している。山田氏は言う。 

「解散総選挙をしたら、今(196議席)より増えるかもしれない。衆議院で与党の過半数に近い230議席まで取り戻せば、長期政権につなげる足掛かりがギリギリできる」 

 

 ある閣僚経験者も解散を推す。 

「解散すればいいんですよ。裏金やなんやかやで、自民党の議員がだらしないからこんなことになっている。前倒しして総裁選をしても、次にやる人が……。有力という高市さんっだって、新進党にいたことがあるし、小泉進次郎さんは、考えが浅い」 

 

 別の閣僚関係者は党内の状況を嘆いている。 

「総裁選を前倒しして、新しい総裁になれば、自民党がよくなるのか。党内の対立がさらに深刻になり、ガタガタになる可能性もある。そんな危険を冒す必要があるのでしょうか」 

 

(AERA編集部上田耕司、大谷百合絵) 

 

上田耕司,大谷百合絵 

 

 

 
 

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