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新浪剛史氏、サントリー元会長がいわゆる違法サプリ購入疑惑について経済同友会での説明を行ったが、以前と異なり不明瞭な表現が目立つ印象を与えた。

会見を受けて市民の反応は厳しく、彼に対する評価は極めて悪い。

多くの人々が過去の発言や行動を理由に彼に対して不満を抱き、不買運動などが広がっている。

また、彼が提唱した「45歳定年制」といった発言が雇用問題を引き起こし、福祉政策に対する反発もあった。

さらに、LGBTQ+に対する支持や中国との関係における発言が賛否を呼んでいる。

今回の騒動は、サントリーにも影響を及ぼしていると指摘されているが、彼自身は違法性を否定しており、辞任を通じた責任を取る姿勢を見せている。

はたしてこれらの問題が彼自身とサントリーにどのような影響を及ぼすのか、引き続き注視される必要がある。

(要約)

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新浪剛史サントリー元会長(時事通信フォト) 

 

 9月3日に行われた経済同友会定例会見で代表幹事の新浪剛史氏が行った、自らの違法サプリ購入疑惑についての説明は、潔白を主張していることは伝わるものの、「聞いている」「おそらく」という言葉が印象に残る、これまでの歯切れがよい発信とは異なるものだった。情報番組で生中継されるほど国民の関心を集めた企業トップの辞任は、市井の人々にどのように受け取られたのか。人々の生活と社会の変化を記録する作家の日野百草氏がレポートする。 

 

 * * * 

「新浪さんね、私はいまも許してませんよ。45歳定年制とか、労働者を苦しめる発言ばかりしていた印象しかない」 

 

 大手商社傘下の物流企業に勤める40代の男性会社員は「許してません」と話す。新浪さんとはサントリーホールディングス(以下、サントリー)代表取締役元会長の新浪剛史氏(1959年生まれ、66歳)のことだ。 

 

 別の情報通信企業の代理店に契約社員として勤める40代女性も「印象はよくない」としてこう話す。 

 

「所得制限の撤廃に猛反対していた人ですよね、給付を増やすことすら反対していた。印象? 最悪です」 

 

 私の元教え子の20代男性、大学院生の意見はこうだ。 

 

「健康保険証の廃止を必ずやるべきとか、マイナンバーを『日本の文化』とかわけわかんないこと言ってた人ですよね、サントリーの人なのに生活のあらゆるとこにでしゃばりまくっていたイメージです。不買運動とかネットでやってましたけど、当然だと思います」 

 

 印刷会社に勤める30代女性はさらに辛辣だった。「ニイナミ」という名前が出た途端に顔をしかめる。 

 

「(旧ジャニーズ問題のときに)ジャニーズのタレントを使うことは子どもの虐待に加担するから使うなとか、何もしていない(旧ジャニーズの)タレントまで使うなと言った人ですよね。10代20代のメンバーに何の罪があるというのですか、印象? 悪いとかでなく大嫌いです。(いまとなっては)自分はどうなんだ、ですよ」 

 

 

 元々は「今回の騒動についてどう思うか」について聞いたはずがもう、この4人だけでなく十数人から口を揃えて出てきたのが新浪氏に対する容赦のない「印象の悪さ」だった。知名度はすごい、いろんな意味で多くが「ニイナミ」を知っている。 

 

 とくにその中でもここに書かなかった人も含めれば30代から50代の現役世代は容赦ない、ぶっちゃけ書けない内容ばかり。現にSNSなどは新浪氏への罵詈雑言が目立つ、本当に多い。みんな「サントリーは好きでも新浪氏は嫌い」といった様相だ。むしろサントリーは被害者でかわいそうという意見も。 

 

 これは以前トップを務めていたローソンについて同様で「新浪だからローソンは行かなかった」という個人的な不買をしていた人もいた。実際、新浪氏もローソン時代に物議をかもしたパワハラ的な姿勢を後年、反省している。 

 

 もっとも、2023年にはサントリーでもパワハラ疑惑で批判を受けることになるのだが3年連続の最高益(連結営業利益および売上収益)と経営の「結果」は出す人だ。 

 

 ここでは新浪氏の騒動の真相と是非については不確定かつ本人が否定している段階なので言及しない。新浪氏は9月3日の会見で「法を犯しておらず潔白」「皆様にご理解、納得をしていただけるものと信じている」「会社の判断に従い、ご迷惑をかけないように自ら(サントリーの会長を)辞する」とした。 

 

 しかし同じくトップである代表幹事を務める経済同友会については辞任せず、当面は「自粛」の方向だという。問題となった「サプリ」については「米国の知人が勝手に送付」「大変著名な方からもこれは大丈夫と」「(サプリは)おそらく家族が廃棄」と説明したが、この通りその「皆様」からは「納得をしていただけるもの」には程遠いとしか言いようのない反応ばかりである。 

 

 実際、その「皆様」は容赦ない、リアルでもネットでも総スカンだ。 

 

 まず「45歳定年制とか、労働者を苦しめる発言ばかり」とした40代の男性会社員の具体的な言い分。 

 

「45歳定年の発言は本当におどろいた。この人は日本の雇用や社会の安定を守る気がないのだろうなと。定年制(の是非)はともかく45歳じゃ早すぎる。みんな家族があって生活がある。なんだか『インパクトのあることを言ってやろう』というのが見え透いているように思う」 

 

 

 この新浪氏の発言は2021年当時「会社に頼らない姿勢」の必要性を述べるためと釈明があったが多くが苦しむコロナ禍のさなかということもあって大炎上となった。 

 

 元々は経済同友会の席で日本経済を発展させるための意見として新浪氏が提案したもので、人件費を抑えたいとか若者以外は使い捨てにしたいという大企業の経営者側の思惑に沿った発言、といった趣旨だが国民全体の耳に入れば大炎上は必然である。 

 

 次に契約社員として勤める40代女性の言い分。 

 

「子育てと介護を抱える私にとって生活は厳しいものです。多くの人たちが大なり小なり、働きながら生活をやりくりしています。福祉政策について経済界のトップが社会保障の削減を主張する、いくらなんでもそこまで言うかと思いました」 

 

 これは2023年に政府が児童手当の所得制限を全廃するとした決定に新浪氏が「大反対」と会見したものだ。もっとも経団連も日本商工会議所も同様に「反対」だったため新浪氏だけではない。しかしそれまでの舌禍というか、一石を投じる歯に衣着せぬ発言のせいか、とくに新浪氏が一般国民の集中砲火を浴びる結果となった。「AIで社会保障の費用を削減」もまた火に油を注ぐことになったように思う。 

 

 20代男性は「経営者としての新浪さんの実績や立場はわかる」としながらも当時のマイナンバー推進についての発言についてこう語る。 

 

「廃止を『納期』とかわけわかんないこと言ってましたよね。で、それが日本文化とか。健康保険証廃止についてはいろいろ意見はあるのでしょうけど、なんか政府への忖度というか、ウケ狙いばっかりの印象なんですよね」 

 

 マイナ保険証問題については措くが、この2023年、新浪氏の発言によってSNSを中心にサントリー不買運動まで起きてしまった。その効果の是非は別として新浪氏、政治家や官僚ならともかく一般消費者を相手にするサントリーの経営者としては厳しい非難を受ける立場となった。それ以前にあった政治問題「桜を見る会」にサントリーが商品を無償提供していた件もあって火がついた格好だ。 

 

 ちなみに新浪氏、政府への忖度とか決してそういった面ばかりではない。LGBTQ+に対する理解推進のために「LGBT理解増進法案」を出すべきと政府に訴えたり、各企業が性的少数者のために行動を起こすべき、同性婚賛成と明言したりもしている。 

 

 

 ただし、これら新浪氏のジェンダー平等についての発言もまた一方的過ぎる、言いたいことはわかるが具体策がなく、それこそウケ狙いと批判は多かった。また中国と日本の問題で経済優先ゆえの中国寄りの発言や擁護の姿勢が多く見られたことも、今回の騒動と関係なく蒸し返される結果となった。直近でもサントリーHDは中国のワイン事業で60億円の売却損が発表(2025年8月)されたばかりだった。 

 

 そして30代女性、印刷会社ではデザインを担当している彼女だが、いわゆる「推し」のためにこう語る。 

 

「まるでジャニーズ(当時)のタレントが全員犯罪者みたいな言い方で仕事を奪うようなことを言ってましたよね。問題があったことは事実でしょう。それは(旧ジャニーズも)認めています。だからといってジャニーズのタレントを使うことは児童虐待を認めることになるとか、それはないでしょう」 

 

 2023年の故・ジャニー喜多川氏による性加害問題について新浪氏は確かにそう発言している。ジャニーズのタレントを使うことは国際的な非難を浴びるとも。ちょっと主語が大きい。当時を何も知らない若者までジャニーズというだけで仕事を奪え、干せと経済界のトップが言ったと受け取られかねない。この発言の主語の大きさは新浪氏の特徴でもあるのだが。 

 

「意見そのものは自由でしょうけど経済界のトップでしょう、もう少し考えるべきじゃないでしょうか。実際、トップがそうなら会社も腐ってると言うなら、それこそサントリーもそうと言われても仕方ないですよ」 

 

 今回の新浪氏の疑惑は不確定のため断定はしないが、辞任している以上は責任問題とするなら「ブーメラン」と言われるのもまた必然である。サプリ屋のトップが他者の違法サプリ、もうこの段階で厳しい。 

 

 サントリーは酒造メーカーや飲料水メーカーとして名高いが、近年では若者のアルコール離れや少子高齢化を見越して健康食品に力を入れている。とくにサプリは積極的にPR展開もしているが、それが代表取締役会長が知らなかったか勝手に送りつけられたかはともかく、大麻由来の成分の含まれた違法サプリを購入した疑いをもたれてはどうしょうもない。 

 

 

 
 

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