( 322401 )  2025/09/07 05:28:56  
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新車購入時のフロアマットは、9割以上のユーザーがオプションとして注文するが、なぜ標準装備にならないのだろうか。

主な理由は、自動車メーカーが製造コスト削減を追求しているためであり、フロアマットはコストの一部として削減対象になりやすいからだ。

また、販売現場ではフロアマットが値引きの際に効率的なオプションとなり、ディーラーの利益を確保するためにも重要な役割を果たしている。

標準装備化が進むと、ディーラーは利益を失い、商売が難しくなる可能性が高い。

これにより、フロアマットがオプションとして残り続けることで、自動車販売業界が支えられているのが現状である。

(要約)

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 新車購入時に必ずと言っていいほど頼むオプションが、フロアマットであろう。注文するユーザーの割合は9割以上とも言われている。フロアマット無しでクルマを使う人はほとんどおらず、純正品と社外品を合わせた、フロアマットの装着率は95%以上だ。 

 

 大半のユーザーが購入・装着するフロアマットは、どうしていつまでもオプション(別売)設定なのだろうか。標準装備でも問題ないと思いきや、そこにはオプションであり続ける、のっぴきならない理由があったのだ。 

 

 文:佐々木亘/画像:Adobestock(トップ写真=Paylessimages@Adobestock) 

 

 製造コストを無視できる一部の超高級車を除いて、新型車を設計する際の合言葉は「1円でも安く作る」である。コストカットは、工業製品の中でも随一だ。 

 

 「無駄な装備は省き、法規上で認められる最低限のラインで、完成車を作りたい!」これが、自動車メーカーの本音である。しかし最近では、安全技術や装備に対する法整備が進み、これまでよりもクルマを製造する自由度が小さくなった。 

 

 そのため、最低コストも高くなっている。つまりメーカーにとっては、付けたくなくても付けなければならない装備が、増えたということだ。 

 

 仮に標準装備するとなると、フロアマット1セットも、大きなコストのひとつということになる。そのため、削れるところは否応なく削るだろう。製造現場目線では、フロアマットの標準化というのは夢のまた夢なのだ。 

 

 では販売現場では、フロアマットはどう映っているのだろうか。 

 

 車両本体値引きが厳しくなった昨今の新車販売現場。しかし、値引きをしないとクルマが売れないというのも、日本の独特な商文化だ。そこで役に立つのがフロアマットなのである。 

 

 実はフロアマットは、営業マンが値引きやプレゼントを行うのに最も(効率が)良いオプション。その理由は、取り付けが容易で、工賃をサービスしても懐が痛みにくいため。取付作業は営業マンだけで完結するので、サービス工場の手間を取らせることもないのも大きなポイントである。 

 

 つまり、ディーラー側の利益や商売のやりやすさを確保するために、フロアマットがオプションのまま残り続けているという見方もできるだろう。フロアマットがメーカー標準装備になってしまうと、ディーラーは商売道具を失うことにもなりかねない。 

 

 値引きという商文化が自動車販売に残り続ける限り、ディーラーも営業マンもフロアマットの標準装備を望むことは無いということだ。 

 

 

 また、ディーラーの利益面を考えても、フロアマットの存在は結構大きい。 

 

 新車販売における収益構造を見ていくと、車両本体価格とメーカーオプションには、自動車メーカーの利益が大きく含まれ、ディーラー(販売店)の利益は少ししかない。 

 

 ディーラーが車両販売で利益を大きく上げるには、自分たちの取り分が大きいディーラーオプションを、より多く装着させる方が良いというわけ。 

 

 特に装着率が高い、フロアマット・サイドバイザー・ナンバーフレーム・ボディコーティングは、販売店の収益性が高いオプションの代表例である。仮に、これらがメーカーオプションひいては標準装備となってしまうと、ディーラーの経営は更に混迷を極めるだろう。 

 

 ただでさえ、ここ10年でディーラーオプションから生み出される利益は、かなり小さくなっている。それは、かつてディーラーオプションだった、ETC車載器・コーナーセンサー・エンジンスターターなどが、標準装備に変わっているためだ。 

 

 そして、ディスプレイオーディオが標準装備となることで、ディーラーオプションナビの装着率も大幅に減少したし、バックモニターが標準装備となってしまい、法律による規制もディーラーの収益を削り取る始末。 

 

 この状態で、フロアマットまで「標準装備するべし」となると、自動車ディーラーの商売はできなくなってしまう。おそらく、フロアマットが標準装備される時代には、販売をメインに行う自動車ディーラーは存在しなくなる。 

 

 それだけ、フロアマットのオプション化というものは、自動車販売業界を支える大きな存在となっているのだ。 

 

 

 
 

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