( 322458 ) 2025/09/07 06:33:24 0 00 TeNYテレビ新潟
今、全国的に問題となっている病院の赤字経営。新潟県内では2024年度、県立病院が過去最大の46億円の赤字となるなど多くの病院が厳しい経営状況におかれています。
なぜ赤字になるのか。私たちにどんな影響があるのか。大幅な経営改善で赤字脱却を目指す県内の病院を取材しました。
絶えない救急搬送
1人でも多くの命を救うために…….
ここは24時間患者を受け入れる総合病院です。
しかし、命を救う現場が直面している課題があります。医療機器などの物価高騰に、人口減少、さらにコロナ禍からの受診控え。
こうした中、新潟市西区の新潟医療センターが進めてきた改革のひとつが、救急車の受け入れです。2年でおよそ2倍に拡大。より多くの患者を診療できる態勢を整えてきました。
〈救急外来の看護師〉 「今までにやったことがない処置が必要だったり、知識や技術だったり、そういうのをすごく痛感しています。やりがい、めっちゃあります」
“経営改革”真っただ中……医療の最前線に密着しました。
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県内で11の病院を運営するJA新潟厚生連が「資本が枯渇する恐れがある」と発表したのは2024年の夏。8月時点で73億9000万円の赤字が予想されていました。
その後、職員の賞与削減など大幅な経営改革に着手。さらに、県や病院が立地する6つの市が計約19億円を支援するなどしたため資金の枯渇を回避しました。
それでも2024年度の決算で、赤字額は約30億円となりました。
同じ公的医療機関である13の県立病院は2024年度過去最大となる46億円の赤字に。
新潟市民病院も2024年度は過去最大のおよそ16億円の赤字となっています。
いま深刻な社会問題となっている病院の“赤字経営”。
経営難を背景に最近では、2025年3月JA新潟厚生連村上総合病院が、年間1億円の赤字を生むとして分べんの取り扱いを休止。
佐渡総合病院は機器の更新ができないため8月で放射線治療を終了します。
県立松代病院は2026年4月から入院機能を県立十日町病院に集約。病床を持たない「無床診療所」とする予定です。
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県立病院で17年間病院長を務め、2023年からJA新潟厚生連の理事長を務める塚田芳久医師は国の医療制度自体が時代に合わせた変化が必要だと指摘します。
〈JA新潟厚生連 塚田芳久 理事長〉 「国の財政や人口が減っていくとなれば、それに合わせた対応が必要になってきたというところで、旧来の考え方やり方では制度そのものが破綻してしまうというのを一番感じています」
県立病院と民間のJA新潟厚生連、2つの組織を見てきた塚田医師。患者を救うために医療機関を存続させることも重要だと感じています。
〈JA新潟厚生連 塚田芳久 理事長〉 「医療というものは公的なもので使命感に燃え医療をやるという医療者として僕らはそういう哲学というかそういう倫理観でやってきましたけれども、民間の医療機関という組織を維持する、それがなくては医療も展開できないというのを今回私は痛感させられました」
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なぜ多くの病院が赤字経営に陥っているのか……新潟市西区にあるJA新潟厚生連新潟医療センターで病院の経営について探りました。
原因の一つが、そもそも高額な医療危機の更新や維持にかかる費用です。
例えば、不整脈の患者への電気ショック治療。電気を流す「除細動器」の一般的な購入価格は、1台約200万円といわれています。
精密検査が必要な場合などに使用される全身撮影用の「CT」は約1億円。この他メンテナンスなどの費用もかかります。
機械や薬品の購入を見直すなどコストの削減を図っていますが、物価高騰などの影響は大きく水光熱費は過去5年間で1.5倍になっています。
こうした経費をまかなっているのが病院収入のほとんどを占める診療報酬です。診療報酬とは医療機関などが診療行為を行った際に得られる対価のことです。
診療報酬から医療器具の購入費や水光熱費、人件費などのコストを引いた分が病院の利益となります。
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この日、手術の準備をしていたのは整形外科の医師たち。特殊なヘルメットを被っています。
〈整形外科 佐藤卓 副院長〉 「上に被り物をするとどういうことかわかるんですけど、手術中(患者の)血液が飛んでくる。それが我々の不潔な部分に当たって術野に落ちると細菌感染の確立が上がるので(着用している)。シールドやガウンは消耗品なので使えば使うだけお金がかかっていく」
膝の手術がはじまりました。痛んだ骨を取り除き人工関節に置き換えます。
ずらりと並んだ手術用の器具。代わる代わる医師に手渡されていきます。
周りには麻酔用の機械や手術計画を映し出すモニター。手術をしながらレントゲン撮影ができる移動式のX線装置も。より正確な手術が可能になります。
〈整形外科 佐藤卓 副院長〉 「透視(レントゲン写真)を見て角度を確認しています。そこも余計なコストをかけない 工夫というか……」
この銀色の部品。これが人工関節です。骨との接着剤となる骨セメントをぬっていきます。スタッフの連携で正確に患者の膝に固定されました。
この人工関節の手術(単顆置換術)は使用する器材などに約30万円かかります。診療報酬は約70万円、ここまでの利益は約40万円です。
そこから病院の設備費や水光熱費、人件費などをまかなうことになります。
救急外来には、強い腹痛を訴える患者が運ばれてきました。血液検査やCT検査などから脱腸であることが判明。
この処置に対する利益は約1万5000円でした。中には手術や処置をすればするほど赤字になる医療行為もあるといいます。
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人口減少やコロナ禍からの受診控えが続き病院の患者数は減少傾向に。病院の収入を増やすには患者1人あたりの医療費、患者単価を上げる必要があります。
主な取り組みとしては入院の長期化を防ぐことがあげられます。現行の制度では入院が長期になればなるほど診療報酬が下がる仕組みとなっているのです。
そこで新潟医療センターでは病床の稼働率を上げるため、医師、看護師、医療ソーシャルワーカーなどのメディカルスタッフと事務職員が連携して、患者の入院や退院、転院などをコントロールしています。
〈新潟医療センター 吉澤弘久 病院長〉 「我々は全力を尽くして患者さんのために最適な医療を提供しようという気持ちを常に持っております。世界で例を見ないほどすばらしい医療を非常に安価で受けられるという 体制を維持するためには、国民全体が医療を確保してほしいという願いを(国に)届ける努力をしなければ、なかなか現状では難しいのかなと思っています」
自分や家族に何かあったとき受け入れてくれる医療機関は今後も存続できるのか。病院経営は今、厳しい局面を迎えています。
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