( 322948 ) 2025/09/09 06:04:54 0 00 さくら構造の「上司選択制度」マニュアル=同社提供
人手不足が深刻な企業にとって若手の早期離職は悩みの種だ。厚生労働省の調査によると、2021年3月に大学を卒業した新卒社員の入社3年以内の離職率は35%に上る。
そうした中で注目されているのが、部下が上司を「逆指名」する会社だ。
「超重要 上司選択制度」と題された80ページ超のマニュアルがある。管理職の人柄や能力、得意・不得意などを○△×で部下が評価する「通信簿」などが記載されている。
構造設計会社「さくら構造」(札幌市)の構造設計部門の社員が上司を毎年、選ぶ際に活用しているものだ。
部門には7人の室長(部長級)がいて、それぞれの部下(約15人)は毎年、希望する室長を選ぶことができる。例えば、今まではA室長のもとにいた部下が、次の年度ではB室長を選び、室を移ることができるというものだ。
きっかけは、上司と相性が悪いことを理由にした、ある優秀な若手社員の退職だった。
離職を防ごうと、20年に導入し、過去には、2人の室長が部下から選ばれなかったという。
効果はでており、18年に11.3%だった離職率は23年に0.9%まで下がった。
平成建設(静岡県)も1989年の創業時から「自分の上司は自分で選ぶ」というコンセプトでチーフリーダー(CL)制度を導入している。
CLは部長級のポジションで毎年、20人前後のCLが、その部に所属する社員たちの投票で決められる。新入社員も管理職も同じ1票を持つ。「部下から信頼されないと1年で交代することもある」と、総務部の担当者は話す。
人気アイス「ガリガリ君」で知られる赤城乳業(埼玉県深谷市)でも15年前から社員が年に1回、自己申告書を提出する際、上司の評価をする。
部長、課長など直属の上司に対する部下の本音を聞き出し、公平性を担保するのが目的だ。評価シートにはコミュニケーション能力、指示の明確さなど15の項目が並ぶ。上司を経由せずに提出され、社長ら管理担当役員のみが目を通すという。
企業の人材開発について研究している立教大学経営学部の中原淳教授はこう語る。
「一定数いる部下をつぶす管理職をあぶりだすシステムとしては有効と思うが、副作用がある『劇薬』。上司が言いたいことを言えなくなり、モチベーションが下がる可能性もある」(森下香枝)
朝日新聞社
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