( 323273 )  2025/09/10 06:29:31  
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植田和男日銀総裁 

 

(ブルームバーグ): 日本銀行は、石破茂首相の退陣表明を受けて国内政治情勢が混乱する中でも、年内利上げの可能性を排除しない姿勢だ。 

 

事情に詳しい複数の関係者によると、日銀は新政権の政策を巡る思惑で神経質な市場の動向を注視している。経済・物価情勢は7月の最新シナリオに沿った動きと判断しており、年内に環境が整う可能性も引き続き視野に入れている。 

 

最大のリスク要因である米関税政策は、トランプ大統領が4日に日米合意を履行する大統領令に署名し、日銀は不確実性の一段の低下につながるとみている。米関税を踏まえた企業行動や新政権の政策など金融政策判断に重要な材料が、今秋以降にはそろってくる可能性が大きいという。 

 

日銀は18、19日に金融政策決定会合を開き、経済・物価情勢を入念に点検する。関係者によると、引き続き不確実性が大きい中で、今後本格化する米関税政策の影響や国内政治情勢を受けた金融市場の動向などを見極めるため、0.5%程度の政策金利の維持を決める公算が大きい。 

 

1月以来の利上げに向けて進展が見られており、当局者の一部には早ければ10月にも利上げが適切になるとの見方もあるという。 

 

石破首相の辞任に伴って実施される自民党の総裁選挙では、昨年の総裁選で上位につけた高市早苗前経済安全保障担当相、小泉進次郎農相による争いが軸になるとみられている。財政拡張に伴って経済・物価に上振れ余地が生じる可能性も関係者は指摘した。 

 

8日発表の4-6月期の実質国内総生産(GDP)改定値は、個人消費の上振れを主因に速報値から上方修正され、5四半期連続のプラス成長を維持した。5日発表の物価の変動を反映させた7月の実質賃金は7カ月ぶりにプラスに転じ、賃金の上昇圧力の持続を示した。 

 

翌日物金利スワップ(OIS)から算出した12月会合までの0.25ポイントの利上げ確率は足元で5割程度。今月初めの7割程度から低下した。今月会合については2%程度となっている。 

 

 

米経済 

 

外国為替市場の円相場は、ブルームバーグの報道を受けて1ドル=147円台前半から一時146円56銭と8月14日以来の水準まで上昇した。9日の東京株式市場では、次期政権の経済対策への期待から、日経平均株価が取引時間中に一時初の4万4000円台に乗せたが、その後は失速した。 

 

日銀が警戒感を強めていると複数の関係者が指摘したのが米経済の動向だ。5日に公表された8月の米雇用統計で非農業部門雇用者数が市場予想を大幅に下回るなど、ここにきて雇用情勢の下振れが鮮明になっている。米経済がソフトランディングできるかの見極めが必要という。 

 

政策対応が後手に回るリスクは大きくないとの認識にも変化はない。米関税政策の影響や新政権による経済政策、米国を中心とした海外経済の動向などを見極めながら、追加利上げのタイミングを急がずに探っていける状況にあるという。 

 

氷見野良三副総裁が2日に行った講演は、市場関係者から利上げに慎重なハト派的と受け止められた。一部の当局者は氷見野氏が示した政策スタンスは中立的だったとみていると関係者は指摘した。 

 

--取材協力:関根裕之. 

 

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Sumio Ito, Toru Fujioka 

 

 

 
 

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