( 323746 )  2025/09/12 05:37:56  
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最近の物価高騰と賃金の伸び悩みの中で、節約が急務とされ多くの人が試みています。

しかし、極端な節約が逆に問題を引き起こすこともあります。

例えば、43歳の会社員Aさんは、物価上昇に伴い厳しく節約をするあまり、公衆トイレの水を不法に持ち帰って使用する事例が紹介されました。

Aさんの行動は節約とは言えず、法的な問題を引き起こす可能性があるため、適切な知識を持って慎重に行動する必要があります。

また、節約はムダを省く行為であるべきだということを強調しています。

(要約)

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(※写真はイメージです/PIXTA) 

 

物価高騰と、伸び悩む賃金。そんな時代にあって、「節約」は多くの人にとって生活を守るための必須スキルとなっています。しかし、そのあまりの切実さから、いつしか節約が“目的”となり、度を越した行動に走ってしまう人がいるようで……。本記事では社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子氏が、Aさんの事例とともに行き過ぎた節約術に潜む、思わぬ落とし穴について解説します。※個人の特定を避けるため、事例の一部を改変しています。 

 

総務省が公表した「2024年(令和6年)平均消費者物価指数の動向」によると、2020年を100とした2024年の平均総合指数は108.5。前年比2.7%の上昇となりました。日本の消費者物価指数はこの3年間で急激に上昇しており、長期のデフレから、インフレに転換したことがわかるでしょう。 

 

一方、厚生労働省の「毎月勤労統計調査 令和6年分結果速報」では、実質賃金が2024年は-0.2%、2023年は-2.5%、2022年は-1.0%と、減少が続いています。物価の上昇に賃金の伸びが追いついていないのが現状です。 

 

こうした状況下で、物価高への対策として多くの人が「節約」を実践しており、インターネットではさまざまな節約術が紹介されています。都心で暮らす43歳の会社員女性、Aさんも、節約に力を入れている一人です。 

 

Aさんは大学入学を機に、地方の田舎から都心での暮らしを始めました。 

 

学生時代はバブル景気の真っ只中でしたが、学費を親に頼っていたため、生活費は奨学金とアルバイトで賄う日々。サークル活動や飲み会で楽しむ同級生たちを横目に、取り残されたような思いを抱え、憧れの都会生活と現実とのギャップに悩むこともありました。 

 

「就職したら、自分の給料で都会生活を楽しもう」 

 

そう目標を切り替えて就職活動に励もうとした矢先、今度はバブルが崩壊。想定外の就職氷河期に突入します。「こんなはずではなかった……」と思いつつ、50社以上を訪問し、なんとか中小メーカーの一般事務職から一社の内定を得ることができました。 

 

しかし、Aさんの年収は約280万円。景気の低迷で賃金は上がらず、奨学金の返済にも追われ、貯蓄もままなりません。Aさんは消費を減らすため、さらに節約に力を入れます。家賃5万円の古いアパートに住み、水道光熱費は極力使わない。食費は夕方の割引シールが貼られる時間を狙い、野菜は100円以内のものだけ。特に、季節に左右されないもやしは定番で、豆苗は3回ほど育てながら食べているといいます。 

 

 

先日、Aさんは親しくしている同僚のBさんに誘われ、たまにはプチ贅沢をしようと外食に出かけました。食事のあと、「せっかくだからもう1杯」という話になります。内心「2軒目はちょっとな……」と思ったAさんは、外食先が自宅近くだったこともあり、自宅での飲み直しを提案します。 

 

Aさんの自宅を初めて訪れるBさん。節約を徹底していると話す友人が、一体どんな暮らしをしているのか、少し楽しみでもありました。古いアパートでしたが、部屋の中は整頓され、物が少ない印象です。窓際には手作りプランターでプチトマトなどが育てられており、「さすが節約の王道だね」と話していたBさん。壁際に水の入ったペットボトルが数本並んでいるのが、少し気になりました。 

 

「トイレ、使わせてほしい」とBさんが告げると、Aさんから驚きの言葉が返ってきます。 

 

「あ、トイレは、そのペットボトルの水で流してね」 

 

「災害でもないのに、故障? 大変だね」とBさんが尋ねると、Aさんは悪びれもなく答えました。水道代がもったいないから、普段は近くの公衆トイレを使い、夜など行かれないときのために、公園などで汲んできた水をペットボトルに貯めている、と。トイレの水だけでなく、プランターの水やりにも使っているそうです。 

 

さすがに、やりすぎではないか……。Bさんは、開いた口が塞がらないほどの節約術に、ただただ驚くしかありませんでした。 

 

後日、BさんはAさんに「その方法は節約術というより、窃盗罪になる可能性があるから控えたほうがいい」と助言しました。「窃盗罪」と聞いて驚いたAさんは、新たな節約術を考えることにしたといいます。 

 

さまざまな節約術がありますが、「節約」とは、あくまでムダを省いて消費を切り詰めることです。しかし、公共施設の水道から水を無断で持ち去る行為は、節約とは呼べません。公園や公衆トイレの水道は、自治体などが公共の利用のために管理しているものです。目的外の利用は、犯罪になる可能性も十分にあります。 

 

節約に励むことは大切ですが、法律に抵触するようなことがないよう、正しい知識を持って実践しましょう。 

 

〈参考〉 

 

総務省:2024年(令和6年)平均消費者物価指数の動向 

https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf  

 

厚生労働省:毎月勤労統計調査 令和6年分結果速報 

https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r06/24cp/dl/pdf24cp.pdf  

 

三藤 桂子 

 

社会保険労務士法人エニシアFP 

 

代表 

 

 

 
 

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