( 324323 ) 2025/09/14 06:34:27 0 00 YU_PHOTO/SHUTTERSTOCK
不動産価格が高騰するなか、大規模な再開発が軒並み中止に追い込まれている。主な要因は資材価格の上昇や人手不足とされているが、根本的には大規模緩和策を起点としたマネー主導の不動産市場が飽和したことにある。
長らく東京・中野のランドマークとして親しまれてきた中野サンプラザが解体され、再開発が行われるというニュースは多くの人を驚かせた。だが、その話題から約2年後の25年3月、中野区は再開発について断念する方針を固めたと報道されている。
インフレによって工費が当初の2倍近くの約3500億円に膨れ上がることが明らかとなり、事業者が都への施行認可申請を取り下げるという異例の事態となった。実はこうした問題は中野だけに限定されたものではなく、全国各地で大規模な再開発の見直しや中止が相次いでいる。
再開発が頓挫している根源的な理由は大規模緩和策によるマネーの大量供給にストップがかかり始めたことである。日銀は大規模緩和策による悪影響をこれ以上、放置できないことから、金利の引き上げを進めており、既に長期金利は1.5%の水準まで上がっている。
大規模緩和策は意図的に低金利と物価上昇を引き起こす政策だが、企業の設備投資拡大という期待した方向にマネーは動かなかった。現実には、低金利によって銀行が無理な貸し出しをせざるを得なくなり、安全な融資先として不動産に大量の資金が流れた。
■再開発ブームの終焉で不動産価格は暴落する?
金利が上がれば、こうしたマネーの無制限な供給に歯止めがかかるため、不動産開発の環境は一気に悪化する。加えて、大規模緩和策の弊害であるインフレが重くのしかかるようになり、土地や資材価格の高騰で採算が合わなくなったというのが現実だろう。
実需面でのバランス崩壊という要因もある。過剰なマネーが不動産に集中した結果、都市部では需要以上の施設が供給された。これまでは、オフィスが大量供給されても、よりスペックの低いビルからテナントを奪うという形で何とかテナントを確保できたが、今度は顧客を奪われた古いビルの経営が成り立たなくなってしまう。
いずれにせよ、経済の原理原則として需要以上の施設を造ることは不可能であり、市場は完全に飽和したと言ってよいだろう。日本経済は基本的に成長しておらず、オフィス需要が今後、大幅に増える可能性は低く、デベロッパーもこれ以上のリスクを取ることはできない。
では、再開発ブームの終焉によって不動産市場が一気に冷え込み、価格が暴落するのかというとそうはならない可能性が高い。理由は先にも説明したように、一連の再開発ブームは、大規模緩和策によるマネーの大量供給が原因であり、金融緩和の副作用の1つがインフレだからである。
■インフレの中で生じるいびつな市場構造
日銀は金利の引き上げを始めたとはいえ、全体としては依然として緩和状態が続いている。日銀が本格的に金融正常化に乗り出さない限り、今後もインフレが続く可能性が高い。結果として、景気が悪いままでも物価は上がり続けることになり、不動産価格も上昇することになる。
こうした市場環境下では、価値が下がりにくい物件にマネーが集中することがほとんどである。今後は、一等地にある優良物件の価格だけが高騰するという、いびつな市場構造になるだろう。
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