( 324331 )  2025/09/14 06:44:53  
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中華食堂「日高屋」は東京近郊で高い知名度を誇るが、関東以外ではあまり知られていない。

安さを武器に全国展開を試みた「幸楽苑」は、現在羽生店舗の閉鎖を進めており、価格を490円に引き上げるなどしている。

全国規模で展開する「餃子の王将」と「大阪王将」は、それぞれ異なるビジネスモデルを持ち、冷凍食品の販売なども行っている。

 

 

日高屋は夜間の飲食需要を取り込み、安価なメニューを提供することで業績を伸ばしているが、出店の制限がある。

幸楽苑は店舗数を縮小し、安売りをやめてスタンダードな中華屋の印象に。

餃子の王将は店舗数を増やし教育制度を整え、顧客の安心感を提供している。

大阪王将はFC主体で、冷凍食品事業が強みとなっている。

 

 

ラーメン業界は大手が台頭しているが、まだ寡占化には至っておらず、競争が激化している。

新興企業も増加しており、今後の先行きが注目される。

(要約)

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中華食堂 日高屋 浅草橋店 

 

 東京近郊では知名度が高い日高屋ですが、関東地方以外ではあまり知られていません。一方、幸楽苑はかつて290円の「中華そば」を提供し、安さを武器に西日本へ進出しましたが、すでに撤退済み。現在は東北、北関東などロードサイドを中心に展開しています。 

 関東圏に留まる日高屋・幸楽苑に対し、全国的に展開しているのが、餃子の王将と大阪王将の2社です。餃子の王将は日高屋が現れる以前から関東に進出し、足場を固めました。大阪王将はFC主体で個店の色が強く、客単価がやや高いのも特徴です。 

 

 本記事では、この4チェーンの特徴をまとめつつ、業界の今後について考えてみようと思います。 

 

 日高屋は東京都の駅前を中心に出店しており、乗降客数の多い駅では出口の両側に出店することもあります。武器はやはり安さと夜間の「ちょい飲み」需要の開拓です。 

 

 中華そばは値上げしてしまいましたが、24年12月まで税込390円を死守していました。中華そば、餃子、生ビールの3点で1000円以内に抑えるためです。値上げ後も他の飲食チェーンと比較した際の割安感は変わらず、25年の客数は前年比で9%増を推移しています。コロナ禍で落ち込んだちょい飲み需要も回復しました。 

 

 とはいえ、駅前以外に出店しにくいという弱みがあります。日高屋の安さを支えているのは埼玉県行田市にあるセントラルキッチンです。工場から離れた場所では低価格を実現できず、また、地方のロードサイドではちょい飲み需要が低いという側面も。近年では北関東のロードサイドに出店し、郊外型店舗の開発を進めています。 

 

 幸楽苑は福島県会津若松市を地盤とするチェーンで、東北や北関東を中心に出店しています。デフレ時代には中華そばを日高屋よりも安い290円で提供し、安さを武器に全国展開を図りました。2004年に京都、翌年には大阪、兵庫、奈良に進出し、2007年には京都に工場を構えました。 

 

 しかし、一時は中華そばの売上が全体の3割を占め、利益を圧迫しました。15年に290円での提供を廃止して、当時から店舗のスクラップ&ビルドを加速。不採算店の閉鎖を進めました。幸楽苑は東北・関東でのドミナント出店が強みでしたが、店舗数が少ない関西では効率が悪く、黒字の店舗も少なかったようです。 

 

 現在では極端な安売りをせず、中華そばを490円で提供しています。麺類は醤油・塩・味噌の3種類のほか、つけ麺を提供し、よくも悪くもスタンダードな中華屋という印象です。 

 

 定食メニューは他社より少ないですが、カレーライスを提供しています。店舗数はピーク時で400店舗を超えていましたが、コロナ禍での業績悪化を受けて縮小しました。24年には意思決定の迅速化などを目的に持株会社体制を解消しています。 

 

 

 餃子の王将は67年に京都で1号店を出店しました。70年代には大阪で店舗を拡大し、78年には関東で直営1号店を出店しています。日高屋の1号店は2002年であり、それよりも前から関東で展開していました。80年には船橋市に工場を構えました。2007年に500店舗を達成し、15年には700店舗を達成しています。2000年以降、メディアで頻繁に取り上げられた王将のスパルタ教育も、知名度向上に貢献したと考えられます。 

 

 社内に「王将調理道場」を設置して教育制度を整え、店舗によって味のばらつきが生じないよう画一化を進めました。店舗限定のセットメニューはありますが、基本的なメニューは統一されています。いつどこで食べてもクオリティが同じ、これが消費者の安心感につながっているのかもしれません。 

 

 価格帯は日高屋や幸楽苑よりは高めです。麺類のほか、ニラレバ炒めや麻婆豆腐などの総菜メニューも充実しており、町の中華屋のような構成です。極端な安売りをしていなかったため、もともと割安感は無く、昨今の値上げでも客離れは起きていません。 

 

 大阪王将は1969年に大阪で1号店を構えました。店舗展開が比較的遅く、2003年に関東に進出しました。餃子の王将は直営店が主で、FCも社員による独立が多い一方、大阪王将はFC主体。約350店舗のうち直営店は50店舗程度しかありません。 

 

 商品構成は餃子の王将と似ていて同じく「町の中華屋」という印象ですが、価格は概ね100円ほど高めに設定しています。定番メニューは統一されているものの、味は店舗によって微妙に異なるようです。お店ごとの店舗限定メニューも魅力で、一部のファンを惹きつけています。 

 

 FCが主体のため、餃子の王将のように大規模な出店ができない点がネックであるものの、大阪王将には冷凍食品という強みがあります。「大阪王将」ブランドの冷食をスーパー向けに供給するほか、居酒屋など飲食業者向けに業務用中華を提供しています。24年度の売上高373億円のうち外食事業は159億円、冷食などの食品事業は215億円を占め、既に食品製造が主体となっています。 

 

 

 今回取り上げたのは、廉価な中華チェーンと近しいラーメン業界についてもざっとみていきます。牛丼やハンバーガーなどと違って個人店や零細業者の比率が低く、大手による寡占化が進んでいない業界です。そのため近年でも急成長を遂げ、上場に至った企業も現れています。 

 

「博多一風堂」を展開する力の源ホールディングスは2018年に一部上場企業となりました。資本系の家系ラーメン店「町田商店」を展開するギフトホールディングスも20年に一部上場企業となり、コロナ禍で店舗数を拡大しました。スープや麺の卸売先であるプロデュース店を含むと国内で約800を展開しています。近年上場したラーメンチェーンは町の中華屋ではなく、一ジャンルに特化した業態が主です。 

 

 吉野家も牛丼、はなまるうどんに次ぐ第3の柱としてラーメン事業を強化しています。ラーメン業界は寡占化が進んでいない上に競争が激しいため、業績が悪化しやすい業界です。今後も安定的な地位を維持するのか、それとも新参者に淘汰されるのか、注目したいところです。 

 

<TEXT/山口伸> 

 

【山口伸】 

経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 Twitter:@shin_yamaguchi_ 

 

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