( 324563 )  2025/09/15 06:29:44  
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写真はイメージです Photo:PIXTA 

 

 ライター業の傍ら、スキマバイトでさまざまな職場で働いている筆者が仕事を通じて見えた悲喜こもごもをつづる本連載。今回の現場は、とある地方球場のキッチンカーだ。働く前から感じていた嫌な予感が的中。とんでもない“パワハラ店長”に出会ってしまった。その実態をくわしくレポートする。(ライター みやーんZZ) 

 

● 「店長がヤバい」「罵声を浴びせられ苦痛」 “危険度MAX案件”に申し込んだワケ 

 

 氷河期世代の40代おじさんである僕が去年、突如ハマったスキマバイト。今回は、とある地方球場のキッチンカーでバイトをした際の模様を紹介します。 

 

 先日、とある地方都市に行き、そこを本拠地とするプロ野球球団の球場でスキマバイトしてきました。 

 

 実は僕、プロ野球12球団全てのホームスタジアムでスキマバイトするという個人的な目標を立てており、各地の球場を回っているんです。首都圏の球場は全て制覇したので最近は「スキマバイト旅」と称して地方遠征を行っており、今回が7球場目のバイトとなりました。 

 

 スタジアムに着き、指定された場所から電話連絡。バイトさんに「田中」と書かれた使いまわしの通行パスをもらってスタジアム内に入ります。 

 

 お店で40代ぐらいの男性店長に挨拶し、チェックイン。すると、「あんた、メシは食ってるか? メシ食べてなくて調子悪いやつ、働かせられないから。役所とかが最近うるさいの。あと水分補給用の飲み物、持ってきたか?」と、いきなり一方的に話をされました。 

 

 さらに「あんた、名前、なんだっけ? あ、言わなくていい。どうせ覚えれねえから」と、とても横柄な態度で話してくるので「うわあ……」とさっそくゲンナリです。 

 

 実は、今回のスキマバイト、働く前から嫌な予感はしていました。 

 

 募集ページに書いてある「Good率」(今まで働いた方の職場への評価を指標化したもの)が「90%」と、相場からするとかなり低い数値だったからです。 

 

 この評価は「良い、悪い」の2択しかなく、悪い評価をつけると自分にも雇用主から報復で悪い評価がつけられ、今後の就業に影響が出る可能性があるため、よっぽどのことがない限り「良い」を押す人がほとんどなのです。 

 

 ということで、個人的にこの数値が96%以下だと“要注意”。90%は、ほぼほぼ地雷案件だと思っています。 

 

 念の為、これまで働いた人が書いている感想をチェックすると「店長がヤバい」「ずっと罵声を浴びせられ苦痛だった」といったコメントが散見され、さらに危険度はアップ。普段なら確実にパスするのですが、今回は希望する日程と合うものが他になく、仕方なく申し込んだのでした……。 

 

 

● 超古典的なパワハラ店長にドン引き この職場、本当にヤバい…… 

 

 「それであんた、なにができんの?」と聞かれ、「キッチンカーは何度かやったことあるんで一通りできます」と回答。「ミホ(アルバイトの女性の仮名。基本、呼び捨て)、こいつに盛り付け、教えて」と指示が飛び、焼きそばの盛り付けをすることに。 

 

 球団の絵柄が描かれた箱に焼きそばを入れて電子秤で計量し、脇に紅しょうがを入れるという作業を任され、僕が焼きそばを、ミホさんが紅しょうがを盛り付けることになりました。 

 

 これまでにプロ野球やJリーグなど、延べ15回ぐらい球場やスタジアムのバイトをやった僕の経験上、こういう盛り付け作業では10グラム程度は誤差の範囲内とし、スピード重視でどんどん進めることが求められてきました。が、どうやら今回は違う模様。 

 

 少しでも誤差があるとミホさんは紅しょうがを入れてくれないので、ぴったりの量になるように調整する必要があります。そうしないと店長に怒られるんだとか。当然、作業効率は落ちますが、仕方ないですね……。 

 

 やり方を教わりながら、おつまみ用の鶏肉の盛り付けも行っていきます。 

 

 すると、盛り付け作業の途中で店長が割り込んできました。 

 

 「このカレー、コンロで火にかけて焦げないように混ぜろ」とのこと。どうやら前日、残って冷凍したカレーを火にかけて解凍したいようです。 

 

 大鍋に入ったカレーを時々、混ぜればいいようですが僕は別の作業中。15分前に来たスキマバイトにいきなりマルチタスクさせて大丈夫なんでしょうか……。 

 

 盛り付け作業をしながら同時並行でカレーが焦げないよう混ぜるので当然、作業効率はさらにダウン。カレーをどの程度、加熱すればできあがりなのかも指示されず、どこまでやればいいのかわかりません。申し訳程度にカレーを混ぜつつ、盛り付け作業を進めます。 

 

 作業をしながら店内の様子をチェック。この店長、かなりコミュニケーションに難があるようです。 

 

 まず、言葉がかなりキツい。若いバイトの女性たちは基本、呼び捨て。指示も不明確で言葉足らずなので、全然伝わりません。そしてバイトさんが自分の思った通りに動かないと不機嫌になり、「なにやってんだ? 俺、こう言ったよな!?」とダメ出しするんです。聞いていて非常に不快です。 

 

 バイトの方々は店長のダメ出しに対し、「ああ、はい」と返答するのみ。皆さん相当、心が折れているみたいです。 

 

 「手が空いてるんだったら次、しなきゃいけねえことを探せ」 

 

 「俺が何をしてほしいか、察しろ」 

 

 「しゃべってねえで手、動かせ。しゃべっているんだったら時給、引くぞ」 

 

 超古典的なパワハラ言動の連発で、僕はドン引きしてしまいました……。 

 

 

● 「店長に怒られる」が 口グセになっている 

 

 盛り付け作業が終わり、カレーもいい感じになってきたのでミホさんに確認し、火を止めます。 

 

 奥にいた店長から「そこの今日のカレーと昨日のカレーを○×※△……」と指示が飛びますが、正直、何を言っているのかわかりません。僕とミホさんで「???」となっていると、しびれを切らせた店長がやってきました。 

 

 「この今日の分のカレーを解凍したカレーの大鍋に移して一緒に加熱しろ。そして加熱が終わったら提供用のカレー鍋に入れて保温器にかけろ」と伝えたかったようですが、そんなのは一切伝わりませんでした。 

 

 「なんで俺が言ったことができねえんだ!?」と店長はイライラしていましたが、言ってることがわからなきゃ、できるわけないですよ……。 

 

 実はここのお店、キッチンカーが2台つながっており、それぞれで違う商品を販売。その2つのお店の両方をこの店長が1人で統括しているのです。 

 

 それだけ複雑な仕事にもかかわらず、この店長は仕事を人に任せたがらず全部、自分で細かく指示を出します。こだわりが強いんでしょうがバイトとのコミュニケーションはうまくいっておらず、思い通りに進まないことが頻発。それに腹を立てているようです。 

 

 開場時間となり、お客様がパラパラとご来店。僕はお客様に提供するカレー作りを任されました。 

 

 秤でご飯を測ってよそい、そこにカレーをかけて脇にお肉と福神漬を添えてできあがり。それをキッチンカー横の台に置くと、下にいるバイトさんが購入者に提供するという流れです。 

 

 作業をする際、ミホさんに「カレーは絶対にレードル(おたま)1.5杯分にしてください。多いと店長に怒られます!」と言われ、注意して盛り付けを行う僕。 

 

 ここのバイトの皆さん、とにかく「店長に怒られる」というワードを連発しており、常に店長の目を気にしています。これでは自主的になにかをやろうという気にはならないんだろうなと察しました。 

 

 この作業自体はシンプルなので問題なくできたのですが、カレーはあまり売れず、ローストビーフ丼など他のメニューのオーダーがどんどん入ってきます。バイトの皆さんは他の調理作業などをしつつ、次々に入るオーダーの盛り付けもしなければいけないためとても忙しそう。 

 

 見かねて「その丼の盛り付け方、教えてもらえればやりますよ?」と言ってお手伝いすることに。「ローストビーフ丼はカレーと同じ量のご飯を入れ、ネギを敷いてお肉を6枚乗せてタレをかけてください」と教わり、作業を進めます。 

 

 

● 手伝ったのに店長はブチギレ もう、我慢ならない……! 

 

 すると別のバイトさんが通りかかり「お肉は5枚ですよ」と言われました。「えっ、6枚って聞きましたけど?」「5枚! 多いと店長に怒られます!」と言われ、規定量は5枚であることが判明。1枚、減らして提供をしました。マジでいろいろ混乱気味のこの現場、誰の言うことを信じていいのかわかりません。 

 

 そのほかのメニューについても同僚の皆さんに確認しながら、見よう見まねで作っていきます。しかし、途中で現場を通りかかった店長。 

 

 「なんだ、これ? 誰がこれをやれって言った!?」 

 

 案の定、またダメ出しが始まりました。 

 

 「この箱は焼きそば用! おつまみ用はひとまわり小さいやつ! 違う箱はダメ! この球団の絵柄の箱、1個○円するんだぞ? 無駄にするな! あとこの小さな肉は1枚じゃなくて2枚で1枚分! クレームになったらどうするんだ!?」と超キレています。 

 

 忙しそうなのをフォローするために手伝っていたのに、これだけキレられると自主的になにかやろうなんて気は一切、起きなくなりますよね……。球場バイトは数多くやりましたが、箱が1個いくらだとか、そんなケチくさい話をされたのも今回がはじめてです。 

 

 いい加減、ムカついたので「そんなの初耳です。そもそも1枚の標準の大きさなんて一切習っていません。じゃあ、どれが基準なんですか? ちゃんと教えてください!」と反射的に言い返してしまいました。 

 

 店長、どうやらここで僕の調理作業に見切りをつけたみたい。 

 

 「もういいや。あんた、下に行って提供作業やって」と言われ、キッチンカーを降りてレジのところへ向かい、提供作業を開始したのでした。 

 

みやーんZZ 

 

 

 
 

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