( 324603 ) 2025/09/15 07:13:23 0 00 10回、井上(左)はアフマダリエフのボディにパンチを打ち込む(撮影・滝沢徹郎)
<プロボクシング:4団体統一世界スーパーバンタム級タイトルマッチ12回戦>◇14日◇名古屋・IGアリーナ
4団体統一スーパーバンタム級王者・井上尚弥(32=大橋)が3-0(118-110、118-110、117-111)判定勝ちで防衛に成功(WBAスーパー、IBF5度目、WBC、WBO6度目)した。
WBA世界同級暫定王者ムロジョン・アフマダリエフ(30=ウズベキスタン)と対決。4団体統一王者としてサウル・アルバレス(35=メキシコ)を超え、新記録となる5度目防衛に成功した。また世界戦26連勝は元世界ヘビー級王者ジョー・ルイス、元5階級制覇王者フロイド・メイウェザー(ともに米国)と並ぶ世界タイ記録となった。
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勝利後インタビューに応じた井上は、「アウトボクシングもイケるでしょ!この試合は自分にとってモチベーション高い試合。相手の実力を評価していたからこのパフォーマンスができた。今日はこの戦い方が大正解だった」と振り返った。さらに会場で観戦していた中谷潤人(27=M・T)に向かって「次は12月にサウジアラビアであると聞いている。そこに向けて精進してすばらしいボクシングをみせる。中谷くん、お互いにあと1勝頑張って来年東京ドームで盛り上げましょう」と叫び、会場は大歓声に包まれた。
アフマダリエフ対策は多種多彩に積んできた。アフマダリエフに唯一の黒星をつけた元WBAスーパー、IBF世界同級王者マーロン・タパレス(33=フィリピン)を迎えて約1カ月間、拳を交えた。東洋太平洋フェザー級王者の中野幹士(30)、WBOアジア・パシフィック同級王者の藤田健児(31)、WBOアジア・パシフィック・スーパーバンタム級王者の村田昴(28)、日本バンタム級王者の増田陸(27=すべて帝拳)というサウスポーの世界上位ランカーたちと実戦練習を積んだ。総スパーリング数は約8年ぶりの120ラウンドに到達した。
アマチュア時代以来、13年ぶり、プロ初という出げいこも2度敢行。帝拳ジムで実戦練習を積み、心身の刺激も受けてきた。井上は「帝拳ジムさんに協力してもらい、まだ初心に戻るというか、そういった新たな気持ちで今回の試合に挑める。この試合に終わって練習の成果が実感できると思う」と心身ともに充実してアフマダリエフ戦に備えていた。
「キャリア最大の強敵」と設定してきたアフマダリエフを下し、井上は新たなステージへと進む。12月末、サウジアラビア興行に初参戦する見通し。4団体統一王者としては6度目の防衛戦となり、挑戦者にはWBC世界同級1位アラン・ピカソ(25=メキシコ)が浮上。世界タイ記録の世界戦26連勝、4団体統一王者としてV5防衛という世界新記録も達成した井上が「名勝負」の生まれる名古屋で最強の存在感を放った。
■ラウンドVTR■
1回 お互いに様子見。フェイントを繰り返す。井上は左ジャブを鋭く、アフマダリエフは右ジャプをシャープに伸ばす。終盤に井上がじりじりと前に出て、右ボディーストレート。相手が出てところに左フックを合わせた。日刊採点は井上の10ー9
2回 井上は前に出て左ジャブから右ストレートをボディーに打ち込む。アフマダリエフは、ガートを高く掲げてじっくりみる。手数が少ない。井上は左ジャブを飛ばして、手数で上回る。日刊採点は井上の10ー9
3回 井上がペースを握る。ノーモーションの右ストレート。左ジャブ→右ボディーストレートを打ち込む。右は何度も相手の腹に伸ばした。アフマダリエフは、左アッパーを放ったが、手数が少ない。日刊採点は井上の10ー9
4回 井上は足を使ってサークリング。アフマダリエフは、追い足がなく、パンチが単発になる。残り1分を切って、井上が右ストレートを、相手のガードの間からヒット。スピード差を生かして、井上がリズムをとる。日刊採点は井上の10ー9
5回 井上はスピードを上げた。ガードを上げて「こいこい」とアピール。右ストレートをガードの真ん中に集める。アフマダリエフも右フック、左ストレートを見せる。井上は終盤、左フックを相手にクリーンヒットした。日刊採点は井上の10ー9
6回 アフマダリエフは、ロープ際の井上に、右フック。横からではなく、斜め上から打ち下ろすような、変則の軌道で顔面を捉えた。井上は左ボディーフックで反撃。3発も打ち込んで、アフマダリエフを下がらせた。日刊採点は井上の10ー9
7回 井上はさらにペースを上げた。右ストレート、右アッパーをボディーに打ち込む。アフマダリエフは被弾が増える。時折フックの連打を見せるが、効果的な反撃にはつながらなかった。日刊採点は井上の10ー9
8回 井上は左ボディーフックを痛烈にヒットさせた。相手の右ジャブに右ストレートを合わせるなど、スピードの差をみせる。アフマダリエフは、パンチを当てることができず、空振りが増える。日刊採点は井上の10ー9
9回 井上は次々とパンチをヒットさせた。ワンツー、ワンツーの4連打で後半の2発をヒット。ロープ際では相手の連打に右アッパーを差し込んでアゴを上げさせた。アフマダリエフは打つ手がなくなってきた。日刊採点は井上の10ー9
10回 井上は連打を放って、軽快にサークリング。アフマダリエフは被弾覚悟で前にでて、パンチを放つ。左ストレートをヒットする場面も。井上はカウンターの右、左ジャブを返した。日刊採点は井上10ー9
11回 井上は左ジャブ、右ボディーストレートと次々とパンチを放つ。細かく立ち位置を変える井上のスピードに、アフマダリエフはついていけず、ほとんどパンチを打つことができなかった。日刊採点は井上の10ー9
12回 井上は最後までスピードが落ちない。左ジャブ、ワンツ-などを放って、立ち位置を変える。アフマダリエフはパンチを出せない時間が続く。ラスト10秒過ぎて、右フックをヒットさせたが、時すでに遅しとなった。日刊判定は井上10ー9。3-0の判定勝ち
◆井上尚弥(いのうえ・なおや)1993年(平5)4月10日、神奈川・座間市生まれ。父真吾氏の影響で小学1年から競技開始。高校時代にアマ7冠。12年7月にプロ転向。14年6月、6戦目でWBC世界ライトフライ級王座を奪取。14年12月、8戦目でWBO世界スーパーフライ級王座を獲得し2階級制覇。18年5月、WBA世界バンタム級王座を獲得し3階級制覇。19年5月にIBF同級王座、同年11月、WBSS同級制覇。22年12月、史上9人目の4団体統一王者に。23年7月にWBC、WBO世界スーパーバンタム級王座を獲得して4階級制覇。同12月に史上2人目となる2階級での4団体統一に成功。身長164・5センチの右ボクサーファイター。
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