( 324976 )  2025/09/17 04:09:20  
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大阪・関西万博は閉幕まで1か月を切り、9月からは毎日20万人近くが訪れるなど混雑が加速している。

シルバーウィーク初日の9月13日には、過去最高の約21万8000人が来場。

来場者の中には「『並ばない万博』がなぜ混雑しているのか」といった不満も多く聞かれる。

人気パビリオンへの入場には、早朝からの待機が必要で、9時入場を狙う人々が長い行列を作っている。

また、入場規制や予約システムの複雑さに対する不満も目立ち、これによって来場者が「入場できない万博」になりつつあるとの指摘もある。

万博協会は、来場者の安全を優先しつつ、予約枠の拡大が困難であることを説明している。

結局、混雑と長時間の待ち時間が続く中、来場者は「万博に来られてよかった」との思いも抱えている。

(要約)

( 324978 )  2025/09/17 04:09:20  
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西ゲート付近は多くの人で混み合った(13日午後、大阪市此花区) 

 

 大阪・関西万博は閉幕まで1か月を切った。9月に入り、関係者を除く入場者数は毎日20万人近くを記録し、混雑が加速している。 

 

 シルバーウィークの初日、2025年9月13日は過去最高の約21万8000人(関係者除く)が会場を訪れた。J-CASTニュースの記者が現地を取材すると、来場者からこんな恨み節が聞こえてきた。 

 

「『並ばない万博』じゃなかったのか」 

 

■入場ゲートでは「走らないでください」を連呼 

 

 万博の朝はとても早い。人気パビリオンの予約を取るには、事前の抽選予約のほか、オープン時の先着入場や当日予約の方法があり、「9時入場」でどれだけ先頭の位置に並べるかが鍵となる。 

 

 この日の6時頃には既に行列が夢洲駅に到達し、誰よりも早く入場するため、早朝から約250mの列ができていた。また、さらに「最前列」を確保しようと、始発前の4時50分頃に開放される東ゲート近くの通用門から入る来場者の姿も。会場・夢洲は自家用車の乗り入れができないため、徒歩ルートで来ていると見られる。 

 

 万博協会は8月29日、開場前において警備員やスタッフが十分に配置されておらず、来場者の安全が十分に確保できる環境でないため、「早朝に並ぶのを控えて」とアナウンスしている。 

 

 8時50分、東ゲートが開くと、セキュリティーチェック終えた来場者から会場内へ入っていく様子が見られた。朝は先着順で受け入れるパビリオンが多いため、走って向かう人も多い。そのため警備員が「歩いてお進みください。走らないでください」と何度も繰り返していた。ただ、9時入場が最も効率的にパビリオンを回れる状況に変わりなく、早朝の待機列がなくなる気配はない。9時に入場できた来場者に話を聞くと、こんな声があった。 

 

「6時半から東ゲートに並んで大阪ヘルスケアパビリオンの当日予約ができた」 

 

「並んで1時間ほどでイタリア館に入れた」 

 

 9時台は、先着入場の「争奪戦」の様相となっている。クウェート館ではオープン20分後の9時10分頃には約130m先の広場まで列が伸びており、当日先着1000人の入場を受け付けるオランダ館では9時30分頃を列を締め切っていた。万博を十分に楽しむためには「9時入場」はもはや必須となっているが、既に閉幕まで午前中の枠はなくなっている。 

 

 午前中であっても混雑は深刻だ。11時頃会場内を回ると、人気のクウェート館やアメリカ館、スイス館では入場の並び列が締め切られていた。ただ列が回転し、人数が一定少なくなると並べるようになるため、最後尾の周りにはそれを待つ人であふれ、「この場所で待たないでください」とアナウンスがあった。 

 

 アメリカ館の前でそのアナウンスを聞いた60代女性は「なんとしても入りたい」と最後尾の看板前で並び列の再開を待った。同様に看板前で待つ人が複数人いた。 

 

 午後になると、入場規制で入れないパビリオンも多く見られた。イタリア館では5時間待ち、ルクセンブルク館は4時間待ち、中国館3時間待ちと長時間の待ち時間も珍しい光景でない。大屋根リングの下にあるベンチはほぼ全て埋まり、地面に寝転んでいる人もいた。 

 

 

 夫と6歳の娘と一緒に初めて万博を訪れた北九州市の40代会社員女性はパソナ館の前で並び列の再開を待っていた。 

 

「人混みがすごくて、もう来たくはない」 

 

 こう漏らしながらも「万博に来られてよかった。一生の思い出になった」と話した。 

 

 友人と初万博という千葉県成田市の20代会社員男性は「予約が取れないのは覚悟していた。大屋根リングを実際に見られて、感動した。いろんな人種の人が歩いていて、交流しているのが素敵」と話す。 

 

 大阪市の40代公務員女性は、2時間半待ちとなっていた「ミャクミャクぬいぐるみくじ」に8歳のめいと参加した。 

 

「最初は『並ばない』万博を掲げていたと思う。もうちょっとうまくできなかったのか」 

 

と語る。また予約システムについて、1時間待ちといった長時間待つ現在の状況に「ありえないのでは」と疑問を呈した。 

 

 不満の声が多く聞かれたのは、デジタルでの予約方法だ。 

 

「友達に予約を取ってもらったが、当日自分でやろうとするとやり方が分からなかった」(50代パート女性) 

 

「予約システムが複雑すぎる」(70代無職男性) 

 

 特にデジタルに不慣れな高齢者を中心に、若い世代からも同様の声が聞かれた。 

 

 今回話を聞いた来場者のほとんどが初万博で遠方からの来場が多かった。「なぜ駆け込み万博を」と聞くと、次のような意見が出た。 

 

「人が多いとか(内容が)つまらないとか聞いていたので、行かなくてよいかと思っていたが、やっぱり1回は行ってみたいと思った」(埼玉県さいたま市の50代主婦) 

 

「友人と予定が合わず、このタイミングになってしまった」(千葉県成田市の20代会社員男性) 

 

 理由はさまざまだが、「終わる前に1度は」という思いが万博に足を運ばせているようだ。 

 

 この日はフランスのナショナルデーで、フランス館と日本館を「人間の赤い糸」で結ぶイベントが開催された。 

 

 フランス館アンバサダーの俳優、レア・セドゥさんと日本館名誉館長の俳優、藤原紀香さんが出席し、フランス館と日本館の間では、16時頃から約30分間、通路を通行止めに。反対側に移動するには会場内を500m以上と大きく迂回する必要があり、突然の通行止めに来場者が警備員に詰め寄る姿が見られた。 

 

 中年の男性は、 

 

「(予約している)16時半にすぐそこの電力館に行きたいだけなのになぜ通せないのか」 

 

と怒鳴り声を上げた。小学生と見られる男の子は「なんでこんな混んでるときに規制するん」と話していたが、後ろからどんどんと人が押し寄せ、すし詰め状態になると、涙を流し始め、母親がなだめていた。最終的には、万博スタッフが道の反対側への横断を認め、誘導されながら向かう様子が見られた。 

 

 

 閉幕まで残り1か月。当初掲げた「並ばない万博」から、並んで入る万博となっていた。9月に入り、週末の予約枠はほぼ埋まり、平日も午前中の予約枠がない状況だ。来場したくてもそもそも希望する日に「入場できない万博」へ変わってきた。 

 

 万博協会の高科淳副事務総長は9月15日の定例記者会見で、予約枠が埋まってきている状況に対し、早期来場の呼び掛けや予約枠の拡大を行ってきたと説明。一方で、「来場者の安全が第一と考えており、これ以上の予約枠の拡大は難しい」と明かした。 

 

 9月15日時点で、入場券の販売枚数は約2142万枚に達し、関係者を除く累計来場者数は約1900万人と単純比較で約240万の差がある。夏パスや通期パスで複数回の入場した人を考慮すると、希望する日に予約できず閉幕まで使い切れないチケットは一定数あるのでは、と懸念される。 

 

 高科氏は、希望する日に予約できなかったとしても「チケットの払い戻しはしないというルールになっている。ぜひ早く使ってほしい」と呼び掛けた。 

 

 

 
 

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