( 325568 )  2025/09/19 06:01:58  
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「上下ユニクロ」でどこまでいけるか?(出所:ゲッティイメージズ) 

 

 いきなり私事で恐縮だが、ここ10年ほど、ユニクロ以外で衣類を購入した記憶がない。 

 

 筆者はビジネス分野の記者として働いており、新商品発表会に参加したり、企業を訪問して取材したりしている。こうしたビジネスシーンで着用しているのは、ユニクロのジャケット、シャツ、チノパンだ。もちろん、私服もほぼユニクロだ。 

 

 筆者はファッションに無頓着であり、「服を購入する」行為をなるべく避けたいと考えている。そのため、仕事用とプライベート用の衣類を一度に購入できるユニクロは大変ありがたい存在だ。「ユニクロなら大きく外さないだろう」という謎の安心感もある。 

 

 ただ、「社外の人と会わない内勤とかなら問題ないだろうが、商談やプレゼンみたいな重要なシーンでも、ユニクロは通用するのか?」と疑問を抱くビジネスマンも多いのではないか。そこで、ユニクロが展開する男性用ビジネスウェアの最新状況を把握するため、都内の大型店舗を取材するとともに、この分野に詳しい専門家に話を聞いてみた。 

 

 8月下旬、都内にある大型のユニクロ店舗を訪れた。 

 

 男性向けビジネスウェアのコーナーで最も高額な組み合わせは「ストレッチウールジャケット」と「ストレッチウールパンツ」だった。店舗で採寸&オーダーすると後日自宅に届く仕組みで、取り扱い店舗は限られている。筆者が訪問した店舗では、ジャケットが1万9900円、パンツが7990円と表示されていた(ジャケットは2000円の補正料込)。ユニクロはこれらを「本格的なビジネススーツとして着用可能」「オールシーズン対応」とアピールしている。知らない間に、こんな高価格帯の商品が出ていたことに驚いた。 

 

 よりカジュアルで、手ごろな価格の商品としては「感動ジャケット」(6990円)と「感動パンツ」(2990円)の組み合わせがある。公式Webサイトでは「糸からつくり上げた独自の素材を使用することで、圧倒的な軽量化を実現」「家庭の洗濯機で洗えて、寝ている間に乾く」としている。ちなみに、ユニクロは感動パンツの誕生10周年を記念したイベントを今年の3月に開催している。ロングセラー商品として定着しているようだ。 

 

 店内にあったチラシを手に取ると、「毎日のお仕事を品よく快適に」というキャッチコピーで、感動パンツと感動ジャケットを紹介していた。価格帯的にも、ビジネスウェアの主力は感動シリーズと考えてよいだろう。 

 

 同じ売り場には、「シルクネクタイ」「レザーベルト」(いずれも2990円)も販売していた。また、感動ジャケットと感動パンツを着用したマネキンは4990円のバックパックを背負っていた。 

 

 大型店ということもあるが、久しぶりに店舗を訪れてみるとビジネスウェアのアイテムが以前より充実している印象を受けた。 

 

 

 では、ユニクロのビジネスウェアはどこまで通用するのだろうか。 

 

 「本格的なビジネススーツ」とうたっているストレッチウールジャケットとストレッチウールパンツは取扱店舗が限られており、紳士服チェーンにも置いてそうな印象を受けたので、今回は調査の対象から除外する。価格も手ごろで、判断が分かれそうな「感動ジャケット」「感動パンツ」を中心に、専門家の話を聞くことにした。 

 

 取材に協力してくれたのは、『アパレル業界の動向とカラクリがよ~くわかる本』(秀和システム)の著者であり、流通小売・サービス業界のコンサルティングを手掛けるムガマエ代表の岩崎剛幸氏だ。 

 

 結論から言うと、感動パンツと感動ジャケットの組み合わせは、「商談」「初めての顧客訪問」「大事な契約」といったほとんどのシーンで着用しても問題ない。それどころか、Tシャツやチノパンといったよりラフなアイテムも、多くのビジネスシーンで使えるという。 

 

 「私自身、ユニクロで購入した4000円台のチノパンを1年くらい着用していますが、ひざの部分が抜けたり、てかったりということはありません。今どきのデザインですし、スタイリングも良い。かつてのユニクロは、価格は安くても、品質・デザインが今一つでした。しかし、今はかなり改善されてきています」(岩崎氏) 

 

 背景には、仕事でカジュアルな装いをすることへの抵抗感がなくなってきていることがあるという。クールビズの推進により職場での服装がカジュアル化した。そして、コロナ禍では、オンラインミーティングにTシャツやポロシャツで参加するビジネスパーソンが増えた。 

 

 「感動パンツや感動ジャケットに限らず、シンプルでベーシックなデザインが多いユニクロの衣類は、ビジネスシーンでも違和感がないです」(岩崎氏) 

 

 銀行で数千万円の融資を受けるための契約をしたり、ラフな装いに拒否反応を示すクライアントと会ったりするようなシーンでは通用しない可能性もある。万能ではないが、ユニクロは予想以上に幅広く使えることが分かった。 

 

 

 では、他社製品と比べた場合、ユニクロの立ち位置はどうなっているのか。 

 

 岩崎氏によると、郊外型の紳士服チェーンで感動ジャケットと競合するのは、9900~1万6800円のジャケットだという。これらのチェーンは感動ジャケットより品質やデザインが優れた商品も取りそろえているが、「3000円も高いならユニクロでいいか」と考える消費者も多いという。 

 

 「百貨店の平場では、ジャケットが1万9000円~3万9000円くらいでしょうか。また、セレクトショップでは2万~4万円が多いと思います。2万円のジャケットはデザインが優れているのですが、品質などを含めたコスパの観点から、高く感じてしまうこともあるでしょう。そう考えると、ユニクロの感動ジャケットを各社は意識せざるを得ない状況になっています」(岩崎氏) 

 

 まとめると、ユニクロの感動ジャケットと感動パンツはほとんどのビジネスシーンでも利用可能で、競合と比べると価格面で優位に立っている。そして、コスパの観点から消費者から強い支持を受けていると言えそうだ。 

 

 かつてはカジュアルな商品が中心のイメージが強かったユニクロだが、現在はビジネスウェアの需要もかなり取り込んでいることが分かった。 

 

ITmedia ビジネスオンライン 

 

 

 
 

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