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西九州新幹線は長崎と武雄温泉を結び、開業から3年が経過したが、長崎-博多間の全線開通の目途が立たず「つながらない新幹線」と呼ばれている。

利用者は増加しているものの、武雄温泉での乗り換えが続くため本来の効果が発揮されていない。

佐賀県はフル規格の整備を拒否しており、その理由は建設費や在来線の利用者に影響が出る懸念にある。

佐賀県知事は議論の余地があるとしつつも、解決策を求め国との協議が必要と訴えている。

経済や観光の観点から、新幹線が繋がらないことへの焦燥感が高まっている。

地方都市にとっては厳しい状況が続いている。

 

 

(要約)

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長崎ー武雄温泉を走る西九州新幹線の車両「かもめ」=佐賀県武雄市(一居真由子撮影) 

 

長崎駅と佐賀県の武雄温泉駅を結ぶ西九州新幹線が開業して23日に3年を迎える。沿線では経済や観光面で開業効果が出ているものの、国の整備計画に盛り込まれた長崎―博多(福岡)全線開通のめどは立たず、「つながらない新幹線」と揶揄(やゆ)される。整備が進むリニア中央新幹線開業で誕生する関西や関東などの巨大都市圏と、北部九州が新幹線で接続できなければ損失は大きく、地元関係者に焦燥感が広がっている。 

 

■関西まで直通を 

 

「新幹線で来ました。乗り換えで」。8月に福岡市内で開かれた九州新幹線長崎ルート(長崎-博多)に関するシンポジウム。長崎県の大石賢吾知事はあいさつでこう切り出し、長崎から福岡に来るのに、新幹線から在来線への乗り換えが必要な事実を不本意そうに語った。 

 

令和4年9月に開業した西九州新幹線は、長崎-博多を結ぶ計画のうち、長崎-武雄温泉が結ばれ、武雄温泉で新幹線と在来線を乗り換える必要がある。大石知事は「ルートの本来の姿は関西まで直通運行をすることだ」と力説し、全線開業の必要性を訴えた。 

 

開業からの3年間、長崎県や地元経済界は、全国の新幹線と同様のフル規格での全線整備を求めてきた。シンポジウムを主催した「九州新幹線西九州ルート整備推進協議会」の森拓二郎会長(長崎商工会議所会頭)も「北部九州の発展にはリニア中央新幹線の開通を見据え、首都圏や関西圏といったメガリージョン(巨大経済圏)と新幹線で接続し、旺盛な経済力を取り込んでいく必要がある」と強調した。 

 

■JR九州「厳しい」 

 

開業後の西九州新幹線の利用者数は好調を維持している。JR九州によると、1日当たりの利用者数は前年度比で増加を続け、今年度も7千人前後で推移する。それでも、武雄温泉での乗り換えが続く現状に、古宮洋二社長は「本来の新幹線の効果は発揮できていない。想定したお客さまより少ないのが現状で、増やしていかないと経営上厳しい」と表情は硬い。 

 

つながらない理由は佐賀県が「フル規格での整備を求めていない」と一貫して主張していることにある。主な要因は、建設費の負担と在来線の利便性低下。全線フル規格整備の場合、佐賀県の負担は1400億円以上に上るが、佐賀-博多は今でも在来線特急で約40分で結ばれ、多くの県民が利用している。この特急が新幹線開業で減便となれば県民生活への影響は大きく、県交通政策課の担当者は「莫大(ばくだい)な財政負担と受益とのバランスを考えると、受け入れられる状況にない」と話す。 

 

 

ただ佐賀県も「議論の門戸は開いている」との立場だ。8月には佐賀、長崎両県知事とJR九州社長の3者会談が1年3カ月ぶりに開かれ、国に具体的な解決を求めることで一致した。佐賀県は、新幹線と在来線を乗り継ぎなしに走る「フリーゲージトレイン」の導入を国が断念したことで「議論の前提が壊れた」と主張しており、関係者は佐賀県の意向を踏まえ打開策を模索する。 

 

■「次」見通せず 

 

国内の新幹線では、北陸新幹線や北海道新幹線の延伸でも計画の遅れが目立っている。北陸新幹線では敦賀(福井県)―新大阪(大阪府)間の延伸を巡り、ルート選定の議論が再燃。北海道新幹線では建設工事が難航する新函館北斗―札幌間で延伸時期が何度も更新を重ね、令和20年度末以降に遅れる見通しとなった。6年3月に北陸新幹線金沢(石川県)-敦賀が開業した後、「次」に開業する新幹線が見通せない状況が続く。 

 

人口減少が続く地方都市にとって、新幹線がつながらない状況は経済や観光振興の痛手になる。佐賀や長崎でも、政財界関係者からは「整備計画がありながら進んでいないのは政治家の怠慢」と厳しい評価が出ており、在来線への乗り換え固定化が懸念されている。(一居真由子) 

 

 

 
 

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