( 326108 )  2025/09/21 05:35:25  
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 コメの販売価格が再び最高値に迫っている。政府備蓄米の放出により一時は3500円台まで下がったが、備蓄米効果はわずか3か月余りで息切れした格好だ。農林水産省は2025年産の生産量が需要量を上回る見通しを示したが、JA(農協)など業者間で集荷競争が過熱しており、価格が落ち着く見通しはたっていない。 

 

 19日午前、埼玉県草加市の「東武ストア松原店」では、新潟県産「つきあかり」(5キロ・グラム、税込み5182円)などの新米が山積みされていた。新米は軒並み4500円前後で、買い物に訪れた同市の女性(83)は「高くてなかなか手が出ない。コメは必需品なので生活するにはつらい」とこぼす。 

 

 東武ストアによると、新米の入荷が始まった8月中旬以降、仕入れ価格は例年より約5割高い。金坂一紀・加工食品部長は「全て価格転嫁すると客足が遠のく」とし、販売価格は2割高い程度に抑えているという。 

 

 農水省によると、全国のスーパーで販売されたコメ5キロあたりの平均価格は、5月に過去最高の4285円を記録した。随意契約による備蓄米の販売が始まると7月に3500円台まで下落したが、新米の流通が進んだ今月上旬に再び4000円を突破した。 

 

新米などが並ぶスーパーのコメ売り場(19日、埼玉県草加市で) 

 

 通常は新米が出回り始めると、流通量が増えるため価格は下がる。しかしコメ確保の不安から、JAが集荷時に農家に仮払いする「概算金」を引き上げたほか、9月に入り概算金を追加払いする動きも出ており、集荷競争の過熱が価格高騰を招いている。 

 

 JA全農にいがた(新潟市)は、25年産の一般コシヒカリ(玄米60キロ)の概算金として3万円を提示した。前年より1万3000円(76%)高い過去最高額だ。農水省は年間取扱数量が5000トン以上のJAなどを対象に、今年初めて概算金の調査を行い、8月末時点で昨年より3~7割程度高くなっているという。 

 

 一方、農水省が19日に発表した25年産の主食用米の需給見通しは、生産量が需要量を17万~48万トン上回り、民間在庫量は26年6月末時点で198万~229万トンとなる込みだ。直近で最多だった02年の229万トンに匹敵する水準で、小泉農相は19日の閣議後記者会見で「これだけの量が出てくると冷静に受け止めてもらいたい」と強調した。 

 

 

 ただ今夏の猛暑で収穫量の減少が懸念されており、大手コメ卸は「価格よりもコメの確保が優先」と話す。福岡県内のコメ卸会社は「在庫を確保するためJAの概算金を上回る価格を提示している。今年の価格はバブル状態だ」と嘆く。 

 

 茨城大の西川邦夫教授(農業経済学)は「米価が下落に向かうタイミングを予想するのは難しい。農水省の見込み通りになるかは不透明だ」と指摘している。 

 

 

 
 

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