( 326133 )  2025/09/21 06:07:45  
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2025年9月10日に投稿した動画で炎上状態になったチョコレートプラネット。後日、謝罪動画を出した(出所:チョコレートプラネットYouTubeチャンネル) 

 

 お笑いコンビ「チョコレートプラネット」が投稿した動画が、「一般人を見下している」などと批判されている。松尾駿さんの「素人はSNSをやるな」という発言が問題視され、SNSでは炎上状態になった。 

 

 そして、謝罪動画をアップロードしたものの、この勢いはとどまらない。むしろ後に挙げる「5つの理由」から、火に油を注ぐ結果にしかならないと感じる。ネットメディア編集者として、長年SNSを見てきた“炎上ウォッチャー”の視点から、その要因を考察してみた。 

 

■「素人が何発信してるんだって、ずっと思ってるの俺」 

 

 チョコレートプラネットが2025年9月10日に投稿した動画では、「アインシュタイン」稲田直樹さんのインスタグラムアカウントが乗っ取られた件について触れていた。そして、稲田さんに対して一般ユーザーからの誹謗中傷もあったとして、松尾さんが「芸能人とかアスリートとか、そういう人以外SNSをやるな」と発言した。 

 

 相方の長田庄平さんが「素人が」と言い添えると、松尾さんは「素人が」と復唱し、「素人が何発信してるんだって、ずっと思ってるの俺」と続ける。その意見に長田さんは「そうなると、めちゃくちゃちっちゃいコミュニティーで何も入らない」「ただのブログじゃん」と反論するも、松尾さんは「見てりゃいいんだよ」と返した。 

 

 この一連のやりとりが拡散され、SNSは炎上状態になった。寄せられている批判は、大きく3点で「『素人』呼ばわりから醸し出される選民思想」と、「『後からSNSに参戦したのは芸能人のほうじゃないか』といった歴史観の錯誤」、そして「本人たちも『素人によるSNS拡散』の恩恵を受けてきた矛盾」だと考えられる。 

 

 これらの要因がかけ合わさり、火はより勢いを増した結果、チョコレートプラネットは当該の動画を削除。加えて、他の動画についても、コメント欄を閉鎖する対応を行った。 

 

■今も続く「テレビメディア」VS「ネットカルチャー」 

 

 松尾さんはおそらく、ふびんな同期の姿を見て、正義感からこのような発言を行ったのだろう。ただ、文脈がどうであれ、SNS上では「素人」呼ばわりへの反発が大きかった。一方で、ネットメディア編集者を長年やってきた身としては、誤った「SNS史観」のほうが根深い問題に感じる。 

 

 SNSのみならず、ネット空間はマスメディアに対する“アンチ”的な存在として成長した。2000年前後には、ネット掲示板「2ちゃんねる」(当時)が、テレビのニュース番組で「便所の落書き」と表現されて話題に。その後も、ボーカロイド「初音ミク」をめぐる報道など、どこかテレビメディアでは、ネットカルチャーを「自分たちより下位にある存在」として扱うムードが存在した。 

 

 

 結果として日本のSNSは、マスコミとの対立軸に置かれ、ある種のカウンターカルチャーとして発展していったように感じる。ニコニコ動画やツイッター(現在のX)が登場しても、その根っこにある構図は大きく変わることなく、昨今の“オールドメディア批判”まで、連綿として続いている。 

 

 それらを無視したように見える発言とあって、むしろ「SNSにおける素人」は、松尾さんのほうなのではないかと感じさせてしまう。言葉がブーメランとなる余地を残した点において、この発言はマズかったと筆者は考えている。 

 

 批判を受けて、チョコレートプラネットは9月18日、謝罪動画を出した。冒頭に長田さんは「『素人はSNSをやるな』ということが切り抜かれまして、そこが拡散されていって、このような大きい事態になった」と説明。松尾さんも「発言で不快な思いをされた方、ご迷惑をおかけした方、応援してきてくれた方」に謝罪した。 

 

 松尾さんによると、誹謗中傷などのネガティブな投稿に対して、「なんでそんなことをするんだろう」といった思いを抱いた末の発言だとして、「すごく誤解を生んでしまい、不快な思いをさせてしまいました」と話す。そして「芸人なのでボケというか、極端に大きく」言った結果だとした。 

 

 当該動画については、稲田さんの名前を出していたことから、「そこが悪目立ちするのもよくない」と、長田さんの判断で削除したと語る。またコメント欄も、無関係のコメントで荒らされるのが嫌だったため閉鎖したと説明している。 

 

 そして最後に、長田さんは「松尾の言動は、僕の言動であると思っている」「2人の責任だ」として、バリカンで頭を丸め、松尾さんも後に続いた。全部で6分ちょっとの動画で、公開から丸1日で150万回近く再生されている。 

 

■再炎上の可能性がある5つの理由 

 

 チョコレートプラネット側は、この謝罪動画をもって、ひとまずの解決と位置づけているだろう。しかしながら、炎上対応の観点からすると、むしろ火に油を注ぎかねない内容になっていると感じる。その理由は大きく5点ある。 

 

(理由1)持論を曲げた点 

(理由2)「切り抜かれた」ことを理由に挙げた点 

(理由3)「誤解」と弁明した点 

(理由4)頭を丸めた点 

(理由5)長田さんの自己犠牲が強すぎた点 

 

 

 最初の「持論を曲げた点」だが、先に紹介したように、問題視された動画で、松尾さんは「ずっと思ってるの俺」と表現していた。つまり今回の稲田さんの件に限らず、以前からの持論として、「素人はSNSをやるな」と考えていたことになる。しかしながら、謝罪動画では「ボケ」であり「極端に大きく言った」として、あくまでネタであるように表現している。この言動不一致が、一貫性のなさを印象づけてしまうのだ。 

 

 続く「『切り抜かれた』ことを理由に挙げた点」は、主に長田さんの発言で見られた。これほどまでのSNS社会では、切り抜かれることを前提にした発信が重要となる。芸能人のような“見られる仕事”ならば、なおさらだ。 

 

 加えて、TikTokやインスタでは、番組公式を含めて「切り抜き動画」が定着している。2人が出演しているバラエティー番組「新しいカギ」(フジテレビ系)や、「有吉の壁」(日本テレビ系)なども、公式の「切り抜き動画」で人気だ。つまり「切り取り文化」によって、自らのブームも作られているのにもかかわらず、それを否定しているように見えるのは得策ではない。 

 

 3つ目の「『誤解』と弁明した点」も、嫌悪感を与えやすい。解釈の違いとすることで、受け手の感じ方にも責任があるように思わせる。いま問題視されているのは、発言のみならず、ベースにある「本人の価値観」だ。しかし、「誤解」と表現することで、あくまで“言葉のあや”であったとの弁明だと受け取られてしまう。 

 

 そして、「頭を丸めた点」だ。そもそも丸坊主にする=誠意ある謝罪という価値観が、旧態依然としたものだとの認識が広がっている。2013年にとある女性アイドルが熱愛報道を受けて、頭を丸めたことがあった。その時点で、すでに「こうした責任の取り方はどうなのか」といった批判が出ている。あれから10年以上が経過した今なら、なおのこと世間に受け入れられにくいはずだ。 

 

 ラストが「長田さんの自己犠牲が強すぎた点」である。コンビは連帯責任だということ自体は、理解できるのであるが、むしろ松尾さんよりも責任を負っているように見えるのだ。そもそも松尾さんは、以前から丸刈りであり、その長さが多少変わったところで、“制裁”とは認識されにくい。 

 

 

■SNS上では「謝罪風のコント」として受け止める人も 

 

 いまや本人のやらかしでさえ、「演者と作品は分けて考えるべきだ」とする風潮が強まっている。長田さんがどれだけ“相方思い”だったとしても、ここまでやる必要があったのか。インパクトが強いだけに、むしろ相対的に「松尾さんの責任の取り方が弱すぎる」と、さらなる批判を受ける可能性もある。 

 

 SNS上では、今回の動画を「謝罪風のコント」として受け止めている人も少なくない。たとえ誠意ある謝罪だったとしても、素直に受け取られないのは、やはり複数の要素において“ツッコミどころ”があるからにほかならない。 

 

 炎上対応においては、ツッコミどころが残っていると、一度火が弱まっても、そこから復活することが少なくない。リアルな火事で言えば、もしも「鎮圧」に持ち込めたとしても、そこから完全な「鎮火」までは時間を要することがある。 

 

 その点で言えば、元となった発言から、炎上への対応、そして謝罪動画に至るまで、すべてが「SNSの素人」的な対応に思えてしまう。チョコレートプラネット側の真意はわかりかねるが、ここからエンタメコンテンツとして昇華できる“玄人らしい着地点”があるのだと信じている。 

 

城戸 譲 :ネットメディア研究家・コラムニスト・炎上ウォッチャー 

 

 

 
 

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