( 326353 )  2025/09/22 05:37:24  
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太陽光パネル(画像はイメージ) 

 

2030年代以降に大量廃棄が懸念される太陽光パネルについて、政府がリサイクル義務化の法案提出を見送った。当初はパネルメーカーなどに費用負担を求める形で法整備を目指していたが、ほかのリサイクル関連法と法的な整合性が取れなかったためだ。処分場の逼迫や大量の不法投棄につながる懸念があり、政府は代替策を検討する。実効性のあるリサイクル策の導入が急がれる。 

 

太陽光発電は、再生可能エネルギーで発電した電気を電力会社が一定の価格で買い取る「固定価格買い取り制度(FIT)」が開始した12年から急速に拡大。パネルの寿命は20~30年とされ、30年代後半に大量廃棄が始まってピーク時に年間50万トンに達する試算もある。22年度の産業廃棄物の最終処分量(902万トン)の5%以上に相当し、処分場の逼迫が懸念されている。 

 

現状では、耐用年数を過ぎたパネルが処分される際、コストが割高なリサイクルより埋め立てが選ばれるケースが多い。このため、政府の当初の法案では、経営規模の大きいパネルメーカーや輸入業者がリサイクル費用を負担し、発電事業者らがリサイクルに取り組みやすい状態を目指した。 

 

だが制度や法案の審議を行う内閣法制局は所有者が費用を負担する自動車や家電製品などのリサイクル関連法との違いを問題視し、法的な整合性が取れないと指摘した。 

 

政府は今年の通常国会での法案提出を見送り、秋の臨時国会での仕切り直しを模索したが、浅尾慶一郎環境相が8月末に「太陽光パネルのみ製造業者等に差額を負担させてリサイクルを義務化することに、現時点では合理的な説明が困難だ」と表明し、法案の提出を断念した。 

 

政府は50年のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)に向け、太陽光発電を再生可能エネルギーの柱に位置付ける。電源構成に占める太陽光発電の割合を23年度の9・8%から40年度には23~29%に増やす目標で、リサイクルの効率的な仕組みづくりは欠かせない。 

 

政府は代替策の検討に入っており、早ければ関連法案を来年の通常国会に提出することを目指す。発電施設や一般住宅などパネルの所有者に対してリサイクルを「努力義務」とするほか、所有者のうち大規模な発電事業者には報告と情報開示を義務付ける内容が検討されている。パネルの製造者にもリサイクルしやすい製品の開発を努力義務とする方向で検討しているようだ。 

 

代替策ではリサイクルが努力義務にとどまるため、実効性を疑問視する声もある。一方、義務化する場合も負担をどこに求めるかが焦点となり続ける。所有者負担とした場合、初期投資で高額な費用を投じ、売電収入をあてにした個人や中小規模の事業者に想定外の出費が重なることの影響は大きい。(織田淳嗣) 

 

 

 
 

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