( 326358 )  2025/09/22 05:42:39  
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熊本地震の発生当時、分別して保管されていた太陽光パネル(熊本県益城町提供) 

 

太陽光パネルのリサイクルについて政府が義務化を見送ったことで、2030年代以降の大量廃棄が懸念される。その問題はすでに、2016年の熊本地震で露見していた。 

 

■まさかの展開 

 

「ダメージとまでは言わないが、まさかの展開になった。来年の国会に期待したい」 

 

今月18日、幕張メッセ(千葉市美浜区)で開かれた太陽光発電関連の展示会-。パネルのリサイクルなどを手掛ける浜田(大阪府高槻市)の出展担当者は、残念そうに話した。同社ではリサイクル義務化の方針が昨年報じられて以降、引き合いが強まっていたという。 

 

もっとも、全国に70カ所程度あるパネルのリサイクル施設の稼働率はそれほど高くないという。リサイクルのコストが割高なことがその一因になっている。今年3月の政府の発表によると、パネル1キロワットあたりの埋め立て費用の目安(中央値)は2100円。これに対し、リサイクルは8000~1万2000円と4~6倍もの開きがある。 

 

環境省では、今後のパネルの廃棄増によるリサイクル設備の稼働率上昇や、技術開発でコスト削減が進むとみるが、義務化の法整備を欠いた状態でその姿は見通せない。 

 

また、アルミ製のフレームや銀を含むセルシートに比べ、重量の6割以上を占めるガラスのリサイクルが難しい問題もある。輸入パネルのガラスには、ヒ素やアンチモンといった有害物質が含まれているケースがある。ヒ素を含んだガラスは再利用できず、アンチモンを含むガラスもリサイクルは住宅用断熱材などに限られており、ガラスの用途開発も課題となっている。 

 

■被災地の経験 

 

政府の導入支援制度の開始時には、ほとんど想定されていなかった大量廃棄問題だが、災害の被災地は前倒しで問題を経験した。 

 

熊本県益城町では2016年の熊本地震で損壊した家屋を解体、撤去する過程で、太陽光パネルの廃棄が大量発生した。太陽光を浴びる状態で保管すると発電する恐れがあり、分別や一時保管場所の確保が課題となった。このときは、民間企業から無償提供されたコンテナボックスで保管し、リサイクル可能なものは県外業者に回収してもらう措置がとられた。 

 

東京都では今年4月、新築住宅などへのパネル設置が義務付けられており、蓄電池の併設も進む。益城町の担当者は「どのようなものが廃棄物として発生しうるか、どのように処理するのかを、平時から研究しておく必要がある」と指摘する。(織田淳嗣) 

 

 

 
 

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