( 326391 ) 2025/09/22 06:22:39 1 00 新型iPhoneやトヨタ・アルファードを月々定額で利用できる「残クレ」は、経済評論家から「賢い買い方」と評価されていますが、著者は自身では利用しない理由として隠れたリスクに言及しています。 |
( 326393 ) 2025/09/22 06:22:39 0 00 写真はイメージです Photo:PIXTA
新型iPhoneや人気のアルファードを月々定額で利用できる「残クレ(残価設定型クレジット)」。経済評論家は「賢い買い方だ」と評価する一方、自身は「やらない」と断言します。賢いはずなのになぜ?そこには、販売店が教えてくれない、残クレの意外な落とし穴が…。一見お得な購入方法に潜む本当のリスクと、あなたが選ぶべき最善の選択肢を解き明かします。(百年コンサルティングチーフエコノミスト 鈴木貴博)
連載『今週もナナメに考えた 鈴木貴博』をフォローすると最新記事がメールでお届けできるので、読み逃しがなくなります。 ● 「残クレアルファード」は賢い! どうして“ネットのおもちゃ”に?
今日はiPhone17の発売日、新型のiPhoneを毎月定額払いで買うという人も多いと思います。2年契約で新品を購入して毎月決められた使用料を支払い、2年後に保証された残価で携帯会社に返却する契約です。
これは車でもよく使われる方式で、特に人気のトヨタ・アルファードで残クレジット方式での購入が目立つと言われています。
正確にはiPhoneは所有権の移らないレンタル扱い、アルファードは購入した資産の買い戻しとスキームは違いますが、人気で高額な商品を毎月定額の利用料で使えるという点ではどちらも広義の残クレ方式と言ってよいでしょう。この記事では便宜上、iPhoneについても残クレという呼び名を使わせていただきます。
さて、残クレ方式での購入は経済学的に見てお得なのでしょうか?
私はiPhoneとアルファードについては、いまの時点では賢い買い方だと思います。一方で私は残クレをやりません。理由は落とし穴があることと、より得する場合があることを知識として知っていることです。
せっかくiPhone17発売で世の中が盛り上がっているタイミングですので、今回は残クレジット消費の経済学について、わかりやすく解説してみたいと思います。
最初に、それぞれの商品の典型的な残クレ購入パターンを紹介します。iPhone17の256GBはApple Storeでの定価が12万9800円(税込、以下同じ)です。一方で大手携帯電話会社4社のショップでは、それぞれ残クレ型の契約プランを用意しています。
たとえばドコモのahamoで新規契約をする場合「いつでもカエドキプログラム」という残クレ型の購入方法が選べます。これは月額2458円で23カ月まで利用できて、24カ月目に電話機本体を返却するという契約です。
これは実質的に24カ月目の残価が設定されている残クレ方式と同じです。ユーザーは最新のiPhone17を2年弱使うことができたうえに、2年後にそれを返却します。この間、ユーザーが支払う金額は5万6534円です。
iPhoneなら新型がいいという人は多いでしょう。しかし人気の超薄型のiPhone Airは15万9800円から、高性能のiPhone17 Proなら17万9800円からと、最新スマホはパソコン並の価格に値上がりしています。残クレ方式ならそれを手ごろな値段で入手できます。これが残クレの魅力です。
同じく人気のトヨタ・アルファードの事例を見てみましょう。新車の価格はそのときのディーラーのキャンペーンや営業との交渉次第で変わりますが、その前提でネット上の購入事例を紹介します。
あるケースでは本体価格555万円のアルファードに残価率70%、つまり3年後の残価を389万円に設定してもらったそうです。残価で買い戻す保証条件として走行距離3万6000km以内、傷なしという条件を満たせば3年後の車検の際にこの価格でディーラーに返却できます。
ただし車の残クレの場合ローン金利がつきますから、支払額は月額6万7000円で3年間の支払総額は約241万円ということになります。
これは比較的いい条件のほうだと思います。ざっくり言えばアルファードの3年後の残価は70%よりも若干低い67%程度の条件が多いように見受けます。5年後なら53%程度。一方で金利はキャンペーン次第で2.0%を割るケースもそこそこ見受けられます。
高級車を比較的合理的な負担で乗り回すことができるので、これも経済評論家的には賢い買い方だと思います。
さて、ここからが本題です。ネット上では残クレジットでアルファードに乗る人のことを「残クレアルファード」のネットミームで揶揄(やゆ)され、ネタ化する現象が起きています。
なぜ賢い買い方をする人が小バカにされているのでしょうか?それは隠れたリスクがあるからなのでしょうか?その点を解説してみたいと思います。
先に結論を言うと「残クレアルファード」をバカにする根拠は経済学的にはありません。
アルファードはそもそも高級車です。しかも人気で恒常的に品薄です。ここが経済学的なポイントなのですが、人気で品薄であるがゆえに中古市場で高く売れます。だから残価を高く設定できて、消費者は有利な条件で購入できます。ここが「アルファードの残クレ購入は賢い」と私が考えるポイントです。
一方、そのせいで起きたのが、庶民が残クレの制度を利用して格安で高級車を買う現象です。経済行動としては賢い買い方なのですが、それが「身の丈に合わない高級車の購入」に見えるので、それを小ばかにしたような動画が作られたりしたのです。
実用性からアルファードの購入者には子持ちファミリーが多いのですが、外見から「子どもにキラキラネームをつけているんじゃないか」とか、たまたま出かけた場所から「ドン・キホーテしけいかないのに高級車か」などと揶揄されているのですが、実際は逆です。賢いから有利な条件で残クレ購入し、日常的にもお得な消費活動をして家族で楽しんでいるだけのはずです。
ネット上では残クレが人気のためにアルファードが中古車市場に溢れることで、中古市場の価格が下落するんじゃないかと言う指摘まであります。これは消費者のリスクではなくディーラー側のリスクですから、ある意味で関係ありません。ただしアルファードについては輸出規制などの影響もあり、今後は残クレの条件が今よりも悪くなる可能性がありますから、これからの新車購入の際には注意は必要だと思います。
では残クレの本当のリスクとデメリットは何でしょうか?
● お金と心の負担が大きい… 「残クレの落とし穴」
残クレの最大のリスクは、期限が過ぎた際に返却できないいわゆる「超過使用」を起こしたケースです。
iPhoneの場合、2年の期限終了後の返却条件には画面割れなどの物理的損傷がないこと、カメラが使えないなどの機能不良がないこと、正規店以外での修理歴や改造などが認められると場合によっては超過使用と認定されて2万円程度のペナルティが課せられるか、最悪、返却できずに買い取りになってしまいます。
アルファードの場合は走行距離が標準で月1000kmなどと決められるケースが多く、たとえば3年後に3万6000kmを超えていれば超過使用とみなされたりします。それ以外に事故歴や純正外パーツの装着、定期点検未実施などがあるたびにペナルティとして引取価格が減額されます。 そのため、残クレで買った商品は大切に扱わなければならないということが心の枷(かせ)になります。安い町の修理店は使わず、高くてもディーラーやアップルストアを使う必要があります。さらには、強制されなくても保険やアップルケアなどにもきちんと入っておくべきです。
そして残クレにはもうひとつのデメリットがあります。それは本当はもっといい条件で買えたり、売ったりすることができるかもしれない機会ロスがあることです。
これはある意味、経済学的にはあたりまえの話です。残クレで販売するということは販売店が中古を引き取るリスクを負うことになります。そのリスクをカバーするために、販売時にはコストを上乗せしますし、引き取り条件の残価も市場価格よりも低く設定する必要があります。
具体的にはアップルからiPhone17を買えば256GBで12万9800円ですが、携帯電話会社の販売店では一括払いの端末代金がA社の場合15万2900円だったり、B社の場合14万6800円だったりと高めに設定されるのです。
車の場合はローンを組まされるうえにローン金利が残価の部分にもかかっていますし、車両保険に入ることが契約の必須条件になっているケースが多いことなど、普通に買う場合よりもコストは上乗せされます。
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