( 326858 ) 2025/09/24 05:26:19 0 00 築74年“廃虚団地”に入居者殺到 「自ら改装」で価値アップ 逆転の発想で満室に
福岡県北九州市にある築74年の団地です。数年前まではすべて空室で廃虚同然でしたが、今、オシャレなカフェがオープンするなど満室となる人気物件となっています。
福岡県北九州市「門司港」。明治時代に開港、世界からの玄関口として栄え、異国情緒あふれる建物が並ぶ、九州屈指の観光名所。
そんな歴史ある港町から車で5分。見えてきたのが…高台に建つ寂れた団地。年季の入った外壁は、至るところが黒ずみ、窓に取り付けられた物干し台は、さびついてしまっています。
奥にもう1棟見える建物は、うっそうとした草に覆われ、まるで時が止まったかのよう。
地元の人 「ほとんど廃虚で見るからにボロボロでしょ」 「人が住んでいるとは思えないですね。廃虚、廃屋」
築74年の旧畑田団地。テニスコート12面分の敷地に、鉄筋コンクリート造りの4階建てとコンクリートブロック造りの2階建てが建ち並びます。
戦後間もない1951年に福岡県住宅供給公社が建設。当時撮影された写真。子育て世帯が多く住み、団地にはいつも子どもたちの声が響いていました。ところが時代は流れ、2020年に最後の住人が退去。
そんな無人となっていた団地が今、驚きの変貌を遂げています。
廃虚のような外観からは、全く想像できないオシャレなカフェが…。室内には、こだわりの雑貨や照明が飾られています。
このカフェを営む、末満瑞穂さん(58)。普段は、長崎県内で看護師をしていますが、月に4回ほど、ここ地元でカフェを営業。来年には、看護師の仕事を辞めて、カフェの仕事に専念する予定だといいます。
「お茶もコーヒーも大好きで、自分がもうすぐ還暦になるので、雇われ人ももう限界に近い年齢がきた。その後はお客様と一緒にお茶を介して楽しくやっていけたらいいなっていうのがカフェを開いたきっかけですね」
実は、このカフェ…業者に頼んで部屋を改装したのではなく、末満さんが自分自身で作業したものです。壁を塗り、床を張り替え、8カ月かけてコツコツと改装していき、今年5月にオープンしました。
この場所でカフェをオープンする決め手となったのが…。
「最初入った時は本当にボロボロだと思ってビックリしたんですけど、家賃が1万円ですごく魅力的だった。1万円なら飛び乗るしかないと思いました」
なんと団地の家賃は、月1万円という破格の安さ。その条件が入居者自身が部屋の改装をすることでした。この取り組みの仕掛け人が不動産業を営む吉浦隆紀さん(48)。
「“渋沢プロジェクト”という名前にして、渋沢栄一1枚の1万円だけで(部屋を)借りられるような形にしています。渋沢栄一が明治初期にいろいろな事業を立ち上げたということで、ここの団地からスタートして巣立ってほしいという思いも込めて、そういうプロジェクト名にしています」
去年、団地を90万円で買い取り、再生するプロジェクトを立ち上げました。
「より古ければ古いほど魅力的に感じて、使いたいという人もいるだろうということで、再生しようと思いました」
部屋を再生するのは入居者ですが、電気や水道、ガスなどの整備費用のほか、壁や床などの材料費、合わせて100万円ほどを不動産会社が負担。
募集を開始してわずか3カ月で、全34室が満室になりました。
入居者自身が改装をするこのプロジェクトを始めたきっかけが…。
吉浦さん 「13年前に相続したビルになります」 「(Q.築何年くらい?)築52年ですね。家賃が新築当時の半分くらいになってしまって、かなり厳しい状況だった」
祖父から相続した築52年の老朽化した賃貸マンション。最寄り駅から徒歩40分と利便性が悪いうえに、入居者の3分の2が家賃を滞納。新たな借り手も見つからない物件でした。そこで打開策として取り入れたのが…。
「入居者がゼロから部屋を作れるような(部屋を)スケルトンで試しに一緒に作りませんかと」
内装や設備が全くないゼロの状態にし、改装資金を補助する形で貸し出したところ、希望者が殺到。
1部屋1部屋が個性的な部屋に生まれ変わり、今では空き部屋が出るのを待つ人がいるほどの人気物件になっています。やり方次第では不利な物件も魅力的な物件によみがえることを知った吉浦さん。この成功体験を生かし、“廃虚団地”の再生に乗り出しました。
プロジェクトを始めて1年。今では20代から70代までの幅広い世代が、自分の店を持ちたいと入居しています。
門司港の近くに住む児嶋桜さん(26)。趣味で集めた本を多くの人に読んでもらいたいと、来月、ブックカフェをオープンする予定です。
児嶋さん 「ここに座って窓際で本を読む感じにしたかったので、こういうふうにタイルを貼って座れるようにしてます。自分の思い描いた通りにできていくので、それがすごく楽しいです」 「(Q.タイル貼りはやったことある?)いや、人生で初めてです」
初心者でもレクチャーを受けながら改装できるのも魅力だといいます。
「最近レトロブームとかで、みんな古いものに魅力を感じているので、今ある無機質なものじゃない温かさみたいなところがあるのが魅力」
児嶋さんの一押しが門司の街並みが一望できる景色。
「山もあって人の世界があって、人が住んでいるという安心感のある景色で好きです」
団地の3階では…。
木下京香さん(28) 「お姫様みたいな部屋にしたくてこんな感じにしました」 「(Q.並べているお花とか雑貨とかは?)全部手作りで。くすみ系の色が好きなので、くすみ系のお花をいっぱい使って作りました」
北九州市内に住む木下さん親子。母・隆美さん(56)が、フラワーアレンジメントの資格を持ち、その技術を生かし、花をモチーフにした手作り雑貨店を来月オープンする予定です。
元々は、6畳と8畳が並んだ古い和室の部屋でしたが床を大理石風に張り替え、壁には気品のある色を塗り「お姫様の部屋」をイメージした空間に。
母・木下隆美さん 「資材とかも全部吉浦不動産屋さんが全部出して下さる。神だなと思いましたね」
吉浦さん 「材料もうちで負担というふうにしている。1部屋あたり50万円ぐらいをうちが出している気がします。ただ、本来うちで工務店さんにお願いして、部屋を作ると300万円とかそれ以上かかる。入居者さんの方で作っていただくだけでも助かるし、費用面も抑えられるので、長期的に見れば助かってます」
入居者側は元手なしに家賃1万円という破格の安さで自分好みの部屋を作ることができ、吉浦さん側は、業者に部屋の改装を頼むよりも安く抑えられ、まさにウィンウィンの関係だといいます。
入居者1号の末満さんが今年5月にオープンしたカフェ。かつてこの団地に住んでいた住民も訪れています。
17年前、団地で暮らしていたという親子。
母・花田こずえさん(57) 「ネットの情報なんですけど、たまたま携帯を触っていて、ここのアパートの話が出てきて、『私が住んでいたところだ!』と思って」
SNSで団地にカフェがオープンしたことを知り、通うように。懐かしい当時の思い出がよみがえります。
息子・恵樹さん(21) 「低めのテーブルでここで皆でご飯を食べたり、ここが化粧台というか、母親が化粧をしたり、ここでおじいちゃんがたまに座ってたりとかしてましたね」
思い出が詰まった団地が今、再生していることについては…。
息子・恵樹さん 「もうここ取り壊されちゃうのかなとずっと思っていた」 「(Q.築74年で古いんですけど、よみがえると思いました?)いや、全くですね」
花田こずえさん 「ちょっと寂しかったけど、まさかこんな感じで復活して、まさかまたここに来られるとは思わなかったので、すごくうれしいですし、不思議ですし」
今後も美容室や家具店などがオープン予定。廃虚同然だった団地が今、人が集まる空間に生まれ変わっています。
吉浦さん 「建物も築74年ですけど、あと30年頑張ろうと思っている」 「(Q.築100年?)築100年を目指しているので、(海外には)築100年以上の建物はいっぱいあるんです。200年とか300年とか。もっと世界基準で建物をちゃんと残していきながら、維持していくべきだなと思っています」
(「羽鳥慎一 モーニングショー」2025年9月23日放送分より)
テレビ朝日
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