( 326911 )  2025/09/24 06:30:30  
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最近、離婚のハードルが下がってきており、自己決定を重視する傾向が強まっていますが、自立していない場合、周囲の問題を引き起こすことがあります。

37歳の鈴木彩さんは、母親が父親と離婚した結果、自身の生活設計が大きく変わることに悩まされています。

母親は専業主婦で、働いた経験がなく、今後の生活をどう支えていくのか不安を抱えています。

一方、離婚は社会全体でも増加傾向にあり、特に若い世代向けに、自立した人生設計の重要性が問われています。

(要約)

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(※写真はイメージです/PIXTA) 

 

近年では、離婚のハードルは低くなりつつあります。不本意な生活に縛られることなく、自分の人生を歩めることは素晴らしいですが、自立できていない場合は自分のみならず、周囲を巻き込む問題になるケースもありそうです。ある女性の事例から、実情を探ります。 

 

「母親に自分の人生を振り回されて、本当にゲンナリです。疲れました…」 

 

そう打ち明けるのは、都内の中堅企業に勤める会社員、鈴木彩さん(仮名・37歳)です。彩さんは独身で、2年前に自分で購入した都内のマンションでひとり暮らしをしています。 

 

「私の母は常に父への不満が絶えず、そのせいなのか、父は会社員生活のほとんどを単身赴任で過ごしました。定年退職後は友人と会社を立ち上げ、またしても遠方に暮らしています」 

 

彩さんの母親は専業主婦でしたが、ずっと「ママが家庭に縛られていなければ、もっと自由に生活できるのに」「あなたたちは必ず仕事を持って、ひとりで生きていけるようにするのよ」といい聞かせてきたそうです。 

 

長女の彩さんは母親の希望通り、実家のある県のトップの進学校から都内の有名私立大学に進学。その後、2回の転職を経て、現在の会社に落ち着きました。収入も、同世代の男性の平均よりかなり多くもらっています。 

 

「先月の週末の夜、ひとりで晩酌しながらのんびりしていたら、母から突然連絡があったんです。〈パパとママ、離婚したから〉と…」 

 

突然の知らせに驚いた彩さんですが、母親は彩さんが子どものときからずっと、父親と離婚したいと話していたのでした。 

 

「うちの両親は同い年で、64歳です。母親は結婚後ずっと専業主婦で、パートにも出たこともありません」 

 

彩さんには3歳年下の妹の遥さん(仮名)がいますが、妹は都内の企業に就職してすぐ、同期の男性と結婚。相手の実家は事業を営んでおり、数年後、家業を継ぐために退職した夫について遥さんも退職し、ともに夫の出身地へと引っ越していきました。 

 

「母は、入社後すぐに結婚を決め、大手企業をあっさり退職した妹についても、〈なんのために大学へやったのかわからない〉と、さんざん愚痴をいっていました」 

 

電話の向こうでマシンガンのようにしゃべる母親の言葉をようやく遮り、彩さんは聞きたかった核心をズバリ質問しました。 

 

「ママ、パパと離婚して、そのあとの生活どうするの?」 

 

「え? あなたのところに行くわよ?」 

 

彩さんは真っ青に。 

 

「ちょっと待って、勝手に決めな――」 

 

「なにいってるの! あなたは長女なんだから、親の老後を見る責任があるのよ?」 

 

彩さんは必死になって母親との電話を切るとすぐ、父親に電話しました。 

 

 

「もしもしパパ!?」 

 

「どうした彩、久しぶ…」 

 

「パパ、パパ! ママと離婚したって本当なの?」 

 

「ええ……」 

 

彩さんの勢いに飲まれていた父親ですが、彩さんの質問について、時系列で説明してくれました。離婚については、彩さんと妹が学生のころからたびたび言及されてきましたが、本当に面倒くさくなり、応じることにしたそうです。 

 

「だから、パパはいったんだよ。〈貯金は全部渡すし、年金も分割する、それで自由に生きてくれ〉と…」 

 

「ママは、パパと離婚したら私のマンションに来るっていうのよ!」 

 

「やっぱり、そんなことだろうと思った…」 

 

「私、どうしたらいいの…!?」 

 

彩さんの実家は賃貸住宅です。長年父親が単身赴任だったことも理由ですが、父親は自分の実家を相続しており、定年退職後はそちらに移る計画でした。しかし、それを母親が「パパの親戚と付き合うのはイヤ」と、直前で拒否したのです。 

 

「パパはさ、ママが子どもの人生のお荷物になると思ってずっと離婚しなかったんだよ。だけど、自分の人生を生きたい、自由になりたいっていうから、そんなにイヤなら離婚してやる、って、ケンカ別れになったんだよね…」 

 

結局、彩さんの母親の強い希望で離婚したものの、自立のめどは立ちません。そのため、父親がこれまで通り母親が暮らす家の家賃を払い続け、生活資金を援助することで、まずは落ち着きました。 

 

「戸籍上離婚しただけで、これまでと生活はまったく同じ。本当にバカみたいです。父に万一のことがあったらどうするのか。なにより、父の気が変わったらと思うと…。父は〈彩と遥に迷惑が掛からないように考えているから、大丈夫〉といっていますが…」 

 

彩さんは、母親からの1本の電話を受けている間に「脳内で、今後の人生設計がものすごい速度で書き換わるのを感じた」といいます。 

 

「正直、怖かったです。お付き合いしている相手がいるのですが、いすれ結婚…というビジョンが真っ先に砕けましたね。あとは、このマンションで2人暮らしていけるのか、もう1人分の生活費が発生すれば資産形成の計画が変わってしまうとか、いろいろ…」 

 

「母はまだ60代ですが、働いた経験がないのですから、パート勤務も簡単ではないでしょう。結局父は〈独立しないもう1人の子ども〉を背負っているようなものだと思います」 

 

社会全体をみると、離婚件数そのものは近年増加傾向にあります。たとえば、厚生労働省の『令和6年(2024年)の人口動態統計(概数・確定数未区別)』によると、離婚件数は 18万5,895組で、前年である令和5年(2023年)の18万3,814組から2,081組増加しています。 

 

「親の老後を支えるのは当然」という考え方もありますが、「親のために自分の人生を犠牲にするのか、それとも自分を優先するのか」という問いは簡単に答えが出るものではありません。若い世代はもちろんですが、シニア世代も、自分自身の人生設計をしっかり行っておく必要があるといえます。 

 

THE GOLD ONLINE編集部 

 

 

 
 

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